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『ライト兄弟はなぜ飛べたのか ~紙飛行機で知る成功のひみつ~』

『ライト兄弟はなぜ飛べたのか ~紙飛行機で知る成功のひみつ~』
  • 2007年06月13日鈴木真二
  • 土佐幸子 さ・え・ら書房 ISBN:9784378038964 定価:1,400円(税別) 2005年4月発行
  • 書評:鈴木真二

ライト兄弟の初飛行を追体験する

ライト兄弟が人類初の動力付き飛行機の初飛行に成功したのは1903年である。初飛行から100年を記念し、多くの行事が企画され、アメリカでは復元機の飛行まで行われた。関連する書籍の出版もなされ、私も、技術的な解説を目的に本を書かせていただいた。もっとも、私の本は専門的すぎた。文科系の方や中高生のみなさんには難しかったと反省していたところ、この本に出合った。紙飛行機で遊びながら、ライト兄弟の初飛行までの道のりが体験できるという内容だ。素晴らしい。これなら子どもたちでも楽しめる。

ライト兄弟の偉大さは、「自分で自ら実験して技術をつくり上げた」点にある。グライダーで飛行実験を行ったドイツのリリエンタールの計測結果をもとに機体を設計し、鳥の飛行を観測して操縦方法を考案した兄弟であったが、1900年、01年に実験したグライダーはまともには飛ばなかった。結局、風洞という翼の特性を測る実験装置を自作し、自分たちで計測を行い、設計をしなおした。土佐さんは、扇風機を使った実験を紹介している。操縦技術は、実はライト兄弟の最大の功績で、この点に関しても、土佐さんは紙飛行機でうまく飛ばすための調整法を押さえていて抜かりはない。こうした実験を、簡単に体験できるところがこの本の素晴らしいところだ。

ライト兄弟の妹のキャサリンに扮した土佐さんの写真が、この本に載っている。実験をいかにも楽しそうになさっている。ライト兄弟の開発は苦労の連続であったが、兄弟を支えたのは、空を飛ぶ楽しさであったに違いない。実際に空を飛ぶのは簡単ではないが、紙飛行機なら大空を飛ぶスリルと楽しみを体験できる。

実は、私も折り紙飛行機が大好きだ。私は、大学の航空宇宙工学科へ進学した学生たちとともに、紙飛行機大会を行うことにしている。なかには素晴らしい飛行を見せてくれる学生もいるが、ほとんどの機体はすぐに墜落してしまう。折り方、調整法、飛ばし方の違いで、見違えるほどよく飛ぶのだが、自分で工夫して改良してゆくことに学生たちは慣れていない。完成した模型やおもちゃでしか遊んだ経験がないからであろう。失敗を繰り返し、自ら考え、工夫することの大切さ、楽しさをみなさんも体験してほしい。それがライト兄弟のように新しいものを創り出す源なのだ。

文 鈴木真二
東京大学大学院教授、専門は航空宇宙工学。飛行ロボットから、落ちない飛行機の操縦・制御技術など、幅広い研究に取り組む。日本航空宇宙学会監事、「紙ヒコーキ博物館」(広島県福山市)の名誉館長も務める。NHK教育『サイエンスZERO』のコメンテーターとしてもおなじみ。

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