地球科学現象の解明に役立つ地震研究
2004年03月01日 子川智
大きな被害をもたらす地震 や津波 。地震 学は、地球科学と呼ばれる研究分野の1つです。地震 観測網の進歩は地球科学現象の解明に大きく貢献するだけでなく、地震 予知も可能にします。
海溝型地震の直近観測に成功
2003年9月
26日、十勝沖地震
が発生
しました。震源
の破壊パワーを示すマグニチュード
は8。発生
場所は、1952年の十勝沖地震
とほぼ同じでした。
この地震
の震源
域である北海道の十勝沖には、1999年にケーブル式地震
・津波
常時観測システムが整備されていました。2003年の十勝沖地震
は、このシステムのある海域で初めて観測された、海溝
型巨大地震
(プレート
境界地震
)でした。震央
からわずか30キロメートルほどの距離で、観測システムがプレート
境界地震
の全波
形をとらえたのです。
海底に設置してある水圧
計も、海底の隆起
という地殻変動、隆起
にともなう水
中音波
励起とその定常波
形成、地震
動による海底の揺れ、そして津波
を観測しました。水圧
計が、地殻変動をとらえるセンサーとしても役立つことが判明したのです。
海溝
型巨大地震
において、これだけ震央
近くで水圧
計のデータや地震
後の継続的海底上昇のデータが取得されたのは、初めてのことでした。こうしたデータは今後、観測点直下の断層
連動において重要になってくると思われています。
予測されていた十勝沖地震
十勝沖地震
の発生
前、北海道の地震
学者は十勝沖の地震
活動に関する論文を書いていました。そこには、1952年十勝沖地震
に先立つ1945年頃から第二種地震
空白域(微小地震
発生
頻度が低下し、地震
断層
があまり動かない現象)が形成されたこと、1990年以降、今回の十勝沖地震
の海域に再び空白域が形成されていること、2003年の時点でマグニチュード
8クラスの地震
が発生
し得るエネルギー
が蓄積されている可能性があること、などが述べられていました。国の地震
調査委員会も、2003年3月
に十勝沖地震
発生
確率を推定、同年以降30年間に60%として、十勝沖地震
の発生
をある程度予想していました。
こうした予想の背景には、地震
国である日本が50年以上前から行ってきた地震
・津波
・地殻変動などのデータを、今日の研究に役立てていることが挙げられます。1990年代後半から本格的な導入がはじまったGPS(Global Positioning System:地球を周回する人工衛星
を使った正確な位置把握システム)観測により、プレート
境界でゆっくりと動く地震
が頻発していることがわかっていました。
国土地理院のGPS観測網は、今回の十勝沖地震
発生
後に継続して起こった地殻の変動を捉え続けています。プレート
境界で起こる巨大地震
では震動や津波
などの瞬間的な破壊現象に目
を奪われがちですが、こうした断層
の小さな運動を長期にわたって観測することで、地震
予知ができるような研究が進んでいます。
時間と経験が必要な地球科学現象の解明
日本が数十年かけて蓄積したさまざまな地震
データは、最新のプレート
観測や予測研究にも大きく貢献していて、地球科学現象の解明にも役立つと考えられています。
地球科学現象は、刻々と変化する地球に関するさまざまな分野の現象を、長い時間をかけてモニタリン
グしなければ解明することができません。日本がこれまでに蓄積してきたデータは、そうした研究にも大きく貢献することは間違いなさそうです。
<引用元>
『Science and Technology Journal』2004年3月
号20~21ページ
「特集 地震
/海溝
型巨大地震
の直近観測に成功」
<原著者>
海洋科学技術センター深海
研究部 研究主幹
三ケ田 均(みかだ ひとし)





