科学ドキュメント

ぐるぐる回る地球に働く「コリオリの力」とは?

2003年10月01日    松橋佳衣


台風 の渦の向きや高い所から吊るした振り子の回転の向きが北半球と南半球では違う、という話を聞いたことはありませんか? このような現象が起こるのは、その動きに「コリオリの力 」というものが働いているからなのです。その正体を探っていきましょう。

地球はメリーゴーラウンドのように回っている

地球をはじめとする惑星 は、あたかもメリーゴーラウンドのように自転 しています。自転 している星に住んでいると、特有な力 を受けます。それが「コリオリの力 」で、その力 を表しているのが「コリオリの法則」です。

たとえば、回転しているメリーゴーラウンドの床の上でまっすぐ歩く、ということを想 してみましょう。外からはまっすぐに歩いているように見えたとしても、実は回転円盤の上では、回転している方向に押されるような軌跡をたどります。このときに働いているのが、「コリオリの力 」です。

「力 」と言っても、これは「見かけの力 」というものです。たとえば電車の中でも、こういった「見かけの力 」を感じることがあります。電車に乗っていて急ブレーキをかけられると、前につんのめり、倒れてしまいそうになります。しかしべつに人に押されたわけでも、電車に押されたわけでもありません。このときは電車に乗っている人に、慣性 力 が働いているのです。この慣性 力 を「見かけの力 」と言います。このように、人やものが動きだしたり止まろうとするときには、その人やものに「力 が働いた」と言います。

コリオリの力を計算してみよう

コリオリの力 は、次の式で表されるような大きさと方向を持ちます。

 コリオリの力 =-2×重さ ×回転角速度×運動速度

ここでの重さ は、正確には質量 といいます。この式には、回転角速度と運動速度の掛け算が入っています。これは少しやっかいです。回転角速度、運動速度、そしてコリオリの力 も、大きさと方向を持つ「ベクトル 」という量だからです。

メリーゴーラウンドの上を歩く場合を考えてみましょう。回転角速度のベクトル は、回転する面に垂直な方向、回転の速さ に比例する大きさを持っています。歩く速度のベクトル は、回転する面に平行な方向を持ちます。そして、ベクトル の掛け算(外積)の値は、2つのベクトル が含まれる面に垂直な方向のベクトル になります。ですから、そのベクトル の掛け算をすると、メリーゴーラウンドの回転盤に平行な外向きの となるのです。前の式でわかるように、質量 が大きい場合や、速い速度で回転している場合は、コリオリの力 は大きくなります。

台風の渦の向きは、コリオリの力で決まる

台風 の渦の向きは、地球の自転 運動に影響されます。台風 は渦を巻いている空気 の塊といってもよいもので、その渦の流れは速く規模も大きいので、コリオリの力 が大きく働くのです。地球は東向きに回っていますから、北半球では台風 の中心に向かって空気 が北向きに流れ込み、その空気 の動きに東向きのコリオリの力 が働き、空気 は東向きに流されます。一方、台風 の中心に向かって南向きに流れる風は、反対に西向きに流されます。こうして台風 は北半球では時計方向に渦を巻くのです。

一方、南半球では、地球の回転の角速度が北半球と逆向きのベクトル となるので、コリオリの法則から、北半球とは反対方向のコリオリの力 が働き、時計と反対方向に渦を巻くのです。

有名なのはフーコーの振り子の実験です。ピサの斜塔につるした振り子はゆっくりと右に回りますが、シドニーのオペラハウスにつるした振り子はゆっくりと左に回転します。よく、お風呂の を抜いたときの渦が、コリオリの力 によって北半球と南半球では反対に回るという話がありますが、これは誤解です。このような場合にはコリオリの力 は大変弱いので、実際にはお風呂の栓のちょっとした形で回転方向が決まるのです。

<引用元>
『Science & Technology Journal』2003年10月 号52~53ページ
「忘れっぽい法則 コリオリの法則」

<原著者>
鳥海光弘・東京大学教授
『これ以上やさしく書けない科学の法則』PHP研究所