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日本の小学生は理科大好き!
2009年12月16日 土佐幸子(ライト州立大学助教授)
![]() 実験後、みんなでデータを発表しあう(東京都の小学校で) |
米国オハイオ州で物理教育の仕事
に携わる土佐幸子さんに、米国の科学事情や、子どもたちと科学教育をめぐる楽しいお話をつづっていただきます。
大学の学期間の休みを利用して、日本に行ってきました。今回の目
的は、小学校の理科授業を参観し、また、先生方のお話をうかがうことによって、日本の先生は理科を教えるにあたってどのような考えをお持ちかを調べることでした。福井県と東京近郊の小学校10校を訪問し、いろいろな授業風景に出会いました。研究目
的とは別に、どこの学校でも子どもたちが積極的に学習に取り組んでいる姿が印象的でした。
「細い鉄 心のほうが大きい力 で引っ張ったよ」「細いほうが強いはありえない!」「もう一度やってみよう」。ある小学校5年生の授業では、電磁石 を強くするにはどうしたらよいかをグループで話し合い、やりたいことを実験してデータを集めていました(写真2)。別の小学校では、巻き数を増やすと電磁石 は強くなるかという問題で、グループでやった実験結果にばらつきが出たので、どうやってまとめたらよいかを話し合っていました(写真3)。自分たちから積極的に取り組むことで、やっていることがますますおもしろくなっている様子です。
子どもたちの活発に活動する姿を見ながら、こんなに素敵な時間が学校生活の中で流れていることを私はとてもうれしく思いました。「理科離れ」が言われ始めて久しくなりますが、理科の勉強は楽しいと強く思う中学2年生の割合はいまだに国際平均を下回り(2007年国際数学・理科教育動向調査)、問題だとされています。それにはいろいろな要因があるでしょうが、少なくとも、日本の社会において、科学教育に対する意識が薄いからではないように思います。小学校から大学まで、先生方の研究会や課外の活動が頻繁に催され、町でも科学に関するさまざまなイベントが繰り広げられている国は他に例を見ないのではないでしょうか。
東京で「宙博(そらはく)2009」という世界天文年を記念するイベントが開かれていました。日曜日の午前11時、最終日ということもあって、会場入り口は長蛇の列でした。2時間待ちとのこと。親子連れもたくさんいます。この人たちは、何を求めてこ こへ足を運んだのでしょう。10倍を繰り返して、身近な大きさと宇宙 の大きさを比較する展示のコーナーでは、子どもがお父さんと一番近い恒星 までの距離の読み方を話していました。「こんなにたくさんゼロがついたんじゃ、お父さんだってわからないよ。一緒に数えてみようか。地球が1万kmだろ。」「10万、100万、・・・、1京、10京、100京か!」。月 ・惑星 探査 のロボット を展示するコーナーでは、縮んだり伸びたりして前進するミミズ型装置の模型を手に乗せてもらった子どもが、「進む!」と目 を輝かせています。専門家による講演の最後には、「どうして探査 機との通信は切れやすいのですか?」という質問が子どもからあがっています。地球が自転 するので、最大でも6時間程度しか地球の1箇所で交信できないこと、温度によって電波 が影響を受けること、アンテナの向きによることなど、私もなるほどと思いました。
会場でお話したロボット 開発に取り組む大学の先生は、「アポロ11号の月 面着陸を衛星 放送で見たんですよ。今考えれば、あれが自分の進路を決めたなって思います。決して、ずっとロボット を作りたいと思っていたわけではありませんが。」とおっしゃっていました。その先生は今、小中学校で子どもたちに月 ・惑星 探査 のロボット を見せ、自分はロボット 作りを仕事 としている人間であることを伝えているとのことでした。
イベントにやってきたのは、宇宙 や科学のことが好きな大人に連れられた宇宙 好きの子どもたちだったのかもしれません。その大人たちは、中学時代に「理科を楽しいと強く思う」とは答えなかったかもしれません。会場は単なるお楽しみの場ではなく、新しいものに挑んでみようという空気 で満ちていました。宇宙 や科学に興味を持つ人が増えれば増えるほど、その中から宇宙 や科学の職業につく人も多く出てくることでしょう。今回の日本滞在は、私にそんな明るい未来を予測させてくれました。
土佐 幸子(とさ・さちこ)
米国ロチェスター大学大学院修了、物理学博士。マサチューセッツ州立大学ローエル校教育学大学院修了、教育学博士。科学を通して「考える喜び」を伝えようと、1995年より米国ボストン科学博物館で子どものための科学教室を教える。日本の科学館、教育機関が実施するワークショップでも講師として活躍。現在、ライト州立大学助教授。理学部物理学科と教育学部教員養成科の兼任で、理科教育の日米比較研究に取り組んでいる。著書に『ライト兄弟はなぜ飛べたのか』(さ・え・ら書房)、訳書に『クォーク
の魔法使い』(ロバート・ギルモア著、培風館)などがある。


