ドップラー効果が宇宙の姿を解き明かす!
2001年06月01日 松橋佳衣
走っている救急車のサイレンが近付いてきたときと遠ざかるときで音が変わるという体験は、誰でもあるでしょう。このときに働いているのが「ドップラー効果 」です。そしてこ れは、宇宙 の起源や行く末を知るための、とても重要な現象なのです。
ドップラー効果って何だろう?
宇宙
の中で星や銀河
や銀河
の集団がどう動いているのかという問題は、宇宙
の起源と行く末を知る上でとても重要なものです。その時に必要となるのが、ドップラー効果
です。 この現象は、光の振動数
の変化/元の光の振動数
=星の速度/光の速度という式で表すことができます。
地球から見て星が遠ざかるときには星の速度はマイナスになり、近づくときはプラスになるので、光の振動数
は近づくと大きくなり、遠ざかると小さくなります。
このような現象は、日常生活でも経験することができます。救急車や消防車がサイレンを鳴らしながら近づいてくると、サイレンの音が甲高くなり、離れるにつれて音が低くなります。これもドップラー効果
による現象です。音にも光にも、ドップラー効果
が働くのです。
こうしたことから、光や音などの波
は、近づくと波
長が小さくなり、遠ざかると長くなることがわかります。光はその波
長によって色が変わるので、星の色を観測することで、その星が地球から遠ざかっているのか、近づいているのかが分かるのです。ただし、星の色はもともと違っているので、実際は特徴的な波
長の光などを観測し、その波
長がどのくらい長くなったか、短くなったかを測定するのです。
遠くの星ほど速い速度で遠ざかっていく
遠くにある星の多くが赤っぽい色に見えるのは、それらが地球から遠ざかっているためです。では、その速さ
はどのくらいなのでしょうか。先の式から、普通の光の波
長で考えれば、ほぼ、波
長変化/波
長=速度/光の速さ
となることがわかります。たとえば、もともと波
長0.6ミクロン(μ)の黄色い光が波
長0.9ミクロンの赤い光に見えるとするならば、その星はほぼ毎秒15万キロメートルの速度で遠ざかっているのがわかります。
そこで、科学者たちは、星までの距離と星の後退速度との関係を観測によって調べてきました。ある種の星はその半径が大きくなったり小さくなったりしており、その周期がその星の明るさと関係していることがわかっています。それによって、その星の見かけの明るさから距離が分かるのです。この関係は、次のような式で表すことができ、これをハッブルの法則といいます。
遠ざかる速さ
(km/秒)=64×距離(メガパーセク)
1メガパーセクとは約300万光年
の距離です。ハッブルの法則により、天体
が我々から遠ざかる速さ
とその距離が正比例することことがわかります。
ドップラー効果からわかる、銀河の「暗黒物質」と遠くの惑星の存在
ドップラー効果
からは、遠くの宇宙
のいろいろな姿がわかります。たとえば、銀河
の回転の様子です。銀河
は回転しているため、横から見ると、見かけ上一方の端はこちらに近づき、反対側の端は遠ざかるはずです。したがって、一方の端にある星は光の波
長が短くなる傾向を示し、他方は長くなる傾向を示します。この変化を知ると、渦巻銀河
の腕の部分にある星の速度、つまり銀河
の回転の様子がわかるのです。
実は、その結果が大変なことを示していました。銀河
の回転は中心から次第に早くなり、そして3万光年
も離れたところでは一定になってしまったのです。このことは、銀河
の周りにたくさんの物質があることを意味していました。しかし、何も見えないのです。光も、赤外線や電波
も、観測できないのです。そこで、この見えない物質を「ダークマター」または「暗黒物質」と言います。
また、遠くの恒星
が惑星
を持っているのかどうかを調べることもできます。1年ぐらい観察していると、星の光の特徴的な波
長が少しずつ変化します。このことから星の動きを知り、それから間接的に惑星
の位置と大きさを知ることができるのです。このような方法により、すでに50個近い恒星
に惑星
があることがわかっています。
<引用元>
『Science & Technology Journal』2001年1月
号56~57ページ
「忘れっぽい法則 ドップラー効果
」
<原著者>
鳥海光弘・東京大学教授
『これ以上やさしく書けない科学の法則』PHP研究所





