HOME > ナビコラム
第3回 日本の科学者インタビュー
2010年07月31日 中牟田宴子
![]() |
第3回科学者インタビューは『かがく ナビ』でもアメリカの科学教育などについて紹介して下さっている土佐幸子さんにお話を伺いました。土佐さんは現在、ライト州立大学の助教授として理学部物理学科と教育学部教員養成科を兼任されており、理科教育の日米比較研究にも取り組んでいらっしゃいます。お二人のお子様のお母様であり、ご自身が「人生の充電期間」と呼ぶ子育て期間の中で「子どもの理解」について多くの発見をしたそうです。今回はそんな土佐さんに、家庭の中で子どもたちの科学的探究心を伸ばしていく方法をおうかがいしてみました。
子どもたちにとって大切なこと
土佐さんは物理学博士であり教育学博士でもあります。そんな背景をお持ちの土佐さんは、子どもたちにとって大切なことは情報をつめこむことではなく、考え方を学ぶことだとおっしゃいます。そして、考え方というのは科学の探究の方法そのものなのだと。土佐さんの目 には科学と教育に共通する大切なものが映っているのでしょう。
科学者が作る科学教室
土佐さんは、ライト州立大学で仕事
をされる前は、ボストン科学博物館で科学教室の講師をしていらっしゃいました。科学者である土佐さんは、ここでたくさんの科学教室のコンテンツを作り、講師として科学を伝えていました。土佐さんの「どれだけ深く理解してるかで、どれだけ子どもたちに教えられるかが決まります」という言葉
を聞いて、土佐さんの教室にいつも深い感動がある理由が分かりました。
昨年、土佐さんがアクトン市にあるディスカバリー・ミュージアムで「密度
なんてへっちゃらさ」というトークショーをされたということを『ナビコラム』で知りました。「こんなに美しい実験はやってみなくちゃ!」と思い立ち、私も息子とその友だちも一緒に実験をしてみることにしました。オリーブオイルの上にぽとりと水
を落とすと、オリーブオイルの中をゆっくりとまん丸の水
が下りていきます。その形は整然と美しく、ゆっくりと自分のいるべき場所までたどりつくと、少しつぶれてじっととどまります。子どもたちからも歓声があがりました。子どもたちは感動と共に「密度
」につながる何かを感じ取ってくれたようでした。
家庭でできることは何でしょう?
科学教室のコンテンツをたくさん作ってこ られた土佐さんに是非「子どもたちの科学的探究心を伸ばすために家庭でできることは何か」ということを聞いてみたいと思いました。ところが聞いてみると返ってきた答えはとてもシンプルなものでした。一緒に子どもと寄りそうこと。子どもの「なぜ?」を親子で一緒に考える時間が子どもたちにとってかけがえのない安心感につながると土佐さんはおっしゃいます。科学に限らず何かを探求していこう、考えていこうと思えるのは、家庭での安心感があってこ そなのでしょう。土佐さんご自身の子ども時代の話をうかがってみると「疑問に思ったことは口に出して、友達と一緒に確かめていました」ということでした。家庭での安心感と「なぜ?」という疑問を口に出せる環境があるということは、子どもたちの探究心をはぐくむ上で大切なことなのだと感じました。
あきらめずに夢に向かうこと
現在の土佐さんはライト州立大学の助教授です。それだけを聞くと、アメリカに渡って順調に経験を積み今のポジションにいらっしゃるのだと想像
してしまいます。ところが、土佐さんは物理学の道へ進みたくても、家庭の事情と、子どもさんが小さかったということで、長い間自分の夢へは向かうことができなかったのだと話して下さいました。それでも子育て期間中にできることをコツコツと積み重ね、結果的には二つの博士号を持つことになりました。そして今の助教授というポジションは、この二つの博士号があってこ
そなのだと言います。夢をあきらめないで前へ進むこと。同じ女性として背筋がピンとなると同時にとても励(はげ)みとなる言葉
でした。
穏(おだ)やかな笑顔の裏には、何事にも真剣に取り組む人しか持てない緊張感が感じられました。素敵な女性でお母様でもいらっしゃる土佐さんに、これからも『かがく
ナビ』の記事の中でお会いできることをとても楽しみにしています。
文 中牟田宴子
九州大学文学部心理学専攻卒業。大学では認知心理学を学ぶ。中1と小5の男の子の母。数学と科学を組み合わせた学習教室を企画・運営しながら、NPO法人センス・オブ・ワンダー代表理事として、日本では珍しいジュニアサイエンスカフェの継続的な開催や、小学生の親子向け科学のイベントの企画なども行う。
『かがく
ナビ』では、子どもたちと日常の中で発見した科学をつづるブログ『家庭で育てる科学の芽』を執筆。


