

世界天文年である今年、その中でも最大の盛り上がりを見せるであろうと言われているのが7月22日。
日本各地で日食が見られる日です。「日」を「食べる」と書く日食・・・言葉通りに、太陽がナニモノかによって食べられてしまうかのように見えるのです。そのナニモノか、は何でしょう?
ふだんは光と暖かさと恵みをもたらしてくれる太陽がどんどん欠けていき、気温も下がり、変な風が吹き、動物たちが騒ぎ始める。そして、太陽が真っ黒になる・・・ そんな様子を、昔の人たちは、どのように感じていたのでしょう。
現代を生きる私たちは、太陽を食べてしまう「ナニモノか」が月であることを知っています。そして、いつ、どこでそれが見られるのか、正確に計算することもできます。けれども、この日食という現象が、太陽と、そのまわりを回る地球と、さらにそのまわりを回る月の絶妙な位置関係がひきおこしている「奇跡」であることには、昔も今も変わらず、そしてその美しさや怖さも変わることはないのだと思います。
この絵本は、「日食の科学と神話」という副題の通り、「日食ってどうしておきるの?」「昔の人たちはどう感じていたの?」のどちらにも応えてくれます。科学と神話はとても似ている、と思うことがあります。神話というのは、「いったいこの世界はどういうところなんだろう?」という疑問からはじまり、自分たちなりに納得するために語られてきたもので、科学も同じ疑問からはじまって、それに答えるために人々が積み重ねてきた知恵の集まりと言えるでしょう。いずれもはじまりは、いろいろな現象を五感で感じ、それを不思議と思うことなのです。
作者の寮さんは、科学的な内容を、表現力豊かに物語にしてくれる人です。科学的にわかっていることを淡々と述べられるよりも、五感に響くような言葉で語ってもらったほうがずっと胸に残ります。日食を経験していない人も、「まるで、深い水の中にもぐっていくような、見たこともない、ふしぎな暗さだ。」と言われたら、それがいったいどんな状況なのか、あれこれ想像してみたくなりますね。
7月22日、あなたはどこで日食を見るでしょうか?この本には、日食を見るときの注意や試してみたいことも丁寧に書かれています。そして、今年の日食が終わっても、今後見られる日食の情報も2035年まで書かれていますので、もしかしたらあなたの子どもと一緒にこの絵本を開き、日食を心まちにする日が来るかもしれませんよ。
文 高橋真理子
山梨県立科学館 天文担当学芸員。北海道大学在学中には、北海道をはじめ全国を自転車でめぐる。名古屋大学理学研究科では、オーロラの研究に取り組む。1997年、山梨県立科学館建設準備室に入り、翌年の開館時より現在の仕事にたずさわる。プラネタリウムにおける解説、番組プロデュース、特別展を含むさまざまな事業の企画・運営を行う。「つなぐ」「つたえる」「つくる」が仕事のキーワード。星の力で、いろいろな分野や人をつなぐことが一番の喜び。小4の男の子、4歳の女の子と共ににぎやかな(さわがしい)毎日を過ごす。
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