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著者を紹介します。小西雅子(こにし まさこ)さんは、世界自然保護基金(WWF)という国際NGOに所属しており、地球温暖化の国際交渉を担当する専門官です。実際は、地球温暖化の進行を防ぐために国際協定を交渉する国連の会議に参加して、世界各国に働きかける仕事をしています。
この本の素晴らしさは、地球温暖化について、その仕組みだけではなく、温暖化を防ぐためには、国際協力が必要なことをわかりやすく説明してくれるところにあります。地球環境問題の現状を知る、温暖化防止の国際的な取り組みを理解する、そして、温暖化防止のためにできることを始めようという、地球温暖化防止の知識と行動の本です。
お天気お姉さんの小西さんが、地球温暖化の専門官に
小西雅子さんは、もともとテレビ局のアナウンサーでしたが、その後、お天気姉さんの仕事をされていました。1995年から天気予報の仕事が自由化され、民間の放送局でも天気予報ができるようになったときに、小西さんは難関といわれる気象予報士試験に挑戦し、合格し、天気キャスターとして活躍していました。
ところで、どうして、天気キャスターの小西さんが、地球温暖化の国際交渉の仕事に携わるようになったのでしょうか。この本の最後に次のように書かれています。
「天気の世界には国境がありません。例えば、中国で巻きあがった砂嵐は遠い日本まで飛んできて『黄砂』となって空から降ってきます。冬のシベリアから吹いてくる冷たい風は、日本海で水蒸気をたくさん吸いこんだ後に、日本で大雪を降らせます。日本は台風が多い国ですが、アメリカではハリケーン、インド洋ではサイクロンと発生する場所は違っていても、仕組みは皆同じです。」
小西さんは、そのような世界の天気の仕組みを調べているうちに、世界中で異常気象が起きていることに強い関心を持つようになりました。例えば、アメリカに強いハリケーンが上陸するようになってきた、巨大なサイクロンがバングラディシュに大きな被害をもたらした、アフリカでは大きな干ばつが長期化しているなどについてです。そして、小西さんは、何かがおかしくなっていると気付き、地球そのものに危機感を感じ、地球温暖化防止にかかわる仕事に就きたいと考えたのです。
それでは、この本の目次にしたがって内容を紹介します。
はじめに
第1章 地球温暖化の科学
第2章 温暖化をめぐる国際交渉の現状
第3章 2013年以降の次期枠組みの交渉
第4章 日本の温暖化対策の歩みと国際交渉への取り組み
第5章 温暖化防止の行動に参加して、変化を起こそう!
終わりに
目次を見てみますと、どの項目も楽しそうな内容です。ここでは、それらのいくつかを紹介します。
地球温暖化による被害の現実
第1章「地球温暖化の科学」では、地球温暖化によって深刻な被害を被っている事実を具体的に挙げています。
例えば、ケニアでは、農業や酪農を営んでいる農家の方の話を紹介しています。草が枯れてしまうほどの気温上昇、死者まで出るようになったマラリアの発生、食料不足や収入の低下などの被害をもたらしていると紹介しています。
また、南極大陸のペンギンが年を追うごとに、上陸する数が減ってきている、その理由が、ペンギンのえさになる海の小動物に必要な海氷が温暖化のために減少しているからなのだということです。
この他にも、温暖化によって、自然との共存で高級米を生産してきた産地での米が白く濁ったりする被害など多くの具体的な例が述べられています。どの例も深刻であり、その原因が地球温暖化にあると指摘しています。
地球温暖化の仕組みの謎
この第1章では続いて、このような地球温暖化はどのようにして起きるのかその仕組みを説明しています。理科教育が専門である私は、地球温暖化について、これほどわかりやすく書いてある本はないと感じました。小西さんの本に従って説明してみましょう。
地球は太陽からの熱が海や陸に届くことによって暖められています。一方、地球は宇宙に熱を放出していることによって、温度を一定に保っています。その仕組みの中心は温室効果ガスの存在にあります。地球から熱の一部分だけを放出し、地球の表面から熱が逃げすぎないようにしているのがこの温室効果ガスです。つまり、温室効果ガスは地球を暖かくちょうどよい程度の温度に保つ役割を果たしています。このように、温室効果ガスは地球にとっては必要不可欠なものです。
