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ナビコラム

アメリカの小学生も理科大好き!

2010年01月20日    土佐幸子(ライト州立大学助教授)


ティッシュペーパーをかぶせた山に雨を降らせると?(オハイオ州の小学校で)

米国オハイオ州で物理教育の仕事 に携わる土佐幸子さんに、米国の科学事情や、子どもたちと科学教育をめぐる楽しいお話をつづっていただきます。

前回は、日本とアメリカの理科教育の比較研究のために、日本の小学校を訪問したお話をしました。今月 はアメリカの小学校を訪問しています。北から下りてきた記録的な寒波 で、オハイオ州は寒さと に見舞われ、休校になることもありましたが、訪れたどこの小学校も、一歩建物に入ると建物全体が子どもたちの熱 気でむせ返るようでした。


写真2:先生や友達と結果を話し合う *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

ある小学校4年生のクラスでは、 がどのように地形を変えるかを調べていました。「底に穴を開けたコップに を入れて雨 を降らせます」と先生が説明すると、「クール!(いいね!)」と子どもたちから声が上がります。植物に見立てたティッシュペーパーをかぶせた山に雨 を降らせると、不思議と山は崩れません(写真トップ)。土を固めただけの山は、表面の土が流れたり、大きく割れてしまったりしています。平らに固めた土では、降らせた雨 が池を作っているグループもありました。山の高さを測ったり、友達や先生と話し合いながら、この実験から何がわかったかをワークシートに書き込んでいきます(写真2)。


写真3:マシュマロをつぶしてつなげると、じょうぶな構造になるかも? *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

別の小学校の5年生の教室では、マシュマロとつまようじを使って、25cm以上のじょうぶなタワーを作る課題に挑戦していました。マシュマロにようじを刺して四角形を作っただけでは、ぐらぐらして高いタワーはできません。あるグループは、マシュマロを押しつぶしてようじをつなげると、じょうぶな構造ができるかもしれないと考えました(写真3)。グループ全員でマシュマロを押しつぶし、タワーを作ります。だんだん手がネチャネチャになっていきますが、タワーはなかなか高くなってくれません(写真4)。それでも、土台がじょうぶになったのは確かです。


写真4:マシュマロをつぶしてつなげたタワーの高さは? *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

きっとみなさんの一番知りたいことは、アメリカの小学生と日本の小学生はどう違うかということでしょう。私の見たところ、基本的に違いはないようです。アメリカの小学生も日本の小学生と同じようにおもしろい実験が大好きです。実験をしていく中で、何かもっとおもしろいことはないかな、と「遊び」を探している子どもがたくさんいるところも変わりありません。アメリカの学校のほうが自由なのではないかと思っている人が日本には多いかもしれませんが、学校にいろいろな規則があって、それを守ることが強調されているところも、日本とアメリカで変わりないのです。


写真5:話し合いながら課題に取り組むアメリカの小学生 *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

しいて違いを挙げるなら、アメリカの小学生のほうが自然体かもしれません。以前、アメリカの中学生について書いたとき、社会の厳しい現実に対応して、生徒が自分の学びを築こうとしているところに日米の違いがあるかもしれないとお話しました。今回、小学生を見てわかったことは、現実の厳しさの認識は中学生ぐらいから始まるらしいということでした。アメリカ社会の中に基本的に流れる明るさが、小学生の毎日を照らしているような印象を受けました。「僕、理科がとっても好きなんだ」と話しかけてくる子どもや、「僕が戻しましょう」と私が借りた教科書を進んで受け取ってくれる児童に、彼らの心の余裕を見たように思いました。

アメリカの先生たちは口をそろえて「日本の理科教育はもっと進んでいるのでしょう?」と問いかけてきます。私はそうきかれるたびに「日本の先生たちはまったく逆のことを口にしますよ」と答えます。実に、双方で学び合えることがたくさんあると私は思っています。でも、その前に大事なことは、先生も子どもも親も、自分たちのやっていることに自信を持つことではないかと思います。それぞれの社会の違いを反映して、子どもたちの現実に対する認識や姿勢に違いがあるのは当然でしょう。日本の理科教育もアメリカの理科教育も、それぞれによいところがたくさんあります。よいところを前向きに進めていくのが、何より効果的でしょう。日本でもアメリカでも、子どもたちが学びの中で見せた笑顔は、人種や国や言葉 を乗り越えて無条件に素敵でした。

土佐 幸子(とさ・さちこ)
米国ロチェスター大学大学院修了、物理学博士。マサチューセッツ州立大学ローエル校教育学大学院修了、教育学博士。科学を通して「考える喜び」を伝えようと、1995年より米国ボストン科学博物館で子どものための科学教室を教える。日本の科学館、教育機関が実施するワークショップでも講師として活躍。現在、ライト州立大学助教授。理学部物理学科と教育学部教員養成科の兼任で、理科教育の日米比較研究に取り組んでいる。著書に『ライト兄弟はなぜ飛べたのか』(さ・え・ら書房)、訳書に『クォーク の魔法使い』(ロバート・ギルモア著、培風館)などがある。