ニュートリノに質量があることが確実に―スーパーカミオカンデとK2K実験の最新結果―
2004年08月01日 横山広美
ニュートリノ という素粒子 に質量 があることは1998年に報告されていました。2004年、この結果が違う方法で確認されたことが発表され、質量 があることは今まで以上に確実になりました。

ニュートリノってなに?
ニュートリノ
は私たちの身の回りに大量にある非常に小さな素粒子
です。1秒間に人間の体を突き抜けるニュートリノ
の数は、なんと数千兆個にもなります。しかし私たちはそのことに気づきません。なぜなら、ニュートリノ
はほとんど物質と反応
しない粒子
だからです。つまり、観測することが非常に難しい粒子
なのです。
このニュートリノ
を観測し続けているのが、岐阜県神岡町にある“スーパーカミオカンデ
”と呼ばれる装置です。これは直径、高さともに約40mの巨大な水
槽を使って、ごくまれに水
分子
と反応
するニュートリノ
を観測します。
ニュートリノに質量がある
1998年、スーパーカミオカンデ
の研究グループは、“ニュートリノ
に質量
がある”という観測結果を発表しました。この結果は、宇宙
から飛んでくる陽子やヘリウム
の原子核
などが大気にぶつかったときに発生
する、“大気ニュートリノ
”の観測によって得られました。
ニュートリノ
にはミュー型、タウ型、電子
型の3種類があります。大気ニュートリノ
の観測では、長い距離を飛んだミュー型のニュートリノ
の数が、短い距離を走ったものと比較して減少したことが観測されました。走っている間に、他の種類のニュートリノ
(タウ型)に変化したと考えられています(ニュートリノ
振動
)。この現象は、ニュートリノ
に質量
がある、とした場合に説明することができます。
物理学者たちは、宇宙
ができてから現在に至るまでの姿を、ひとつの理論で説明できると考えています。現在の素粒子
の“標準理論”はよくできてはいますが、まだ全てを説明するにはいたっておらず、ニュートリノ
の質量
についても予測されていませんでした。そのため、この結果は新しい理論をつくる際の重要なデータであると考えられ、注目
を浴びているのです。

確実になったニュートリノの質量
スーパーカミオカンデ
では、これまでとは違った解析方法に取り組み、ニュートリノ
に質量
があることをさらに疑いのない事実にしました。
「1998年に発表されたスーパーカミオカンデ
実験の結果によって、世界中のほとんどの研究者に、ニュートリノ
に質量
があるという事実が受け入れられていました。しかしなかには、ニュートリノ
に質量
があって別の種類のニュートリノ
に変化しているのではなく、違う理由で変化しているのだと説明する研究者もいたのです」。解析グループのリーダーである梶田隆章教授(東京大学宇宙
線研究所)はこう説明します。
そこでグループは何年にもわたって解析を工夫し、ニュートリノ
が質量
をもっていること以外では説明できない結果を示したのです。ニュートリノ
に質量
があって他の種類に変化する場合、ニュートリノ
のもつエネルギー
が一定だとすると、元のニュートリノ
の数は飛ぶことによって減少し、かつ飛ぶ距離によって減少の割合が”波
打つように“変化することが予測されていました。方向とエネルギー
が精度よくわかっている一部のデータのみを使ったところ、はっきりこの傾向を得ることができたのです。この結果は2004年2月
に発表されました。「ニュートリノ
が波
打ちながら減るという現象は他の理論では説明できないため、この観測はニュートリノ
の質量
の“だめおし”の証拠となったのです。」

人工ニュートリノを250km先に飛ばす
大気ニュートリノ
の観測が続く中、1999年に始まったK2K実験では、世界で初めて長距離をとばした人工のニュートリノ
を観測することに成功しました。人工ニュートリノ
は、茨城県つくば市にある、高エネルギー
加速器研究機構(KEK)で作られます。2.2秒ごとに約一兆個のニュートリノ
が作られ、それが250km離れたスーパーカミオカンデ
に向かって発射されるのです。
2004年6月
、K2K実験のグループは、人工ニュートリノ
でも、ニュートリノ
に質量
があることは疑いのない事実であることを報告しました。ニュートリノ
が変化しなかった場合、151個観測されると予想されたミュー型のニュートリノ
が、実際には107個しか観測されなかったのです。さらにニュートリノ
が振動
した際に期待されるニュートリノ
のエネルギー
分布の変化も観測されました。ミュー型のニュートリノ
は、飛行中に他のタイプ(タウ型)に変化したと考えられています。K2K実験のグループは、この結果によって、ニュートリノ
に質量
がある確率は99.99%と報告しています。
「K2K実験は、ニュートリノ
に質量
があることを、大気ニュートリノ
ではなく、加速器を使って人工的につくったニュートリノ
で確認することに成功した非常に重要な結果です」実験グループの金
行健治助教授(東京大学宇宙
線研究所)はK2K実験の意義をこのように述べています。
ニュートリノ
に質量
があることは、このようにして、反論する余地のない、確実な結果になったのです。





