困難な海洋探査に挑む
2005年08月01日 子川智
地球上で、陸地の約3倍もの広大な面積を持つ海洋については、まだまだ知られていない部分が多いのが現状です。探査 が難しいといわれている海洋探査 ですが、未知の領域解明に向け、探査 技術は日々進歩しています。
なぜ深海調査が必要なのか?
世界地図を見ても分かるように、地球の表面には陸よりも遥かに広い海洋が広がっています。近年、陸地に関しては、陸上での測量・調査活動だけでなく人工衛星
を活用した計測によって詳しい地形や資源分布がわかってきました。しかし海洋については、未知の部分が多く残されています。陸の平均標高が約800メートルなのに対し、海洋の平均水
深は3500メートルもあり、陸上とは環境も全く異なっているため、陸上に比べて計測が難しく、調査が遅れているというのが現状です。
深海
調査が進めば、海底の地形や資源の分布はもちろん、気象予報やエルニーニョ
現象などの気象情報、海水
温度や海洋循環の解明にも役立つと考えられています。また、通信・石油
関連業界では、海底ケーブルや海底パイプラインの敷設のために、海底地形や地質の詳しい探査
が求められています。

さまざまな深海調査の方法
海洋計測の基本は海底地形図の作成です。海底地形図には、水
深はもちろんのこと、計測点の正確な座標軸(緯度と経度)も欠かせません。調査船で航行しながら水
深を計測し、海底地形図を作成していくので、時間も手間も非常にかかります。そこで、効率よく精密な調査のために、音響測深機の高性能化が求められ、調査方法の工夫がなされてきました。
地球物理探査
のための代表的な機器には、海底地形を調査するための「マルチナロービーム音響測深機」があります。海中は塩
分のために電波
が通りません。そのため、音の反射
って海底の地形を探る、音波
よる調査が中心となっています。
マルチナロービーム音響測深機は1960年代に米国で開発されたもので、船舶の真下の水
深だけを測るのではなく、進行方向と垂直に交わる面に多くの扇型の音響ビームを放ちます。これにより、複数のデータが得られ、調査速度が増すのです。
海底探査ロボットの実現も間近
近年欧米で製造されているマルチナロービーム音響測深機の性能向上には目
を見張るものがあります。レーザーポインターのように音響ビームを鋭くし、かつビームの数を従来よりも増やして精度を向上させました。こうした技術の進歩の要因は、1960~80年代の米ソ冷戦時代に海軍が意欲的に開発していたものを、冷戦終結後、民間に転用し商品化したためともいわれています。
一方、経済発展を続ける中国でも、領海の海底地形図の作成や港湾の整備を短期間に実現しています。海軍学校では、積極的に人材を育成し、探査
機器も自国で開発して技術を向上させています。
さらに最近では先進国を中心に、自律式無人探査
機(AUV)の技術開発が進められています。これは一種の探査
ロボット
です。AUVは従来のようにケーブルを使用しないのが特長で、海中での運動が拘束されず、支援船にも大型設備を必要としないメリットがあります。AUV実現のための技術は、多岐の分野にわたりますが、慣性
航法システムや、燃料電池
、コンピュータ
ー技術の進歩によって、実用レベル
に達しつつあります。
このように深海
物理探査
の技術が向上することで、これまでの調査の見直しに加え、地磁気
や重力
の計測も期待されています。しかし、海洋国家である日本の技術開発は、先進国のなかで見劣りしているのが現状です。若い世代が海洋に興味を持つことで、今後の深海
調査・探査
の研究は発展していくことでしょう。
<引用元>
『Science & Technology Journal』2005年8月
号18~19ページ
「特集 世界の深海
調査・探査
の現況と今後」
<原著者>
独立行政法人 海洋研究開発機構 海洋工学センター
自立方無人探査
機技術研究グループ サブリーダー
月
岡哲(つきおか・さとし)





