水星探査に挑む「メッセンジャー」、太陽系の起源を探る
2004年08月03日 斉藤浩司
太陽系 の惑星 のなかで、いちばん太陽 に近い軌道をまわっている水星 。NASAは8月 3日、30年ぶりに水星 探査 機「メッセンジャー」を打ち上げました。これまでの仮説が証明されることが期待されています。
謎の多い惑星水星
フロリダ州のケープカナベラル空軍基地からデルタII型ロケットで打ち上げられたメッセンジャー。目 的地の水星 は、太陽 に近いために地球からは日の出直前か日の入り直後の地平線際にわずかな時間しか観測できません。さまざまな天体 の映像 を届けているハッブル宇宙望遠鏡 でさえ、太陽 に近すぎるため、その姿をとらえることはできません。太陽系 の中では冥王星 についで情報が少ない惑星 ともいわれています。

水星探査の目的
NASAは、1992年、限られた費用と日数の中で、集中して惑星
探査
を行う「ディスカバリープログラム」を開始しました。メッセンジャーはその一環として開発されました。メッセンジャーの探査
目
的は、水星
はなぜ密度
が高いのか、表面の地質学的歴史、水星
の核
の詳しい調査、磁場、極にある謎の物質、大気の組成などの詳しい調査です。
水星
とはどのような惑星
で、どのようにしてできたのか。この問いに答えることは、太陽系
や地球がどのようにできたのかを解明する手がかりになるといわれています。これまでの調査で集められたデータを基に有力
な仮説も立てられています。メッセンジャーの探査
によって、それを証明するデータが得られることが期待されています。
過酷な環境にさらされる、荒涼とした大地
探査
機による唯一の水星
探査
は、1974~75年、アメリカの探査
機マリナー10号が行った3回の近接(フライバイ)観測だけです。このとき映し出された水星
は、無数のクレーター
におおわれた、まるで月
のような姿で、その表面は非常に古いとされています。また、しわのような地形が観測されましたが、これは水星
が縮み続けているためにできたと考えられています。しかし、マリナー10号が撮影したのは水星
の表面の約半分にすぎず、表面がどのような物質でできているのか、まだその全ぼうは明らかになっていません。
さらに、その後のレーダーによる調査で、水星
の極には氷
らしきものが存在することが示されました。昼夜の気温
差が激しく、暑いときは400℃を越える惑星
の表面に、氷
が存在するということは不思議なことに思えるかもしれません。水星
の自転
軸には傾きがないため、常に太陽
光の差し込む角度が一定です。そのため極地の深いクレーター
には、決して日の当たらない場所(永久影)が存在し、計算によるとその温度は-210℃であるといわれています。しかし、光が当たらないため、地上の望遠鏡
などで観測することはできません。
巨大な核が存在する?
水星
の密度
は、太陽系
の惑星
の中では地球についで高く、これは水星
が金属
などの高密度
の物質でできていることを意味します。これまでの調査により、水星
の内部は、地球と同じように核
、マントル
、地殻に分かれた層構造をしているという説が有力
です。核
は密度
の高い鉄
・ニッケル合金
でできていて、その大きさは、地球では直径の約45%であるのに対し、水星
では直径の60%から75%にもなる巨大なものであると考えられています。
また、水星
には、地球の1%ほどの磁場(固有磁場)があることが分かっています。太陽系
の中で、内側の水星
、金星
、地球、火星
は、「地球型惑星
」と呼ばれ、表面が固体
できた惑星
ですが、磁場があるのは地球と水星
だけです(木星
の衛星
ガニメデにも同じく磁場があることが分かっています)。この磁場は核
がある証拠であるともいわれています。

7種類の観測機器がなぞを解明する
探査 目 的に合わせ、メッセンジャーには、合計で7種類の観測機器を搭載しています。2種類のカメラ(MDIS)は地表を撮影し、ガンマ線やエックス線のスペクトロメータ(GRNS/XRS)は地表に含まれる元素の種類や量を測定、極地域の氷 の存在も調べます。また、磁場を調べる磁力 計(MAG)、表面地形の起伏を調べるレーザー高度計(MLA)、大気の組成やプラズマについて調べるスペクトロメータ(MASCS/EPP)なども搭載されています。そして水星 探査 の何よりの障害となる強い太陽 放射に耐えるためのシールドがこれらの機器を守っています。
到達するまでの7年間にも続く観測
メッセンジャーはまっすぐに水星
に向かうわけではありません。初めは地球の公転
軌道の外側を通って太陽
を周回。ついで地球や金星
、そして最後は水星
自体の重力
を利用して加速するスイングバイという航法と、燃料を使う5回の加速・軌道修正をおこない、徐々に内側の軌道へと進みます。
太陽
の周囲を約15周して水星
の公転
軌道へと向かいます。水星
は公転
速度が速いので、その軌道にうまく乗るためには、メッセンジャーも同じ速度で近づかなければなりません。2011年3月
、水星
をまわる軌道に到達し、その後約1年間の探査
が予定されています。





