科学ドキュメント

エチゼンクラゲ大量発生のナゾを追え! 中編

2006年12月23日    庄司里紗


ここ数年、日本近海に大量発生 して問題になっているエチゼンクラゲ。定置網に入り込んで魚に害を与えたり、その重みで網を破ったり……。各地の漁師さんたちの被害は深刻です。なぜエチゼンクラゲはこんなに増えてしまったのでしょうか? 今回はその大発生 のナゾに迫ります!


クラゲ博士こと安田徹さん

大量発生の原因は「海水汚染」と「地球温暖化」?

「エチゼンクラゲの問題は、早く手を打たないと大変なことになりますよ!」 開口一番、強い口調でそう訴える安田さん。その言葉 には、40年以上にわたってクラゲの研究に打ち込んできたゆえの根 拠があります。「エチゼンクラゲの被害は、じつは今に始まったことではないんです。これまで1920年、1958年、1995年にも大量発生 の記録が残っています。そのデータから、エチゼンクラゲの大量発生 は40年周期で起きると考えられていました。ところが2001年頃からは、毎年のように起きている。これは明らかに日本を取り巻く海洋の環境が変化した証拠です」


2004年から2005年のエチゼンクラゲの移動の様子

どんどん増えるクラゲの原因は……

 安田さんによると、エチゼンクラゲは東シナ海や朝鮮半島沿岸で生まれ、イソギンチャクのように硬い岩場などに付着して子供時代を過ごすそうです。互いに合体をくりかえしてある程度の大きさになると、今度は直径2~3mmの花びらのような形に分裂して、海を浮遊する生活に入るといいます。そして、たった4~5ヶ月 であの巨大な姿に成長するのです。「大量発生 について、まだはっきりしたことは何一つわかっていません。ただ、エチゼンクラゲが生育する中国や韓国沿岸の海水 汚染が大きな原因の一つと考えられています。経済成長が進む中国から大量の生活排水 や工業排水 が流れ込み、エチゼンクラゲのエサとなるプランクトンが急激に増えているからです」 また、沿岸の工業化で護岸工事が進んだことも影響を与えているといいます。「クラゲにとって、コンクリートは子供時代を過ごすための“足場”としてうってつけなんですよ」


揺れるエチゼンクラゲ

やつらはどこからやってくるのか?

 さらに安田さんは、一本のビデオを見せてくれました。巨大なエチゼンクラゲが海中を泳いでいる姿をとらえた貴重な映像 です。それにしても、デカい! 横を泳いでいる人間が今にも食べられてしまいそうな大きさです。「クラゲの周りをよく見てみてください。ほら、魚がたくさん群がって泳いでいるでしょう? これはイシダイやマアジ、カワハギといった魚たちです。彼らはエチゼンクラゲの傘の下に隠れて外敵から身を守っていますが、お腹がすくと傘を食べたりするんです。ところが近年、中国による魚の乱獲で、そういったエチゼンクラゲのライバルたちが減ってしまっている。それも大量発生 の一因と考えられているんです」 成長するための足場が増え、天敵 もいないとくれば、クラゲにとってはまさに“パラダイス”。そこでたくさんの仲間を増やしたエチゼンクラゲが、対馬海流に乗って日本海にやってくる??。それが大量発生 の“真相”なのでしょうか?「そうですね。ただ、地球温暖化 の影響も見過ごせません。日本海の水 温は年々上がっていますが、それは15℃以上の水 温を好むエチゼンクラゲの生育を助長しているともいえますから」 海洋汚染 と地球温暖化 。いずれにしても、クラゲの大量発生 は私たち人間が招いた海洋環境の悪化に原因がある……、そんな気がしました。