広がる宇宙教育
2005年12月01日 島田健弘
小学生から高校生までを対象にした宇宙 教育が各国で盛んに行われています。宇宙 教育の先進国はアメリカで、多くの国民が宇宙 に関心を持っています。日本の宇宙 教育は遅れていて、まずは宇宙 に関心がある先生を育てるところからはじめる必要があります。
欧米の宇宙教育
アメリカでは宇宙
開発や宇宙
研究など国家戦略の一環と位置づけ、小学生から高校生まで宇宙
に関する教育を強く推進しています。また研究者には、自分の研究が宇宙
開発、社会生活、教育にどのような影響を与えるかをキチンと説明する義務があり、研究費用の2%は教育のために使わなければならないという決まりがあります。多くの子どもたちに、小学生のころから宇宙
開発や宇宙
科学の最新技術情報に接する機会を、国が与えているといっていいでしょう。必然的にアメリカ国民の宇宙
への関心は高くなり、大統領選挙では宇宙
開発への取り組みが争点のひとつとなることもあるほどです。
ヨーロッパでも宇宙
科学教育には積極的に取り組んでいます。欧州宇宙
機構(ESA)は、予算の1%を教育のために使っています。公共の団体が小学生から高校生まで宇宙
教育についての支援をしているのです。また、スウェーデンのエスレンジやノルウェーのアンドヤ・ロケット・レンジなどの打ち上げ実験場を、宇宙
科学教育の実践の場として大学に提供しています。そこではロケット打ち上げ実験に参加することもできるのです。このようにヨーロッパは協力
して宇宙
科学の教育を振興しているのです。
アジアの宇宙教育
アジアの国々も宇宙
教育に力
を入れ始めています。インドでは国家戦略として、宇宙
局の重要課題のひとつに宇宙
教育を取り上げています。小中学校への宇宙
に関する講演、催しなども多く行われています。また、教育全般について言えることですが、インドでは教師も学校もとても不足しています。それを補うために、教育専用の衛星
(Edusat)を2004年に打ち上げ、力
のある先生たちに質のよい授業を衛星
通信で提供しています。
マレーシアでは宇宙
機関が創設されたときから、宇宙
教育を推進しようと計画していて、国立プラネタリウム
が望遠鏡
観測や小学生向けの宇宙
科学クイズ、宇宙
フィクション小説やロケット発射コンテストなど多くのイベントを率先して行っています。
インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、カンボジアなどでは、小中学校で宇宙
について教えられる教師がほとんどいないという状況が続いています。これらの国々は山火事などの災害状況について詳しく知るために衛星
による観測が求められているため、衛星
のデータ解析や打ち上げに関わるスタッフの研修が近年、盛んに行われています。彼らが引退し教育者として教壇に立つようになれば、状況は変わってくることでしょう。
今後の宇宙教育はどうなっていくのか
宇宙
教育を推進するイベントは国内外で急速に増えています。日本でも2005年10月
に、国連と国際航空宇宙
連盟とが共催して、宇宙
教育をテーマにしたワークショップを行われました。現在、宇宙
教育は世界的に広まっているといっていいでしょう。しかしまだまだ不十分だと考えられています。
小中高生に対する宇宙
教育は、現場の教師に任せてしまうのではなく、大学・研究機関、宇宙
機構、政府など、それぞれの立場の人たちが協力
して、子どもたちの宇宙
への関心を深めていくような教育プログラムを組み立てていくことが大切なのです。
日本の場合は、まず小学校から高校までの理科の授業に向けて、教師が興味を持つような宇宙
教育の指導書を作ることが必要なのではないでしょうか。先生自身が宇宙
に興味を持てば、授業でも宇宙
の成り立ちやその大きさなど、宇宙
についての謎や知識を楽しく教えてくれるのではないでしょうか。
<引用元>
『Science&Technology』2005年12月
号18~19ページ
「特集 宇宙
への理解を深める新たな展開/世界各国の宇宙
教育への取り組み」
<原著者>
宇宙
航空研究開発機構・宇宙
科学研究本部
綜合研究大学院大学教授、九州大学中空センター客員教授
小山孝一郎(おやま こういちろう)





