ES細胞で実現する新しい治療法とは?
2005年05月20日
事故で失ってしまった足がよみがえるなんてSFの世界の話みたい? じつは今、この技術の実現に向けて世界中で研究が進められています。その鍵を握っているのはES細胞 です。
ES細胞ってどんな細胞?
人間は最初、たった1個の受精卵
です。何回か分裂すると胚
と呼ばれる状態になり、さらに分裂を繰り返して成長していくと、だんだんヒトの形になっていきます。
この過程で、もともと1つの細胞
だったものが、脳
の細胞
や筋肉
の細胞
といったように、組織
ごと異なった細胞
に特殊化していきます。このことを「分化」と言います。
ES細胞
(胚
性幹細胞
)とは胚
から作られる分化する前の細胞
のこと。分化前なので、どんな組織
にもなっていません。
つまり、ES細胞
は体のどんな組織
の細胞
にも分化できるのです。また、普通の細胞
は限られた回数しか分裂できませんが、ES細胞
は無限に分裂を繰り返せます。このため「万能細胞
」とも呼ばれているのです。
失われた体の一部をよみがえらせる
このES細胞
によって実現できるかもしれない技術が再生医療
です。
ES細胞
にある特別な処理をすれば、思い通りの組織
の細胞
に分化させられる、つまり、どんな組織
を作り出せるはずなのです。そうすれば事故や病気で失われた内臓や神経などを再生させることが可能になります。
思い通りの細胞
に分化させる技術はある種類の神経細胞
などについてはすでにヒトでも成功していて、他の組織
についても研究が進められています。
分化を制御できさえすれば、再生医療
は実現するのでしょうか? いいえ。ほかにも、技術的に難しい問題が残っています。それは、免疫
(めんえき)による攻撃を避ける技術です。これを解決する方法の1つが、クローン胚
からのES細胞
作成です。
自分の細胞からES細胞を作るには
人間の体には異物を排除しようとする働きあるので、他人の組織
を移植
すると拒絶反応
を起こしてしまいます。これを解決するのがクローン胚
。自分の細胞
核
と卵
子の核
と入れ替えて作るクローン胚
は、自分と同じ遺伝子
を持つので拒絶反応
が起こらないのです。
ただし、この研究には問題もあります。クローン胚
の遺伝子
は元の人間と同じですから、ES細胞
を取り出さなければ成長して人間になります。クローン人間を作っても良いのか、また胚
を壊すことは人間を殺すことにならないか、慎重に考えなければなりません。
病気に苦しんでいる人のことを考えれば一日でも早く実現したいのですが、今は人間のES細胞
研究は誰でも自由にできるわけではないのです。