ところが、この温室効果ガスが増えすぎると、熱を吸収するガスが増えるわけですから、大気の熱の放出が妨げられ、大気が暖まってしまうのです。その結果が地球温暖化となるわけです。温室効果ガスには、二酸化炭素、メタン、フロンなどが含まれています。これらのガスは人間の活動によって生み出され、これらの成分が多くなればなるほど、温室効果が増大し、大気温度が上昇することになっていくのです。
温暖化防止には国際交渉が必要
第2章「温暖化をめぐる国際交渉の現状」では、地球温暖化問題はなぜ、国際的な協力が求められるのかについて詳しく書かれています。
地球の大気はすべての国でつながっているために、どこかの国で温室効果ガスを排出すると、全世界に影響します。考えてみれば当然のことなのでしょう。特に、温室効果ガスを多く排出しているのは先進国であり、温暖化の被害を受けているのは貧しい途上国の人たちです。つまり、もともと貧困や飢餓に苦しんでいるのに、温暖化によってますます、厳しい状況に追い込まれている現状があります。したがって、地球環境問題は地球全体の自然環境の問題であり、人類全体の問題であることから、世界が協力して地球環境問題に取り組むことが求められているのです。
このように、温暖化問題の難しさは、現在温暖化にまだ関与していない、後発開発途上国が、影響を真っ先に受けてしまうという、不公平さが出ていることに問題があると指摘しています。地球温暖化問題は先進国と開発途上国の間の大きな違いが出ていることに目を向けると、先進国の責任は極めて重いといえます。
私たちに今、できること
第5章「温暖化防止の行動に参加して、変化を起こそう!」では、私たちにとって、地球温暖化防止のために何ができるのかについて書かれています。地球温暖化は人間の活動によって引き起こされている、そして、現在も続けて様々な被害が世界中で起きていること、しかもさらに悪化が予想される時、温暖化を緩和するために必要な手立てを取らなければなりません。小西さんは、次のように訴えています。
(1)温暖化の科学、経済、国際交渉について、“積極的に”知ろう!
まず、地球温暖化の現実や問題点について、本やインターネットなどで詳しく調べてみることです。内容が理解できたら、自分で調べたことを整理しまとめてみることです。その際、大切なことは、自分なら何ができるのかを常に考えておくことです。
例えば、「マイお箸」を使ってみる、買い物に出かけた時、「エコバック」を買う、レジで「ビニール袋」をもらわないなど、常に、調べるときは、自分でできることを考えながら進めることです。
(2)知ったことを元にして、“行動”しよう!
次は、地球温暖化ついて自分で調べ整理した情報に基づいて、自分なりにできることを考えていくことです。考えたことを行動に移す、これが地球温暖化防止の最善策だからです。例えば、調べたことを発表する。その発表の内容を基に地球温暖化の被害を多く被っている国、温暖化ガスを多く出している国などと別れてデベートする。そして、それぞれの国が抱えている課題を身をもって感じ取る。近隣の工場に見学に行く、役所や研究所などで質問、調査するなどです。
(3)自分のいる場所で、温暖化防止の意識で“変化を”起こそう!
私たちは学生であったり、会社員、主婦であったりします。それぞれの立場で社会やいろいろな場所で、自分でできる行動をし、変化を起こすようにしよう。これまで勉強して得た知識や知見をもって社会に出て、全員で地球温暖化防止を一歩進める役目、つまり変化につながる役目を果たすように。
この本を読んで、私は、このかけがえのない地球環境と、地球温暖化の厳しい現実、しかもそれを国際的に防ごうとする人間の努力の素晴らしさに感動しました。しかし、一方で、この地球、そして人類の危うさも、著者から教えていただきました。
地球環境は、過去、現在はもとより、未来にわたって人類が共有しているかけがいのないものです。この素晴らしい地球環境を守るために私たちにも求められるのは、現在、私たちが次の世代のためにできること、考えうることを行い、この地球環境をいつまでも美しく残していくことではないでしょうか。
文 小川哲男
昭和女子大学大学院教授 博士(教育学) 専門:理科教育学。宮城県仙台市に生まれ、東京都の公立小学校で16年間、学校の先生をしました。その後、東京の武蔵野市教育委員会や都立教育研究所で、10年間、先生方の研修やお手伝いをしてきました。今は、昭和女子大学の大学院で学校の先生や幼稚園の先生になる学生を教えています。専門的に勉強しているのは、理科と生活科、そして総合的な学習についてです。おもちと数の子が大好きです。