

動物が大好きで、将来(しょうらい)は動物に関わる仕事をしてみたいと思っている人にとっては、どんな職業があるでしょう?すぐに思いつくのは獣医(じゅうい)さんや生物学者などですが、この職業につくためには、どうしても避(さ)けては通れない科目があります。生物の解剖(かいぼう)です。勉強としては必要なことではあるけれど、動物が好きなのにその生命を奪(うば)わなくてはならないというところが、動物好きにとってはちょっとキビシイ科目ですよね。それをなるべくやらないでも動物のコトが勉強できる分野って、ないの?あります。それが、動物行動学と呼ばれる分野です。
あまり聞き慣れないけれど、いったい、どんなことを勉強するんだろう。そんな疑問(ぎもん)に答えてくれるのがこの本です。動物行動学を専門(せんもん)にしている小林先生が、勤めている鳥取環境大学の中で起こるさまざまな事件を通して、この学問の魅力(みりょく)を語ってくれます。
人間は、どうしてヤギのような草食動物の姿(すがた)を見ていると心が快いのか?そのヤギは、どうやって「ヘビだ!」と気づくのか。そしてシマリスが、天敵であるはずのヘビの頭をかじる?!動物を、身体の中の構造だけではなく、その行動をよーく観察することで、さまざまなことを知る。その行動にどんな意味があるのか、そういう行動はなぜ必要になったのか。そして人間も動物の一部であること、それってすごくステキなことなんだなぁ、と気づくことができる。動物行動学とは、とても魅力的な学問だと思いませんか?
小林先生は、ご自分の研究についてこんなふうに語っています。
「いつも頭の片隅(かたすみ)にあるテーマは(しばしば事件に夢中になって忘(わす)れてしまうが)、“人間と自然の精神的つながり”の理解である。それは、現在われわれが日々抱(かか)えている問題の解決に直結する発見や技術、行動指針をすぐに与えてくれるものではない。与えてくれるものではないが、私はそれに興味がある」
小林先生の学校では、廊下(ろうか)を巨大コウモリが飛んでいたり(小林先生前作『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』より)、部屋の中でヘビが脱走(だっそう)したり、学校の近くの田んぼにはイノシシが、森の中ではテンが走り回っています。そして、水の中に住んでいるはずのアカハライモリが登山道を歩いている!(ちなみに、学校の廊下も歩いていたそうです)
同じ出版社から小林先生の『先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!』というビックリな題名の本がすでに出ていますので、動物行動学に興味がわいた人もそうでない人も、(ちょっと難(むずか)しい漢字や専門用語が出てきますが)動物好きならきっと楽しく読める本ですから、ぜひ手に取ってみてください。
文 竹内 薫
科学評論、エッセイ、書評、講演などを精力的にこなす「猫好き科学作家」(サイエンスライター)。テレビ、ラジオでキャスター、ナビゲーターなども務める。科学の真面目な解説書から、それを小説風に料理したSFタッチのショートショート、SFか現実かわからない不可思議なミステリーなど、その著書は多岐にわたる。