

海の生きものというと、みなさんは何を思い浮かべますか? やはり魚や、鯨・イルカのような大きな生きものがパッと思い浮かびますよね。いきなりイソギンチャクとかウミウシを思い浮かべる人は……この本をぜひ隅から隅まで読んでください(笑)
この本に紹介されているのは、あまり泳ぐことはなく、どちらかというと海の底や岩なんかにへばりついていることが多い生きものばかり。その中でも、骨を持たないグニャグニャの生きもの→無脊椎動物が多く載っています。だから、彼らを実際に海のなかで発見しようと思ったら、よーく目をこらして辛抱強く探す必要がありますが……なんと色彩豊かで、ちょっと不気味でかわいくて不思議な生きものたち! どうしてこんな色に染まってしまったのか、神様のいたずらなんじゃないかと思うくらい……
この本を書いている中野さんはダイビングが好きで、ウミウシが大好きで大好きで、ウミウシの記事を雑誌に書き、図鑑を自分で書き、でもそれだけでは飽きたらず、とうとうウミウシを研究している大学院の研究室に進学したのだそうです。その研究室の先生が、この本を監修している広瀬先生で、本の中でのふたりのやりとりは、なんだか漫才のよう。
『海のなかの動物は食ったり食われたり、生きる場所を取り合ったりと、常にシビアな世界で生きている。そんな中で、違う種の生物どうしが互いに寄り添って生きていることがある。このような現象を共生という。(中略)「片方しか利益がなくても寄生ではない? 片利共生というと、成功して大金持ちになった人に自称親戚とか自称親友ごはんやお酒をたかっているような感じがしますよ。寄生っぽいですけど、やっぱり共生なんですか?」「その大金持ちの人が、たかられても痛くも痒くもないと感じているなら片利共生、たかられることで財産がどんどん目減りして、迷惑だ、もうやめてくれ、といっているのに周囲がたかるのをやめない。そういう場合は寄生です」(広瀬)』
中野さんはもともと雑誌や本に文章を載せるライターさんで、あとから学者さんになったので、文章がとてもわかりやすく、とっても面白いんです。
最後の11章には「海で動物観察する方法」が載っていますので、海に遊びに行く予定がある人はこの本で予備知識を仕込んで、実際に海辺で本に載っている生きものを探してみるのも面白いでしょう。
残念ながら遊びに行く予定のない人は、きれいな写真を見て気分だけでも涼しくなりましょう!
文 竹内 薫
科学評論、エッセイ、書評、講演などを精力的にこなす「猫好き科学作家」(サイエンスライター)。テレビ、ラジオでキャスター、ナビゲーターなども務める。科学の真面目な解説書から、それを小説風に料理したSFタッチのショートショート、SFか現実かわからない不可思議なミステリーなど、その著書は多岐にわたる。
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