科学ドキュメント

水を求めて火星を走り続ける双子の探査車

2004年02月01日    吉戸智明


2004年1月 に火星 に着陸した無人探査 車、スピリットとオポチュニティは、かつて火星 に液体 が存在していた証拠を発見しました。この双子の探査 車は、着陸から1年以上経った今でも火星 の大地を走り回り、さらにたくさんの情報を集めています。

火星に水はあるのか?

火星 が存在するということは、私たち人類にとって非常に重要な意味を持ちます。それこそが、火星 に生命が存在できることの証拠となるからです。地球外生命を見つけることは、古くから私たち人類の夢であり、現在、日本をはじめ、米国、ヨーロッパ各国が地球外生命探査 に乗り出しています。

地球以外の惑星 に生命が存在するためには、最低条件があると科学者たちは考えます。固い大地があること、生命の源となる有機物 があること、そして、何より大切なのが、「液体 」が存在することです。

つまり、水 を見つけることこそ、地球外生命探査 の第一歩なのです。それには火星 は好条件です。じつは火星 の地下に大量の があることが、2002年から2003年の調査ですでに確認されています。果たしてNASA(米航空宇宙 局)が火星 に送り込んだ双子の探査 車は、水 を見つけることができたでしょうか。


マーズ・ローバー・ミッション

2003年夏、NASAは、液体 の存在と生命体の活動痕跡を探査 するために、かつて水 が存在したと考えられている2つの場所へ、相次いで火星探査 機を打ち上げました。このミッションを「マーズ・ローバー・ミッション」と呼びます。

打ち上げから約半年後、探査 機は火星 の上空を周る軌道に入り、それぞれ探査 車(ローバー)を火星 の大地に向かって投入しました。日本時間で2004年1月 4日、まず、無人探査 車1号機である「スピリット」が、南半球の赤道に近いグセフ・クレーター に着陸しました。グセフ・クレーター は直径160kmの巨大な衝突クレーター で、過去に水 が流れ込んだような跡があります。

続いて1月 25日に、同じ南半球の赤道直下に広がるメリディアニ平原に、2号機の「オポチュニティ」が着陸しました。メリディアニ平原には、かつて水 が存在したことを示唆する赤鉄鉱 が分布し、さらには湖の底を思わせるような堆積 層があります。双子の探査 機は、水 が存在した証拠を追求すべく、それぞれ調査を開始しました。

過去に水が存在した証拠を発見!

これらの調査から判明したのは、残念ながら、現在の火星 表面に はないということです。しかし双子の探査 車は、過去のある時期に が存在した証拠を見つけました。これは、画期的な発見と言えます。大昔とはいえ、水 が存在したということは、地球外生命も存在した可能性が出てくるからです。証拠は、次のようなものがあげられます。

1.岩石の表面に硫酸 塩 鉱物 が豊富に存在する。
2.岩石に長さ1cmほどの細長い空洞が無数にある。
3.岩石内に直径数ミリの無機物 の球体がみられる。

1.は、地球上では海水 や温泉水 が蒸発 してできる鉱物 で、岩石が水 の中で形成されたか、形成後長く水 に浸かっていたことを示します。2.の空洞は、水 に溶けていた無機塩 類が岩に染み込み、そこで結晶 になったあと、侵食 されたり、とけたなどの理由でなくなり、できたと考えられます。3.は、2.の空洞に再び塩 類や鉱物 を含む水 が入り、無機物 が雪 だるま式に固まってできたものと思われます。この球体をNASA内部ではブルーベリーという愛称で呼んでいます。

そしてさらに、ある岩石から、かつて地表に水 が存在したかもしれない証拠が出ました。地球上で見られる、海底などの砂地に、水 の流れによって描かれるしま模様(リップル)と同じものが発見され、この岩石は水 中で砂が固まってできた砂岩 であることがわかりました。その調査地点では少なくとも水 深が5センチあり、毎秒10~5センチの水 流があったのではないかと推定されます。


双子の探査車はいつまで走り続けるのか?

こうした成果から、当初3カ月 とされた探査 期間はできる限り延長することが決定されました。搭載された太陽電池 や分析装置、通信機器 の調子も良く、現在も火星 の大地を走り回り、貴重なデータを収集しています。火星 に探査 機を送り込むこと自体、大変難しいことです。その限界が来るまで、この双子は走り続けることになるでしょう。

今回の探査 では、過去に があったことは確認できましたが、生命体の存在については、未だ何も手がかりがつかめていない状態です。今後NASAは、火星 の砂や岩を地球に持ち帰るサンプルリターン、そして人間を直接火星 に送り込むことなども計画しています。