科学ドキュメント

土星探査機カッシーニ 周回軌道に入る

2004年07月01日    横山広美


土星 探査 衛星 カッシーニ は、2004年7月 1日深夜、土星 の周回軌道に入りました。打ち上げから7年の間、研究者たちが待ち続けたデータが今、次々と送られてきています。

土星探査機カッシーニとは

カッシーニ は、1997年10月 に米航空宇宙 局(NASA)と欧州宇宙 機関(ESA)が共同で打ち上げた土星 探査 衛星 です。土星 は地球と同じく太陽 を回る惑星 で、太陽 から6番目 に位置しています。打ち上げられたカッシーニ が土星 に到達するまで、7年の時がかかりました。カッシーニ は、パイオニア11号(1979)、ボイジャー1号(1980)、ボイジャー2号(1981)に続いて4機目 の土星 探査 機になります。これまでの探査 機は、土星 の近くを通過するだけでしたが、カッシーニ は2008年の夏までに土星 を76周し、土星 のリン グ、衛星 の環境、磁気圏などの探査 を行う予定です。


土星の象徴、リングはなくなるかもしれない?

土星 の特徴はその美しいリン グ(環)です。実はこのリン グは の固まりや岩でできています。複数の環が組み合わさって、内側からD環、C環、B環、A環、F環、G環、E環と呼ばれています。今回の探査 で、この美しい環が、やがてなくなるのかもしれないことが分かりました。

カッシーニ が周回軌道に入って間もない2004年7月 2日、一番外側のE環の一部で、大量の酸素 分子 が観測されました。通常よりも酸素 濃度 が35%高い状態が約1ヶ月 続き、その後はおさまりましたが、はっきりとした原因はわかっていません。おそらくE環に何かが衝突して氷 が砕け、土星 の磁気によって飛び回っているイオン がそれに衝突し、氷 の水 分子 が分解 して酸素 分子 ができたのではないかと考えられています。もしそうだとすると、環のもとになる氷 や岩は少しずつ欠けていき、1億年以内に外側の環は消えてなくなるかもしれません。


長くなった?土星の一日

このほかにも、予想外のことが次々と発見されています。周回軌道に入る直前の2004年6月 28日、NASAは過去1年にわたる観測の結果から、土星 の1日の長さが1980年代に「ボイジャー」が観測したより6分も長くなったと発表しました。土星 はガスでできている惑星 であり、地球のような固い地面がありません。そのため土星 の回転は直接測定することができず、回転にともなって放射される電波 によって測定が行われていました。なぜ電波 の周期が以前と変わったかについて、科学者は実際に土星 が以前よりもゆっくりと回転しているのではなく、何か他に原因があるのではないかと考えています。

衛星探査で謎の解明に挑戦

土星 、つまり衛星 は現在でも次々と発見されていて、2005年5月 現在で40個以上が確認されています。その中でも一番大きいのがタイタンです。タイタンには大気があり、その組成は太古の地球によく似ていると考えられています。今回のミッションで重要課題に位置づけられていたのが、このタイタンの調査です。カッシーニ から切り離された小型の探査 機ホイヘンスは、2005年1月 14日、タイタンへの着陸に成功しました。ホイヘンスが着陸時に集めた大気の状態や温度のデータや画像 などの映像 は、カッシーニ を中継して地球に送られました。

また2005年3月 には、さらにとても興味深い事実が発表されました。 の月 として知られる衛星 エンケラドスに、タイタンにつづき大気があることが発見されたのです。大気の存在は、土星 の磁場変化によって観測されました。カッシーニ は、2005年2月 17日と3月 9日に、エンケラドスの地表からそれぞれ1167kmと500kmまで接近しました。その際、土星 から伸びる磁場が、エンケラドスを避けるように曲がっていることがわかったのです。同時に、磁場の振動 も観測されました。これらのデータから、電荷を帯びた水蒸気 の大気がある可能性が強くなりました。エンケラドスは直径がわずか500kmと小さな星であり、大気を地表に引き止めるだけの重力 はありません。それにもかかわらず大気があるのは、常に大気を供給する火山 噴火などがあるためだと考えられています。もしそうであれば、木星 のイオと海王星 のトリトンに続いて、太陽系 で3番目 の“生きた衛星 ”ということになります。

このように、今この時も、カッシーニ からは次々とデータが送られ続けています。今後、これらのデータが解析され、私たちの太陽系 の成り立ちの謎にどこまで迫ることができるのか、期待が集まっています。