ココロを科学的に解明する
2001年05月01日 島田健弘
これまでヒトの心を科学的に探ることはできませんでした。ヒトの脳 に電極を刺すわけにもいかないし、生きたまま解剖するわけにもいかないからです。それが磁気共鳴 機能画像 法(fMRI )を使用することで可能になり、脳 のさまざまな機能が解明されるようになりました。
ヒトの心を科学的に調べる
精神機能、つまり「こころ」の働きを脳
がつかさどっていることを疑う人はいないでしょう。しかし、脳
のどこかにその精神機能を作るメカニズムが存在するということの証明はできていません。
たとえば、音楽は人類共通の言語であり、それを楽しんだり、理解したりするためには高度な情報処理能力
が必要です。しかし、脳
がどのような処理によって音楽を感性で捉えているのかという研究は、ほとんどなされていないのが現状なのです。
その最も大きな理由は、まさにヒトであることにあります。複雑に入り組んだ脳
の神経ネットワークを移動しながら処理される情報の流れを客観的に探るには、コンピュータ
ーが相手ならば回路
を直接探索できますし、動物なら脳
に電極を刺して調べることもできます。しかし、ヒトの脳
に直接電極を刺したり、解剖して調べたりすることはできません。
そのため、超高磁場装置を使った機能画像
法による、脳
の血流の動きや電気の動きの画像
化が必要になるのです。

脳では言語と音楽は同じもの
文部省(現・文部科学省)は「こころ」の働きを解明するために「文部省中核
的拠点(COE。Center Of Eccellence)形成プログラム:音楽の神経科学」を立ち上げました。このプロジェクトでは、高磁場装置を使った磁気共鳴
機能画像
法(fMRI
)により、脳
の活動を調べています。
音楽がどのようにヒトの脳
に影響を与え、脳
は音楽をどのように判断しているのかを調べるプロジェクトですが、脳
の画像
を解析することで、多くのことが発見できました。
たとえば、ピアノを初見で演奏するときにわかったことですが、ヒトの脳
は楽譜を言語処理の神経ネットワークで処理しているのです。下の図でもわかるように、「Japanese(日本語)」と「Music(楽譜)」を比べてもほとんど一致した部位が活動していることは一目
瞭然です。この解析結果によって、言語と音楽には高い類似性があることが証明できました。

音楽では働いて、言語では働かない脳の部分とは
音楽の持つ芸術性や感性は、言語の持つ芸術性や感性と、多くの共通点があることがわかりました。つまり、脳
にとって音楽は言語そのものなのです。しかし、音楽独特の脳
の動きもあります。
譜面を読む際には、図の右側「Misic」の矢印で示されている部分(右後頭葉
溝領域)が活発になっています。この部分は、言語処理をしているときにはあまり働いていません。これは、文字と音とが直接的に結びつく言語と違い、譜面の場合は五線上の位置情報の処理が音符のシンボル解析の一環として重要であることを示しています。
高磁場装置を使ったfMRI
の進歩によって、これまでブラックボックス
だった脳
の機能が本格的に解明されるようになったといえます。「こころ」と「感性」の科学的な解明が着実に進んでいるのです。
<引用元>
『Science & Technology Journal』2001年5月
号20~21ページ
「神経科学:感性へのアプローチ」
<原著者>
新潟大学脳
研究所機能解析学 カリフォルニア大学神経内科 教授
中田 力





