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日本らしい自然と多様性―身近な環境から考える―

日本らしい自然と多様性―身近な環境から考える―
  • 2010年07月14日小川哲男
  • 著:根本 正之
    発行:岩波書店(岩波ジュニア新書)
    ISBN:978-4005006540  定価:780円(税別)
    発行年:2010年5月28日
  • 書評:小川哲男

日本の豊かな自然の大切さと保全のヒントを教えてくれる本

日本各地には、先輩の方々が昔から、築き守り育ててきた豊かな自然があります。皆さんも旅行や移動教室などに出かけたときに、日本の自然のすばらしさに感動したことがあるでしょう。しかし、時には素敵な自然が破壊された姿に落胆したこともあるでしょう。本書は、美しい日本に残されている自然をこれからも守っていくにはどのようにすればよいかのヒントが多く示されています。

日本らしい自然と多様性ということをテーマにしながら、我が国に現存する里山や川の土手などに生きている草花を紹介しています。筆者は里山や川の土手の自然は古来の日本から存在してきたのか、あるいは、外国から近年入ってきたものなのかといった疑問を私たちに投げ掛けています。その答えとして、驚くことに、人間が手を加えていくと在来植物が多くなり、そのままにしておくと外来植物が多くなっていくと指摘しています。

日本らしい自然というと田園風景や里山を思い浮かべます。ところが、私たちの身の回りには、このような広大な自然は実際には存在しません。自然を守ることは田園や里山を広げたり、そのままの状態を保全することなのでしょうか。もし、そう考えるならば、私たちの生活とはかけ離れたことになってしまうのではないでしょうか。つまり、私たち人間は自然とどのように関わって生きていけばよいのかという疑問がわいてきます。

この疑問に対して本書では、「人間が利用してつくる半自然」という新しい考え方を提案しています。筆者は、新しいふるさとづくりの決め手は、「生態学の原理にもとづいた管理を通して、私たち人間と身近な自然との共生が作り上げる「半自然生態系」を維持する」ことであると指摘します。詳しく読んでいくと、このことの意味が少しずつわかってきます。まず、日本らしい自然を守り多様性を維持するためには、「ありのままの自然生態系」が地球上から急速に姿を消しつつあることから、できるだけ近づかないようにすることだというのです。また、「人工生態系」は人間を中心に人間とのかかわりで考える世界です。むしろ、私たちの身近な世界の多くは「人工生態系」に囲まれています。例えば、新しく作られた公園の街路樹や通学路の花壇などは人間が作り出した自然の空間といえます。したがって、人間による保護や保全が必要とされます。ここまで読みますと、筆者の考える自然は3つに分けられるとしています。それらは、日本人が守り育ててきた豊かな自然を「そのまま受け入れ保存する体系」と「手を加えながらも守り育てる体系」と「生活に合わせ必要に応じた人工生態系」の3つであると考えています。そして、これらの中でも、むしろ人間が手を加えながら守り育てる「半自然」の体系を大切にすることを提案しています。日本の豊かな自然を守るためには「半自然」を大切にすることであるといった筆者の結論には説得性があり、素晴らしい考えだと感動しました。

私は本書を読んでこれまで自然ということ、自然を守るということを表面的にしか考えていませんでしたが、自然についての考え方の整理ができました。そして、日本らしい自然を守るということの意味も理解できました。皆さんはいかがでしょうか。もうすぐ、夏休み、遠出をして、日本の豊かな自然を満喫してみませんか。

文 小川哲男
昭和女子大学大学院教授 博士(教育学) 専門:理科教育学。宮城県仙台市に生まれ、東京都の公立小学校で16年間、学校の先生をしました。その後、東京の武蔵野市教育委員会や都立教育研究所で、10年間、先生方の研修やお手伝いをしてきました。今は、昭和女子大学の大学院で学校の先生や幼稚園の先生になる学生を教えています。専門的に勉強しているのは、理科と生活科、そして総合的な学習についてです。スイカ、トウモロコシ、アイスクリーム、ところてんが大好きです。

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