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エクスプロラトリアム(the Exploratorium) ~自分で発見する科学館~
2010年05月14日 中牟田宴子
![]() エクスプロラトリアム館内の様子 |
2010年4月
に、新中学1年生と新小学5年生の息子たちを連れてサンフランシスコでホームステイをして来ました。今回で二度目
となったサンフランシスコでのホームステイの中で、私たちが今年も訪れたのは、エクスプロラトリアム (the Exploratorium)という体験型の科学館でした。エクスプロラトリアムは、物理学者(ぶつりがく
しゃ)であり教育者でもあったフランク・オッペンハイマー氏のアイデアで作られた科学館です。体験型の展示は650個ほどもあり、年間の来場者数は約57万5千人にものぼる、アメリカでも最も人気のある科学館の一つです。
おそらく多くの皆(みな)さんは、家族で外国へ旅行をする機会があっても旅行中に科学館へ出かけることは少ないのではないでしょうか。外国の町でも科学館に出かけて、何が日本の科学館と同じなのか、違(ちが)うのか、親子でそんなことを比べてみるのも楽しそうです。
親子で夢中になれる展示
エクスプロラトリアムを初めて訪れた時に驚(おどろ)いたのは、子どもの付き添(そ)いで来たはずの大人たちが、子どもと一緒(いっしょ)になり、心から展示を楽しんでいるように見えることでした。展示は全てが体験型になっています。これらの展示は、ただ触(さわ)って終わるのではなく「どうしてそうなるの?」ということを、自分たちの身近で起こることと比べながら考えられるように導(みちび)いてくれます。大人も子どもも夢中にさせる展示の秘密(ひみつ)は、触(さわ)って楽しめることと、触って感じたことを身近な現象(げんしょう)に結びつけて科学的に考えられること、そしてさらに考えたことについて、その知識が役に立つと実感できることなのではないかと思いました。
科学ってこんなに身近!
エクスプロラトリアムの建物は倉庫を改造して作らたそうで、天井(てんじょう)が高くて解放感があり、そこにいるだけでもわくわくします。1階と2階に配置されたたくさんの展示で遊んでいると、あっという間に閉館時間になってしまいそうです。展示はどれも身近なものへとつながっているので、子どもたちは「自分たちの周りにはこんなに科学があるんだ!」と発見し驚(おどろ)くことでしょう。
今回は、展示の中から私が特徴的(とくちょうてき)に感じた3つの展示をご紹介します。
鍋(なべ)で水を温めたら・・・
展示はどれも身近なものがテーマです。右の写真は「鍋に水
を入れてコンロに火をつけたら何が起こるの?」ということについて、水
の分子
モデルを見ながら体感することができるものです。
まず、子どもたちは鍋(なべ)に火をつけます。とは言っても本物の火をつけるわけではなく展示モデルのノブを回すだけです。鍋に入っている水
の分子
に見立てられた白いボールは、エネルギー
をもらってだんだんと激(はげ)しく動くようになります。子どもたちは白いボールが動き回る様子に釘(くぎ)づけです。さらに激(はげ)しくボールが動き回ると、鍋(なべ)の温度は上がり、ふたが持ち上がります。
皆さんお気づきでしょうか? ここでは例えば「スパゲッティをゆでるときに鍋(なべ)のふたがカタカタと持ちあがるのはどうしてなの?」ということを、自分たちで考えることができるよう導(みちび)いてくれているのです。
沈まないシャボン玉
エクスプロラトリアムの展示では見えないはずのものを見ることができます。地球温暖化
(ちきゅうおんだんか)の話によく登場する二酸化炭素
(にさんかたんそ)を見ようとしたら、どんな方法があると思いますか?
