「第2回江崎玲於奈賞」受賞者は「細胞シート」工学の生み親
2005年12月01日 島田健弘
東京女子医大の岡野光夫博士が2005年、江崎玲於奈 賞を受賞しました。岡野博士は再生医療 の要とも言うべき「細胞 シート」工学の生みの親です。この「細胞 シート」工学によって、細胞 の培養技術は格段に進歩しました。
「細胞シート」工学の生みの親
2005年8月
、茨城県科学技術振興財団とつくばサイエンス・アカデミーは、「第2回江崎玲於奈
賞」の受賞者に、東京女子医科大学先端生命医科学研究所長の岡野光夫工学博士を選びました。「江崎玲於奈
賞」は、ナノサイエンスあるいはナノテクノロジー
の分野で目
覚しい業績をあげた研究者に送られる賞です。
岡野博士は「細胞
シート」工学の創設者です。細胞
シートとは、細胞
が増殖し皮膚
や角膜、歯根
膜、心臓
の筋肉
に形成されていく際の、骨
組みのようなものをいいます。人間の体の組織
や臓器はシート(土台)状の細胞
からできているので、細胞
のシート(土台)を培養すれば、理論上は思い通りの細胞
を再生できます。このシートを再生医療
に生かす方法が「細胞
シート」工学なのです。
細胞培養に必要な「細胞シート」工学
細胞
を培養皿で培養させる際、従来では接着タンパク質
を使って培養皿に細胞
を接着させ培養していました。この接着をはがすためにはタンパク質
分解
酵素
を使用しなければならないのですが、酵素
を使うとタンパク質
が傷つくため、再生医療
の分野で使うには問題があったのです。
そこで岡野博士は、高分子
を培養皿と細胞
シートの間に挟む手法を考え出しました。この高分子
は水
温が37℃以上になると水
になじみ、細胞
がく
っついて培養されてきます。一方、20℃以下になると水
に溶けるので、培養皿から簡単に細胞
をはがせるのです。
この方法の開発によって、再生させた患者自身の細胞
を患者に移植
するということが可能になりました。
そもそも再生医療
では患者自身の細胞
を使って臓器を培養するため、拒絶反応
が出ないという大きな利点があります。そのため、移植
の分野では特に注目
されているのです。組織
を傷つけることなく臓器を再生できれば、臓器移植
の飛躍的な発展につながっていくことでしょう。
アメリカでの留学経験が「細胞シート」のヒントに
岡野博士は早稲田大学の理工学部で学び、大学院時代は高分子
の研究を専攻していました。その後、米ユタ大学に留学し、熱
によって薬の放出をコントロールするドラッグ・デリバリー・システムなどの研究に取り組みました。この研究がのちに「細胞
シート」工学の大きなヒントになったと言います。
しかし当時は、温度で変化する高分子
を使って生体細胞
を培養することは誰も考えておらず、そんなアイデアを話したときには「みんなから笑われた」と岡田博士は語っています。
それがいまでは「細胞
シート」工学という、再生医療
に欠かせない医用工学として発展し、江崎玲於奈
賞を受賞するに至ったのです。
現在、心筋
組織
や歯根
膜、膀胱組織
に細胞
シートを適用する研究に取り組んでいます。再生医療
が進歩すれば、リスクの大きい、他者からの臓器提供による移植
も減ってくるでしょう。
<引用元>
『Science and Technology Journal』2005年12月
号58ページ
「第2回『江崎玲於奈
賞』を受賞した 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所所長 岡野光夫教授」
<原著者>
S&Tジャーナル編集部





