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動物病院24時

動物病院24時
  • 2010年01月13日竹内薫
  • 著:ニック・トラウト 訳:桃井緑美子 発行:NTT出版
    ISBN:978-4-7571-4195-7  定価:1900円(税別)
    発行年:2009年11月
  • 書評:竹内薫

何が正しいかなんて、たぶん誰にもわからない

犬や猫を飼っている人は、きっと一度くらいは獣医さんのところに行ったことがありますよね。ヒトと違って、身体の具合の悪いところを言葉で伝えることのできないペットたちの病気やケガを治してくれる動物のお医者さんって、どんな職業なんでしょう? どんな患者さんが来て、どんなことをするのでしょうか? 
この本を書いた獣医さん、トラウト先生は、イギリスの大学を出てアメリカで働いている獣医さんなので、日本で学んで働いている獣医さんとは勉強や仕事のしかたが少し違うかもしれません。でも、大変なこと、うれしいこと、悲しいことはきっと同じでしょう。獣医さん達の本音が語られているこの本は、将来、獣医さんになりたいと考えている人にはもちろん、ペットを飼っている人にもぜひ読んでほしいと思います。

動物医療には、大きな問題があるといいます。その問題は、もしかしたらヒトに対する医療行為よりずっと大きいかもしれない。「費用」や「安楽死」の問題です。
家族同然に思っているペットが、病気やケガで苦しんでいるなら、できる限りの手を尽くしてなんとかしてあげたいと思う。でも、お金には限りがある。本の中では、自分のお父さんが大金をはたいて飼い犬の治療をしようとしているのを快く思わない娘さんが、こんなことを言います。
『この国には最低限の医療も受けられない子供がいるのに、年間何十億ドルものお金を動物にかけているなんて、まともに理由を説明できるんですか』
また、病気やケガのペットがもし「もう、何をしても助からないでしょう」と言われてしまったとしたら、いったいどうすればいいのでしょう。苦しみを早く終わらせてあげた方がいいのか、それとも、少しでも一緒にいる時間が多い方がいいのか。
『大切な友と一日でも長く一緒にいられるなら、それに勝るよろこびはないと思う飼い主もいる。いや、あと一年も生きられないのなら、もう終わりにしようと考える飼い主もいる』
そんな飼い主に対して、どちらの選択がベストかをアドバイスするのも獣医さんの仕事。でも、どっちが正しいなんて、きっと誰にもわからないのです。だから獣医さんも悩み、悔やむ。診断を間違うこともある。時には無責任な飼い主から、健康で全く問題のないペットの安楽死を頼まれて、怒り心頭になることもある。
獣医さんという職業の面白さ、大変さだけでなく、「いのち」を扱うということの重み、ペットを飼うということの責任についても改めて考えさせてくれる本です。

文 竹内 薫
科学評論、エッセイ、書評、講演などを精力的にこなす「猫好き科学作家」(サイエンスライター)。テレビ、ラジオでキャスター、ナビゲーターなども務める。科学の真面目な解説書から、それを小説風に料理したSFタッチのショートショート、SFか現実かわからない不可思議なミステリーなど、その著書は多岐にわたる。

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