館内には、大きい透明(とうめい)の筒(つつ)が置いてあって、その底にはドライアイス
がありました。ドライアイス
は二酸化炭素
の固体
(こたい)ですが、見ている間にもどんどん気体
(きたい)になっていきます。気体
になってしまった二酸化炭素
は空気
よりも重いので底にたまっているはずですよね。でも私たちには見ることができません。
あきら(次男)は筒(つつ)の上にセットされた丸い枠(わく)をふうっとふいて、シャボン玉をふき入れました。すると、どうでしょう! 底にたまった二酸化炭素
の層(そう)のてっぺんで、シャボン玉たちは行儀(ぎょうぎ)よく並(なら)んでじっとしています。まるで透明(とうめい)のクッションの上に並べられたように。私たちは見えない二酸化炭素
を見ることができたのです。しばらくすると、シャボン玉は少しだけふくらみながら底へ沈(しず)んでいきます。それはシャボン玉の中に二酸化炭素
が入ってしまったからだということは、そばのパネルによる解説で知ることができました。
冷凍庫(れいとうこ)に入れなくても凍(こお)る水
水
はとても身近なもので、私たちは水
についてなんでも知っているような気がします。本当にそうでしょうか? 「水
を凍(こお)らせるにはどうしたらいいでしょう?」と聞かれたら、多くの子どもも大人も「冷凍庫(れいとうこ)に入れる!」と答えることでしょう。でも、もし凍(こお)るということが、分子
のエネルギー
が奪われて動かない状態(じょうたい)になることだと知っていれば、違(ちが)った答えも思いつくのかもしれません。そしてエクスプロラトリアムには、その違(ちが)う答えにもたどりつけるような、ヒントになる展示も多いのです。
写真は、水
を凍(こお)らせる実験装置(じっけん
そうち)です。もちろん冷凍庫(れいとうこ)ではありません。子どもたちはこの装置(そうち)を自分自身で操作(そうさ)することができます。水
滴(すいてき)がたまった透明(とうめい)の入れ物の空気
を抜(ぬ)いていきます。空気
がどんどん抜けていくにつれて水
が凍り始めました。実験が終わると、できた氷
は取り出すことができます。これには展示で遊ぶ子どもたちも大喜びです。冷凍庫に入れなくても氷
ができることに、子どもたちは不思議(ふしぎ)を感じることでしょう。そして、なぜ凍ったのかを知りたい子どもたちは、分子
とエネルギー
について学ぶことでしょう。
カラフルな科学の本
エクスプロラトリアムには展示以外にも魅力 的(みりょくてき)なものがあります。それはギフトショップです。日本でも見られるような科学館グッズや実験キットなどもありますが、売り場の中でもひときわ目 を引くのがカラフルな科学の本たちでした。中を開いてみると、小さい子どもでも楽しめそうな仕掛(しか)け絵本もたくさんあります。その形は仕掛(しか)け絵本ですが、中身は本格的(ほんかくてき)な科学の本です。展示で見た分子 の話までもが仕掛け絵本の中に散りばめられています。
触って感じて自分で学ぶ
私がこれまでに息子たちと訪ねた日本の科学館では、親がそばについて説明を読んであげなくては楽しめないものが多いように感じていました。一方、エクスプロラトリアムの展示はまるで遊園地のようで、子どもたちは思い思いに楽しんでいます。もちろん、子どもだけでなくそばにいる大人も夢中です。触って感じて、その奥にある科学の本質を自分で学びとってもらうというのが、エクスプロラトリアムの展示の中で一貫(いっかん)していることのようでした。楽しんで帰るだけでも十分ですし、もう少し知りたい人はそばに置いてあるパネルで解説を読むこともできます。
そして私が何よりも「すごい!」と感じたのは、展示の一つ一つから企画する人たちの本気さが伝わってくるところです。科学の本質について、ごまかさずにきちんと伝えようとする姿勢(しせい)が、子どもたちの科学的な考え方の土台を育んでいるようでした。
世界からも注目
されるエクスプロラトリアムの魅力
(みりょく)はきっとここにあるのでしょう。
手軽にエクスプロラトリアムを楽しもう!
最後にエクスプロラトリアムのWEBサイトをご紹介します。エクスプロラトリアムはそのWEBサイトも大変評価が高い科学館で、その中では科学工作『After School Activities』などが紹介されています。簡単に楽しめて、エクスプロラトリアムの精神が感じられ、子どもの「Why?(なぜ)」を研究へと発展させる方法を知ることができる『After School Activities』の紹介も是非ご覧ください。
『子ども「なぜ?」を研究に変える方法 ~エクスプロラトリアムAfter School Activities ~』
http://www.kagakunavi.jp/column/show/3491
文 中牟田宴子
九州大学文学部心理学専攻卒業。大学では認知心理学を学ぶ。中1と小5の男の子の母。数学と科学を組み合わせた学習教室を企画・運営しながら、NPO法人センス・オブ・ワンダー代表理事として、日本では珍しいジュニアサイエンスカフェの継続的な開催や、小学生の親子向け科学のイベントの企画なども行う。
『かがく
ナビ』では、子どもたちと日常の中で発見した科学をつづるブログ『家庭で育てる科学の芽』を執筆。


