科学ドキュメント

脱石油・石炭の切り札「天然ガス」

2005年12月01日    子川智


今、アジアでは経済発展に伴うエネルギー の需要増、日本・韓国における原油の中東依存、そして、特に中国における大気汚染酸性雨 など、環境問題への対応が急務となっています。そんななか、省エネ効果が高く、クリーンなエネルギー 源として注目 を集めているのが天然ガス です。

環境問題と省エネの両面で有効な天然ガス

アジアのなかでも、特に中国は酸性雨 などの環境問題が深刻になっています。その原因となっているのは、石炭 を使って発電するときに排出 される硫黄酸化物窒素酸化物 です。こうした問題に対処するため、石炭 などに比べてクリーンな天然ガス の利用促進が必要とされています。

天然ガス は、石油 、石炭 といったほかの化石燃料 に比較して、燃焼 させたときに二酸化炭素 や硫黄酸化物 などの環境破壊物質の排出 量が少ないのが特長です。石炭 から天然ガス に燃料を変えることで、環境汚染の原因を抑えることが可能だと考えられています。

また、天然ガス は、先進的な省エネルギー 技術との相性がいいことでも知られています。従来の火力発電 では、石油 や石炭 を燃やした で作った蒸気の力 で、蒸気タービンを回して電気を作るだけでした。しかし天然ガス ならば、発電する際、まずガスタービンで発電し、さらに、このときに出る排ガスの熱 で蒸気を作って蒸気タービンを回すことで、再度電気を作ることができるのです。このように2段階で発電できるため、高い発電効率を得ることができ、省エネにつながります。

燃料電池として家庭でも活用

天然ガス は次世代エネルギー として注目 されている燃料電池 にも役立てることができます。燃料電池 は、水素 を燃料として発電するしくみで、その燃料である水素 は天然ガス を改良することによって得られます。最近は、発電の際に発生 する を有効利用するコジェネレーション(熱 電併給システム)でエネルギー 効率を高める努力 が続けられていますが、そのなかでも注目 されているのが、燃料電池 を活用したコジェネレーションなのです。

たとえば、家庭に燃料電池 コジェネレーションシステムを導入すれば、従来の給湯器の代わりに利用できます。加えて、燃料電池 で発電した電気を、テレビや冷蔵庫などの電気機器に使うことができ、発電と同時に出る熱 は、お湯に変えて風呂やシャワーに使えるのです。熱 を利用する場所の近くで発電できるので熱 の利用効率が高く、従来の火力発電 と給湯器の組み合わせと比較して、省エネルギー 性や環境保全性に優れたエネルギー システムということができるでしょう。

すでに東京ガスは、世界に先駆けて家庭用燃料電池 コジェネレーションシステムを市場に投入しており、一般家庭に普及する日も近いと考えられています。

運送分野ではガソリンや軽油の代わりに

最近では、ガソリン や軽油が原油高騰の影響を大きく受けていることが問題となっています。そうしたことから、天然ガス を元にして作られるDME(ジオメチルエーテル)やGTL(Gas to Liquids=合成軽油)にも注目 が集まっています。

DMEは、天然ガス 、石炭 、バイオガスなどから得られる合成ガス(水素一酸化炭素 の合成ガス)から製造されます。GTLは、天然ガス を水素一酸化炭素 の合成ガスに転換し、さらに分子 構造を変えて液体 燃料に変換する技術によって作られます。DME、GTLともに、(1)石油 ではなく天然ガス を燃料として製造できる(2)硫黄酸化物粒子 状物質を大幅に削減できる(3)気体 燃料ではなく液体 燃料なので、生産地から市場への現行輸送形態(タンカーなど)や市場での既存のインフラストラクチャー(ガソリン スタンドなど)が活用できる、といったメリットがあります。

どちらも革新的な技術ですが、市場に投入して実用化するためには、コストや価格を下げる必要があります。今後の技術開発では、既存設備の活用などを含めた幅広い観点から、市場の創出・拡大の道を探っていくことが大切だといえそうです。

<引用元>
『Science & Technology Journal』2005年12月 号44~45ページ
「21世紀のキーテクノロジー 天然ガス 利用技術/環境問題と省エネの両面から脚光」

<原著者>
株式会社三菱総合研究所 海外事業推進センター 主席研究員
平石和昭(ひらいし かずあき)