

ペンギンが大ブームです。しかも、自然の海ではなく、動物園・水族館で飼育展示されているペンギンが大人気なのです。国内の動物園でのお披露目は1915年ですから、約100年もの長い間、その姿を披露してきたのに、なぜ今、大ブレイクしたのでしょう?
最近、新種のペンギンが発見されたわけではありません。ペンギンに特別な能力が備わったり、体つきが変わったのでもありません。その秘密は、展示や飼育の技術が年々向上したことにより、ペンギンの生態や行動が、楽しく分かりやすく観覧できるようになり、より身近な動物として注目されるようになったからでしょう。
自然の岩山のような陸地、造波装置のついた広大なプール、天井から雪が降る氷点下に管理された極地展示室、頭上に覆いかぶさるようにオーバーハングしたトンネル状の巨大なアクリル水槽、透き通る飼育水など、ペンギンたちの生態を伝える仕掛けは驚くほど進化しました。ペンギンたちは、それらの中を飛ぶように泳いだかと思えば、園内でのパレードではよちよち歩きを披露し、雪が降ればその上を滑走するなど、その様はとても愛らしく活発です。まるで、新しい動物種が導入されたかのような注目度なのです。かつて一つの動物に、これほどまで飼育や展示に技術革新がされた事例は少ないでしょう。
ペンギンは南半球の海にしかすんでいない海鳥です。自然の姿を見るには、日本人は、はるばる赤道を越えて出向かねばなりません。ところが今、私たちは。国内の動物園・水族館で、まるで野生で暮らしているかのような姿に接し、さらに現地でも体験できないような、彼らの生き生きした姿に出会うことができます。何とすばらしいことでしょう。日本はペンギン王国と言われていますが、これは単に、ペンギン好きな国民性、種類や個体数が多いということだけでなく、この約100年の間に、動物園・水族館の飼育員が、その魅力を伝えるために、たゆまぬ努力と向上心をもち続けたから成し得たことなのです。
本著は、その飼育員によって書かれた、本格的なペンギンの写真図鑑です。ペンギンの体、生活、行動、飼育、繁殖などなど、多くの素敵な写真がページを飾っていますが、全てが国内の動物園・水族館で飼育されている個体ばかりなのです。どんなエサを食べ、子どもはどうやって育ち、飼育員の一日はどんな仕事なのか、興味はつきません。そんなペンギンにまつわる話題とちょっとした裏話を、担当の飼育員から教えてもらえる、わくわく気分の楽しい一冊なのです。
ペンギン好きの方だけに限らず、これから、動物園・水族館を訪問しようとしている方も、本著を通して、新たなペンギンの魅力や不思議を知ることで、あたかも自分も飼育員になった気分になれることでしょう。
高田浩二
1953年、大分生まれ。東海大学海洋学部卒業後、大分生態水族館(マリーンパレス)入社。1988年、海の中道海洋生態科学館に入社、2004 年に同館長に就任。水族館と学校との連携による教育プログラムの開発、実施に力を入れる。日本動物園水族館教育研究会会長、福岡教育大学非常勤講師、福岡大学非常勤講師、九州産業大学非常勤講師などを務める。