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コラム

モリバッタのふしぎ

2008年12月05日    湊和雄(写真家、「自然だより」執筆者)


写真1

「自然だより」でおなじみの沖縄県在住の写真家湊和雄さんから、「モリバッタのふしぎ」についてのコラムがとどきました。生き生きとした写真とともにお楽しみください。

奄美大島(あまみおおしま)・トカラ列島(れっとう)から与那国島(よなぐにじま)までの、エメラルド色の亜熱 帯(あねったい)の海にうかぶ島々を琉球列島(りゅうきゅうれっとう)とよんでいます。この中の大きな島には、モリバッタが生息 (せいそく)しています。体長(たいちょう)は雄(おす)で30mm前後(ぜんご)、雌(めす)で45mm前後の中くらいのサイズです。ふしぎなことに、このモリバッタは同じ種類(しゅるい)なのに、生息 している島によって体の色が違(ちが)うのです。では、それぞれの島にすむモリバッタたちを見てみましょう。(写真1)


写真2 *クリックすると大きくなります。

まず、いちばん北の奄美大島のモリバッタ。他(ほか)の島のモリバッタと区別(くべつ)するために、アマミモリバッタとよばれています。全体(ぜんたい)に黒い部分(ぶぶん)が多く、黒っぽいバッタに見えますね。残念(ざんねん)ながら、この写真(しゃしん)はまだ幼虫 (ようちゅう)ですが、もう一回脱皮 (だっぴ)をすると成虫 (せいちゅう)になる状態(じょうたい)なので、ほとんど成虫 に近い色をしています。(写真2)


写真3 *クリックすると大きくなります。

つぎに、沖縄本島と近くの久米島(くめじま)に生息 するオキナワモリバッタ。体の色は、アマミモリバッタに比べると、少しだけうすく、こげ茶色(ちゃいろ)に見えますね。モリバッタは、クワズイモやゲットウなどのちょっとにおいの強い植物(しょくぶつ)の (は)を好(この)んで食べますが、このようにノボタンの花を食べるすがたを見ることもあります。(写真3)


写真4 *クリックすると大きくなります。

すむ島によって体の色の異(こと)なるモリバッタですが、沖縄本島と久米島に生息 するオキナワモリバッタには、それ以外の特徴(とくちょう)もあります。他の島のモリバッタは、成虫 になると長いはねをもつようになりますが、オキナワモリバッタだけは、成虫 になっても短(みじか)いはねのままなのです。その理由(りゆう)はわかりませんけど、これもふしぎなことですね。(写真4)


写真5 *クリックすると大きくなります。

つぎは、ちょっと南にある石垣島(いしがきじま)のイシガキモリバッタ。これまでにくらべると、ずいぶん白い部分がめだちますね。黒と白が半分(はんぶん)ずつまざったバッタに見えます。このときは、クワズイモの葉 を食べているところを見つけました。(写真5)


写真6 *クリックすると大きくなります。

これは、石垣島のすぐとなりの西表島(いりおもてじま)に生息 するイリオモテモリバッタです。モリバッタのなかでは、いちばんあざやかな体の色をしています。とくに、黄色(きいろ)がめだちますね。石垣島と西表島は近(ちか)く、ふたつの島には共通(きょうつう)の種類の生きものもたくさん生息 しているのですが、モリバッタの体の色がこれだけ、異なるのはちょっと意外(いがい)なことです。(写真6)


写真7 *クリックすると大きくなります。

体ぜんたいがあざやかなイリオモテモリバッタですが、うしろ脚(あし)には、もっとあざやかな部分もあります。この部分は、じっとしているときはかくれていて、脚をのばしたときだけ見えるんです。このうしろ脚の赤い部分は、よく観察するとイリオモテモリバッタだけではなく、他のモリバッタにもあります。どのような意味(いみ)があるのでしょうね ?(写真7)


写真8 *クリックすると大きくなります。

最後(さいご)に、日本でいちばん西の端(はし)にある与那国島(よなぐにじま)のヨナグニモリバッタ。他のモリバッタにくらべると、かなり体の色がうすく感(かん)じられます。このときも、やはりクワズイモの を食べていました。人間(にんげん)には食べられないので「クワズイモ」とよばれていますが、モリバッタにはごちそうのようですね。(写真8)


写真9 *クリックすると大きくなります。

こうして、北から南、あるいは西に向かって、順(じゅん)にモリバッタたちを観察してみると、ある傾向(けいこう)が見られます。それは、北のモリバッタほど、体の色が濃く、南あるいは西にいくほど、体の色がうすいことです。はっきりした理由はわかりませんが、南にいくにつれて強(つよ)くなる太陽 光線(たいようこうせん)に対(たい)して適応(てきおう)したためかもしれません。


写真10 *クリックすると大きくなります。

このような例(れい)は、他の昆虫(こんちゅう)でも知られています。日本でいちばん大きなチョウのオオゴマダラは、生息 する島によって、白い部分と黒い部分の広さが違います。沖縄諸島(しょとう)に生息 するオオゴマダラ(写真9)にくらべて、より南の宮古(みやこ)諸島や八重山(やえやま)諸島に生息 するオオゴマダラ(写真10)は、黒い部分がせまく、白い部分が広いのです。

モリバッタのなかまは、琉球列島だけではなく台湾(たいわん)など海外(かいがい)にも生息 しています。いつか、日本以外のモリバッタも観察してみたいと思っています。どのような色やすがたをしているのでしょうね ?

湊和雄(みなと かずお)
動物写真家
東京生まれ。大学で昆虫を学ぶために沖縄に渡る。琉球列島をフィールドに、写真とビデオで亜熱 帯の生き物たちを撮影する毎日。南島漂流記のサイトhttp://3710km.com/dairy.html