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ミミズの話

ミミズの話
  • 2010年09月08日竹内薫
  • 著者:エイミィ・ステュワート 翻訳:今西康子 
    発行:飛鳥新社
    ISBN:978-4864100304 定価:1700円(税別)
    発行年:2010年8月4日
  • 書評:竹内薫

ちいさいけれど、すごいヤツ。

最近、ミミズを見かけましたか?見かけた人は、どんなところで見かけましたか?ちなみに私は、ここ最近、元気なミミズを見かけることがほとんどなくなりました。昔、子どもだった頃は、土をほじくり返して遊んでいたりすると、ちょっとピンクがかった元気なミミズに遭遇したりしたものですが、今では雨上がりの舗装道路で死にかけているのを見かける程度。だから、自分が暮らしている足下で彼らが蠢(うごめ)いていることなど、すっかり忘れていました。

そんな忘れられた(?)存在のミミズ、実はすごいヤツだったようです。著者のステュワートさんは「ミミズコンポスト」という、ミミズに生ゴミを食べてもらって肥料にするゴミ処理器をいくつも庭に置いていて、ミミズの旺盛な食欲や好き嫌い、生ゴミの処理能力について詳しく観察しています。そして自分の庭にいるミミズを眺めるだけでは飽き足らず、ミミズ研究者にさまざまな疑問をぶつけるのです。ミミズの死骸をみたことがないけれど、ミミズはどうやって死ぬの?森で見つけたミミズは在来種でないように思えるけれど、外から運ばれて住み着いたミミズが環境に影響を及ぼしたりはしないの?
そうなんです。実は「ミミズの害」というものもあるんです。

「ミミズがいると、いい土になる」という話を聞いたことはないですか?実際、ミミズはその活動によって土を耕し、その糞が土地を肥沃にしてくれます。その小さくて偉大な営みに最初に目を向けたのは、かの有名なチャールズ・ダーウィンで、晩年のダーウィンはミミズ研究に打ち込み、この小さな生きものをとても愛していたといいます。
最近のミミズはその能力を買われ、生ゴミだけでなく有害物質に汚染された土壌の改善や下水の処理までやらされているようですが……
実は、外来種のミミズが在来の種を駆逐してしまうことで森林の植生が変わってしまったり、田んぼの畝(うね)がミミズによって穴だらけにされ破壊されてしまうという被害も、あちこちで起きているのだそうです。
でも、どんなミミズがどれだけ生息しているか、どんな分布をしているのかを知るのは容易ではありません。もしかしたら、人知れず絶滅している種だってあるかもしれないのですが、それも知りようがない。死骸は土の中で分解されてしまい、化石として残ることもない。なにしろ、彼らの住まいは私たちの目が届かない土の中。いくらほじくり返したところで、私たちが知ることができるのは、地下世界のほんの表面に過ぎないのです。
すべての山に登り、深海に潜り、宇宙にまで進出した人類ですが、地下世界は前人未到の地。その表面に顔をのぞかせて私たちをうかがっているミミズの話を、ぜひ読んでみてください。ユリの香りがするミミズもいるそうですよ!!

文 竹内 薫
科学評論、エッセイ、書評、講演などを精力的にこなす「猫好き科学作家」(サイエンスライター)。テレビ、ラジオでキャスター、ナビゲーターなども務める。科学の真面目な解説書から、それを小説風に料理したSFタッチのショートショート、SFか現実かわからない不可思議なミステリーなど、その著書は多岐にわたる。

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