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科学でわかる男と女の脳

科学でわかる男と女の脳
  • 2010年04月14日竹内薫
  • 著:麻生 一枝  イラスト:東雲 水生
    発行:ソフトバンククリエイティブ(サイエンス・アイ新書)
    ISBN:978-4797356236  定価:952円(税別)
    発行年:2010年3月18日
  • 書評:竹内薫

これを読めば、彼(彼女)の気持ちがよりわかる?!

女の子なら「男ってどうして胸の大きい女の子が好きなの?」と一度は疑問に思ったことがあるのでは? そして男の子なら「なんで女はガタイのいいヤツにばかり目を向けるんだよ」なんてことを思ったことがあるのではないでしょうか。好みは人それぞれだから、みんながみんな、巨乳の女性やマッチョな男性を好むわけではないけれど、普遍的に「好まれるタイプ」というものは確かに存在します。また、女性は結婚相手に経済力を、男性は若さを求める傾向にあるのだとか。
どうして、人間にはそういった「好み」があるのでしょう? そもそも、なんで「男」と「女」があるのだろう? そんな疑問に、この本は動物行動学的な視点から答えを出してくれます。キーワードは「自然淘汰による進化」。生きものがパートナーを選ぶのは「より多くの子孫をのこす」という究極の目的を果たすため。オスとメスがあるのも、パートナー選びに基準があるのも、その戦略のひとつである、ということです。「結婚」というシステムができ上がった理由や、「嫉妬」という感情が生まれるワケも、男の浮気・女の浮気の理由も……うーん、そうだったのか。

たとえば、哺乳類のほとんどのオスは育児に参加しません。なのに、どうしてヒトのオスは「結婚」という形で、長い期間にわたってパートナーと子どものそばにいるのでしょうか。この本では、ひとつの説として次のような理由を挙げています。
『そうしないとセックスすることが難しく、子を残しにくい』
性的に成熟している女性は、セックスをすれば妊娠の可能性が出てきます。もし妊娠したら、最低9ヶ月くらいの妊娠期間と出産、そして授乳と数年にわたる育児が待ちかまえています。それだけの時間を割くからには、セックスをする相手は慎重に見極める必要がある。
『女はセックスをできるだけ先送りにして、(中略)相手が食べ物や隠れ場所などの資源を長期にわたり供給し、自分や子どもを守ってくれる男かどうか、時間をかけてじっくりと見定める』ので、セックスだけを求める男よりも『最大の献身の証しである永続的な配偶関係、つまり結婚』を約束した男のほうがセックスの相手を確保でき、多くの子どもを残せただろう、と。これだけが理由ではないにしても、「なるほどなぁ」って納得してしまいます。
後半では、深刻な話題も扱われています。殺人やレイプ、子殺し……目次のところだけを見たら、お母さんやお父さんは「こんな本、読んで欲しくない」と早合点するかも知れませんが、この章が扱っている性や恋愛のダークサイドについては、むしろ思春期のときにしっかりと認識しておくべきでしょう。特に、子どもの虐待、最近になってようやく認知されはじめたデートDVやレイプの定義、同性愛や性同一性障害についてもきちんと触れられているので、肉体的・機能的ではない、精神的な性教育の教科書としても、この本はオススメです。
もうパートナーがいる人も、いまはいない人も、パートナーとよりよい関係を築くための参考書として読んでみてください。

文 竹内 薫
科学評論、エッセイ、書評、講演などを精力的にこなす「猫好き科学作家」(サイエンスライター)。テレビ、ラジオでキャスター、ナビゲーターなども務める。科学の真面目な解説書から、それを小説風に料理したSFタッチのショートショート、SFか現実かわからない不可思議なミステリーなど、その著書は多岐にわたる。

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