科学ドキュメント

AAASが開催する科学会議に参加した

2007年02月27日    難波美帆


科学者がいうことは絶対正しい? 科学者は雲 の上のひと? でも、科学は私たちの生活とかかわりのあるものです。私たちと科学者たちが話し合える場所ってあるのでしょうか。


参加者1万人!

2月 15日から19日、アメリカ・サンフランシスコで科学者が集まる大きな会議がありました。この会議は、アメリカ科学振興協会(American Association for the Advancement of Science、以下AAASと省略します)が毎年1回開催しているもので、全米、そしてカナダやヨーロッパからもたくさんの科学者が参加します。科学者だけでなく、学生や報道記者、小・中学校の先生、子どもを含めた一般市民なども参加し、その数は1万人にものぼります。

この会議の目 的は、会議を主催するAAASのミッション(達成したい目 標)に重なります。
・ 国際的な研究をどう進めていくか
・ どんな科学教育を行っていくべきか
・ 社会と科学のあいだで起きる問題をどう解決していくか
について話し合い、「科学の発展を社会に還元 (かんげん)する」会議です。

会場では、「科学的な研究成果を発表する場」「科学者が新しいコミュニケーションの方法を実践的に学ぶ場」「子どもが参加して科学を学ぶサイエンス・ショー」など、さまざまな会合が用意されています。

そして、魅力 はといえば、そこに世界的な科学者もたずねてくること。たとえば、今年の会議では、こんなことがありました。私が会場の片すみでメールをダウンロードしていたところ、目 の前の銀 髪の紳士に、大手メディアのリポーターが次々とインタビューしています。そっと彼の名札を見てインターネット で検索してみたところ、宇宙 服に身を包んだ青年の写真が出てきました。私の目 の前にいる男性は、1969年にアポロ9号の乗組員として宇宙 遊泳をはたし、その後もNASAをはじめ、科学界に貢献したラッセル・シュワイカート(Russell Schweickart)さんだったのです。


日本にはない会議?

日本でも科学者たちは、専門分野ごとに「学会」とよばれるグループを作って、年に1~2回、自分たちの研究成果を発表するための会議を開催しています。しかし、このような会議の多くは、それぞれの学会に所属するメンバーのために向けて開かれるもので、分野を超えて研究成果を発表したり、次に解決しなくてはいけない課題について話し合ったりするものではありません。

また、最近では会議の一部に一般の人が参加できるようになっている学会も増えてきましたが、異なる分野の学者や市民の参加を意識した会議は、まだ数少ないのが現状です。

高度に科学が発達し、かんたんにそれらを利用できるようになったにもかかわらず、今、私たちは科学をうまく使いこなせていません。たとえば、遺伝子組み換え作物 の栽培、石油 資源に代わるエネルギー の開発、地球温暖化 対策、あらゆる臓器に成長する可能性があるES細胞 の研究など、研究者と政策決定者だけでは決められない科学の問題が積みあがっています。安全の確認や、科学を使うための新しいルール作りが追いついていないのです。

年に1回でもいい、科学者の発表を市民が直接聞く、そこで考えたことを市民が科学者に伝える、さらにその場に政策決定者も立ち会う。そして、子どもたちは憧れの科学者に会って話ができる。そんな場が日本にも必要ではないでしょうか。第159回AAAS年会に参加して、強く、そう感じました。