エチゼンクラゲ大量発生のナゾを追え! 前編
2006年12月09日 庄司里紗
ここ数年、日本近海に大量発生 して問題になっているエチゼンクラゲ。定置網に入り込んで魚に害を与えたり、その重みで網を破ったり……。各地の漁師さんたちの被害は深刻です。なぜエチゼンクラゲはこんなに増えてしまったのでしょうか? 今回はその大発生 のナゾに迫ります!

| 若狭湾大飯町沖合で、海の中を悠然と泳ぐ巨大なエチゼンクラゲ |
エチゼンクラゲは重さも大きさもヘビー級!
エチゼンクラゲは日本近海に生息 する鉢クラゲの仲間で、傘の大きさは直径60~100cm以上、重さ は60~150kgにもなる日本最大のクラゲです。傘の下にはチョコレート色の長い触手がたくさん伸びているのが特徴です。
| この海のどこかに……。 |
越前で発見されたからエチゼンクラゲ
日本で初めてエチゼンクラゲが確認されたのは1920年、今から86年前のこと。福井県高浜町音海の定置網にかかっていたところを発見されました。エチゼンクラゲという和名は、福井県の旧い呼び名「越前」にちなんで名付けられたそうです。(正式な学名 はストモロファス・ノムライ。外人?) “エチゼン”という名前がついてはいるものの、その発生 場所は日本から遠く離れた東シナ海や朝鮮半島沿岸だと言われています。それがなぜ日本沿岸で大発生 しているのでしょう? ナゾはますます深まるばかり……。 まずは、そのナゾを解く手がかりを求めて、福井県へと向かってみました。

| 定置網の中に入ったエチゼンクラゲの群れ |
網を埋めつくす数千匹のエチゼンクラゲの群れに頭を悩ます漁師さんたち
敦賀半島の西側に位置する美浜町の丹生(にゅう)漁港。ここはトラフグ、マグロ、ハマチ、タイ、サワラなどさまざまな魚に恵まれる、福井県でも有数の名漁場として知られています。そんな丹生漁港も、エチゼンクラゲ被害に頭を悩ませている漁港の一つです。「とくに被害が大きいのは、沖にしかけた定置網や底引き網。去年の大発生 では、一つの網の中に5000匹以上もエチゼンクラゲが入ったこともあるんですよ」 そう話してくれたのは、丹生漁業共同組合の谷口芳哉さん。谷口さんは例年、12月 の半ばまで船で沖に出ているそうですが、今年は10月 いっぱいで船を出すのを止めてしまったと言います。

| 網でエチゼンクラゲを排除する様子 |
100kgのクラゲが数千匹も!
「せっかく漁に出ても、網にかかるのは一面、エチゼンクラゲばかり。水 揚げ量は例年の5分の1以下にまで落ち込んでいます。これじゃあ、船を出すたびに赤字ですよ」 エチゼンクラゲが網に入ると、その重みで網が壊れてしまうばかりか、エチゼンクラゲから出る粘液で魚の鮮度が下がったり、触手の毒で死んでしまったりするそうです。 ところで、網にかかったエチゼンクラゲはどうしているのでしょう?「一匹ずつ網の外に捨てるしかありません」 えー! 100kg以上もあるエチゼンクラゲを何千匹もすくい出すなんて、考えただけでも気が遠くなりそうです。「でも、捨てたクラゲがまた隣の網に入ってしまうかもしれないし……。エチゼンクラゲの発生 そのものを抑える方法を見つけないと、根 本的な解決策とはいえませんよ」 なんとかエチゼンクラゲの被害を食い止める方法はないものでしょうか? 私たちは福井県の水 産試験場職員や栽培漁業センターの所長を務めてきた「クラゲ博士」こと、安田徹さんにお話をうかがうべく、敦賀市へと向かいました。





