

2009年12月から163日間、宇宙に滞在していた宇宙飛行士・野口聡一さん。今回はインターネットを通じ、リアルタイムで宇宙から眺める地球の姿や宇宙の生活を伝えてくれました。帰ってきて改めて宇宙飛行士の醍醐味(だいごみ)を聞かれ、「やっぱり美しい地球を眺められることでしょう」と、おっしゃっていました。
今回ご紹介の本は、その長期滞在の4年前、野口さんがはじめて宇宙に行くまでのことが書かれたものです。2003年、はじめてのフライトに向けての訓練・準備をすべて万端にしていた出発29日前、スペースシャトルコロンビア号の事故がありました。そこで、野口さんたちの生活は一変、宇宙が一気に遠ざかり、何をどうしたいいのかわからない状態になったのです。そのころの精神的なつらさを乗り越えさせたものは何だったのか。家族、友人、それまで積み重ねてきたものすべてとのつながり、そして、宇宙に行きたいという想いなのでしょう。
そして2005年、実際に宇宙に行き、シャトルの外にでて作業をしたときに見た地球は、「光に満ち満ちた丸くて青くて白い地球の存在感は、まるで地球全体がどこかに意思を持っているかのよう」だったそうです。宇宙の真っ暗闇の死の世界から、唯一の「生の世界」を見る。とにかく「生きているんだ!」というその感覚。頭で考えるのではなく、体全体がそれを感じる。自分は何故生きていくのか、何のために・・誰しもが一度は思ったことのある究極の問いに対し、「地球の外から地球を見る」ことが、どれだけ新しい視点を与えてくれたことか、これは、野口さんに限らず多くの宇宙飛行士の言葉からも感じられることです。
野口さんは、「何故、宇宙へ行くのか」という問いへの答えは、外から与えられるものではなく、内側から湧き上がってくるものなのだ、と書いています。野口さん自身が、コロンビア号事故からの2年半を経て、見つけた自らの答えは、オンリーワンということでした。もう2度とシャトルが宇宙に行くことはできないかもしれない、と思われたその時期に、日本人として、地球人として「地球の外から地球を眺める」ことの深い意味を再び気づかせてくれた野口さん。 長期滞在をして、さまざまな地球の姿の写真をリアルタイムで送ってきてくれた今、野口さんのその歩みをこの本で振り返ることで、あらためて「想いつづけること」の大切さに気づきます。
余談ですが、21世紀中のいつか、世界の国の首脳が集まる会議が国際宇宙ステーションで行われているといいなあ、と私はひそかに願っているものの一人です。
文 高橋真理子
山梨県立科学館天文担当学芸員。北海道大学在学中には、北海道をはじめ全国を自転車でめぐる。名古屋大学理学研究科では、オーロラの研究に取り組む。1997年、山梨県立科学館建設準備室に入り、翌年の開館時より現在の仕事にたずさわる。プラネタリウムにおける解説、番組プロデュース、特別展を含むさまざまな事業の企画・運営を行う。「つなぐ」「つたえる」「つくる」が仕事のキーワード。星の力で、いろいろな分野や人をつなぐことが一番の喜び。小5の男の子と保育園年長の女の子と共ににぎやかな(さわがしい)毎日を過ごす。
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