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科学の大発見はなぜ生まれたか

科学の大発見はなぜ生まれたか
  • 2010年03月10日鈴木真二
  • 著:ヨセフ・アガシ 翻訳:立花 希一
    発行:講談社(ブルーバックス)
    ISBN:978-4062573955  定価:940円(税別)
    発行年:2002年12月16日
  • 書評:鈴木真二

8歳の子供との対話で綴る科学の営み

子供たちの質問は本質的であり、きちんと答えようとすると苦労するものだ。この本は、著者のアガシ博士が自身の子供アーロン君(当時8歳)との科学に関する対話をもとに著したものだという。哲学者であり物理学者でもある博士は、科学とは正解が決まった完璧なものではく、新たな発見によって常に修正されてゆくべきものであるとし、そのことをアーロン君との対話から明らかにしようとしている。

話題は、コペルニクスが天動説を唱えることから始まる。地球が天体の中心ではないことを主張したコペルニクスは近代科学史における最も重要な人物なのだが、太陽が宇宙の中心であるという考え自体は正確ではなかったと博士はアーロン君に説明する。惑星の動きを観察したコペルニクスは、地球は宇宙の中心でないという地動説を唱えるが、それでも正確な宇宙を描けた訳ではなかった。コペルニクスの説に賛同したガリレオは精密な望遠鏡で、月や木星の4つの衛星を観察し、より正確な宇宙像を考えるが、ガリレオにしても地球の軌道は円であると考えた。本当の起動は楕円であり、そのことはケプラーによって明らかにされた。

アーロン君は、科学者の主張がすべて正しい訳ではなかったという事実を次第に受け入れるようになる。アガシ博士は、科学とは、正しいとされる理論を理解した上で、それに疑問を抱き、修正していく試みの連続なのだということをアーロン君に説明する。ケプラーの観測から、万有引力を導き、惑星の動きを理論的に明らかにしたニュートンにせよその理論は完璧でないことが、その後のより詳細な観測で明らかになった。

科学を正しいものとして一方的に教えることにアガシ博士は異を唱えている。科学は本来、教えるものと学ぶものという境をなくし、お互いに正しい方向を共に探るものであると言っているのであろう。私も最近、「協調学習」のグループ学習に参加して、互いに学び合うことの重要性を認識した。その意味でもこの本がより多くの方に読まれることを期待したい。後半には、電磁気学の発見がニュートンの力の概念の限界を明らかにし、アインシュタインの研究へとつながっていくことまでアーロン君との対話から説明されている。ただ、内容自体は少し難しいので、親子で対話しながら議論して読んでもらいたい。

文 鈴木真二
東京大学大学院教授、専門は航空宇宙工学。飛行ロボットから、落ちない飛行機の操縦・制御技術など、幅広い研究に取り組む。日本航空宇宙学会監事、「紙ヒコーキ博物館」(広島県福山市)の名誉館長も務める。NHK教育『サイエンスZERO』のコメンテーターとしてもおなじみ。

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