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大学で「工学理解推進プロジェクト」というゼミを始めました。大学生が小学生に科学の授業を行うというものです。大学生は自分の得意な科学分野を子供たちに説明することで、サイエンスコミュニケーション能力を磨きます。小学生に分かるように説明できるようになれば、誰に対しても説明ができるはずです。小学生たちは、理科で習っていることが社会で使われる技術に、そして大学での最先端の研究にどのようにつながっていくのかを知ることができます。ゼミでは工学部の学生、大学院生でチームを作り、教育学部の先生や大学院生も協力してくれます。
先日、NPO「センス・オブ・ワンダー」の皆さんの協力を得て、小学校5年生の特別授業に参加しました。「ペットボトルロケット」の発表をしたチームと、「電池の実験」の発表をしたチームの授業を見て感じたことがありました。子供たちの理解に大きな違いがあったことです。ペットボトルロケットは噴射する水の反作用で前に進みます。「作用反作用の法則」は言葉では難しいのですが、押せば押し戻されると、体感もできるので容易に理解できたはずです。ところが、電気の実験は難しかったようです。目に見えない電気がなにものかを想像することが難しかったのでしょう。
「作用反作用の法則」はニュートンによって17世紀後半に作られたのですが、電気のことが分かるのはもっと後のことで、今のように電気が各家庭に届けられるのは19世紀も後半のことでした。ニュートンは物体の運動の研究から万有引力の法則を導きました。月が地球を回るのは地球が万有引力で月を引きよせるためであり、その反作用で月も地球を引き寄せているのです。ただ、離れているものに力が及ぶという考えは多くの科学者たちを悩ませました。電磁石の実験は小学生でも行いますが、その力はニュートンの考えでは説明できず、その考えに限界があることが明らかになり、アインシュタインの理論へとつながっていくのです。実は、電気のことを科学者たちは長いあいだ悩んでいたのですから、小学生の皆さんが良く分からなくてもちっとも心配することはありません。科学の発達は、それまでの考えを疑うことから始まるのです。大いに不思議に思ってください。
今回、紹介する本は、人類が電気を理解し、使いこなすまでのことが分かりやすく書かれています。静電気をためることから、電池が発明され、さらにモーターが作られ、発電も可能になり、無線までも使えるようになった歴史が分かります。電気の発達には日本人も関与していることも説明されています。アインシュタインの理論へつながるところまでは難しいので書かれていませんが、そのことはまた別の本で紹介したいと思います。
文 鈴木真二
東京大学大学院教授、専門は航空宇宙工学。飛行ロボットから、落ちない飛行機の操縦・制御技術など、幅広い研究に取り組む。日本航空宇宙学会監事、「紙ヒコーキ博物館」(広島県福山市)の名誉館長も務める。NHK教育『サイエンスZERO』のコメンテーターとしてもおなじみ。