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コラム

東京スカイツリーのような高い塔を作ろう

2010年08月18日    土佐幸子(ライト州立大学助教授)


紙コップ25個をなるべく高く積むには?(北陸電力エネルギー科学館で)

米国オハイオ州で物理教育の仕事 に携わる土佐幸子さんに、米国の科学事情や、子どもたちと科学教育をめぐる楽しいお話をつづっていただきます。


東京スカイツリーの建設現場近くで*クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

東京に新しい名所ができつつあります。「東京スカイツリー」です。高さ634mの世界一高い塔が、2012年春にオープンする予定で、現在、着々と建設が進んでいます。東京都墨田区にあるこの塔は、私の実家からよく見える距離にあります。2週間半の滞在中、毎日わくわくしながらクレーンの乗ったタワーを眺めました。今回、日本の数箇所で教えた科学教室でも「高い塔を作ろう」がテーマです。


新聞紙1枚をなるべく高くなるように立てるには?(北陸電力エネルギー科学館で)*クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

高いものなんて、小さいときに、積み木やブロックを積んで遊んで以来、作ろうと は思わなかったかもしれません。しかし、いざ作ろうと したら、どんなことを考えて作ると、じょうぶで高い塔を建てることができるでしょう。科学教室では身近な材料を使って、参加者の皆さんに自分のアイデアを試してもらいました。まず、コピー用紙を立てることから始めます。平らな紙だったら立たないのに、ちょっと折り目 を入れただけで立つようになります。なぜ?「そう、折り目 を入れると、1本線の支えが2本になったよね。」次に、新聞紙1枚をなるべく高くなるように立てます。使えるのはセロファンテープ2cmだけです。下の部分を大きく、重くするなどの工夫が出てきます。さらに、紙コップ25個を積んでタワーにすることや、ゆでていないスパゲティ20本とセロファンテープで作った塔の頂点に大きなマシュマロ1個を乗せることなど、いろいろな材料を限られた数だけ使って、なるべく高い塔を作ることに挑戦してもらいました。


スパゲティ20本とセロファンテープで塔を作る(北陸電力エネルギー科学館で)*クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

参加者の皆さんが熱 心に取り組んだ様子を、写真から感じていただけるでしょうか。子どもと大人が一緒になって課題に取り組みました。うまくいかなければ、やり直せばいいのです。なぜ倒れてしまったのでしょう?「バランスが悪かったんだ」「そう、横からも見てみてね。」今度はどんな工夫をしたのでしょう?「コップを重ねた」「なぜ?」「重くしたかったから」「下を重くして、重心の位置を低くしたんだね。コップひとつに比べてどう違う?」「倒れにくくなった。」何となくやったことも、成功してみればその理由がわかってきます。


親子が充実した時間を持つ機会になったか(東京都台東区立生涯学習センターで)*クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

どの教室でも、子どもと大人がアイデアを出し合って、共同作業で問題を解決しようとしていました。「大人も正解がわからないから、子どもと同じ視点で問題に取り組めたのよ」とある指導者の先生がおっしゃっていました。そうかもしれません。そのおかげで、親子で互いに相手を尊重する充実した時間を過ごしてくれたように思います。子どもの考えを尊重するということは、特に大人の側に新鮮だったのかもしれません。保護者がたくさん感想を書いてくれていました。

もしかしたら学校になじめていないのもしれない、と思われるお子さんが何人もいました。この教室では、自分の考えを何度でも試してよいのです。「自分の思うようにやってごらん」「いいね、いいね、次はどうする?」ちょっとした言葉 がけが助けになればと思いながら、私は子どもたちと接していきました。

今年の日本では、今までに感じたことがないほど、深刻な不況にあるという印象を抱きました。社会が厳しい状況にあると、無言のうちに子どもたちにしわ寄せが行くように思います。厳しい状況にあるときこそ、紙コップを積むときに発揮したように、子どもと大人が計画性と集中力 を出し合って、自分たちの目 標に向かって基礎を積んでいくことが大事になるでしょう。世界一の塔が東京にできるというのは大きな励みです。こんな技術を持った私たちの国を誇りに思いながら、自分の礎を一つ一つ積んでいきたいものだと思います。

東京スカイツリー公式ホームページ:http://www.tokyo-skytree.jp/
東京スカイツリー大林組ホームページ:http://www.skytree-obayashi.com/
日建設計東京スカイツリーサイト:http://www.nikken.co.jp/ja/skytree/

(プロフィール)
土佐 幸子(とさ・さちこ)
米国ロチェスター大学大学院修了、物理学博士。マサチューセッツ州立大学ローエル校教育学大学院修了、教育学博士。科学を通して「考える喜び」を伝えようと、1995年より米国ボストン科学博物館で子どものための科学教室を教える。日本の科学館、教育機関が実施するワークショップでも講師として活躍。現在、ライト州立大学助教授。理学部物理学科と教育学部教員養成科の兼任で、理科教育の日米比較研究に取り組んでいる。著書に『ライト兄弟はなぜ飛べたのか』(さ・え・ら書房)、訳書に『クォーク の魔法使い』(ロバート・ギルモア著、培風館)などがある。