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熱帯雨林のジャングルや砂漠(さばく)といった「日本から遠いところ」にすむ不思議な生きものたちをTVなどで見てワクワクしたことのある人は、ぜひこの本を読んでみてください。この日本で、運がよければあなたの家の庭で、小さな生きもの達のびっくりするような生活を目にすることができるでしょう。
題名の通り、本当にたくさんの「びっくり新常識」がこの本の中に詰(つ)まっているのですが、どのムシも決して珍(めずら)しいものではなく、「ああ、あれね」とか「見たことある!」と思うようなヤツらばかり。それなのに、「えー、こんなこと知らなかった!」とびっくりさせられます。
たとえば『アリンコ牧場の顛末(てんまつ)〜クロヤマアリ〜』の章では、見たことがない人なんてたぶんいないはずのクロヤマアリの(かなり)意外な一面が紹介(しょうかい)されていますし、『スピード勝負の「神経系」〜反応は金メダリストの10倍超〜』では、日ごろムシたちのことを「虫けら」呼ばわりしている人間の能力なんて、ムシたちの足下にも及ばないんだなぁ、ということを痛感(つうかん)させられます。
その他『ウンコしません! 肛門(こうもん)をふさいだ大発想』などなど・・・・・・ここには書ききれない面白エピソードが、合計100項目入っているのですが、最初から順番に読んでいかなくとも、目次を見て、気になるページだけ開いて読むこともできます(でも、きっと面白くて全部読んじゃいます)。
子ども向けに書かれた本ではないので、学校で習っていない言葉もたくさん出てきます。石炭紀(せっかいき)、準社会性動物、多剤耐性菌(たざいたいせいきん)、ベンゾキノン・・・・・・これらは、わたしでもよくわからない言葉です。こんな風に、本を読んでいてわからない言葉が出てきたときに、自分で調べて納得すると、読書はさらに面白くなります(インターネットで調べるのが簡単です)。学校で習っていない科学用語を、一足先に自分のものにできるのです。しかも、自分で調べたことというのは、忘(わす)れにくい。ただ暗記したものよりは、ずっと頭に染(し)みこみやすいのです。
著者(ちょしゃ)の森さんは言います。『ムシにかぎらず、近所の平凡(へいぼん)な自然世界はだれでも手にすることができる新発見の金脈』だと。世の中では「エコ」という言葉だけがあふれ、自然環境(しぜんかんきょう)を大事にする本当の意味は理解されていません。自然環境を大事にする本当の意味とは、ムシも鳥も魚もけものも、たくさんの生きものが食べたり食べられたりしながら存在している「多様性」を認(みと)めることなのです。
自然環境を守るためには、まず知ることが必要です。知るには、面白いほうがいい。この本でぜひ、たくさんのムシの「生」を発見して、楽しんでみてください。
文 竹内 薫
科学評論、エッセイ、書評、講演などを精力的にこなす「猫好き科学作家」(サイエンスライター)。テレビ、ラジオでキャスター、ナビゲーターなども務める。科学の真面目な解説書から、それを小説風に料理したSFタッチのショートショート、SFか現実かわからない不可思議なミステリーなど、その著書は多岐にわたる。