人類初の試みに挑む「はやぶさ」が、地球誕生の謎に迫る!
2003年09月01日 庄司里紗
“小惑星 の地表から石や砂などのサンプルを持ち帰る”という人類史上初めてのミッションに挑戦中の「はやぶさ」。これまでの惑星 探査 の想像 を超える野心的なプロジェクトに今、世界中が注目 している!
地球誕生、生命の起源の謎に迫る
私たちの住む地球はどのように生まれ、どんな物質で構成されているのか? その謎を解くために、人類はこれまで数多くの惑星
探査
を行ってきました。それは最も身近な地球に始まり、やがて“太陽系
の隣人”である金星
や火星
、木星
などへ広がっていきました。
その結果、大型の惑星
を探査
するだけでは解明できないことが多いということがわかってきました。大型の惑星
は、重力
や放射性物質によって内部が溶解
して球状になり、誕生時とはかなり異なった姿になっています。地球も例外ではなく、たとえ掘削して内部を調べても、層状に分化しているため元の状態を知ることはできないのです。
太陽系
創成期の材料を探すなら、当時の状態を今も保っている小型の天体
、すなわち球状ではない天体
にむしろ着目
すべきなのです。その代表例が、“太陽系
の化石
”とも呼ばれる小惑星
や彗星といった始原天体
です。このような天体
に探査
機を送り、サンプルの収集と地上での回収(サンプルリターン)を行う新たな太陽系
探査
が、これから本格化するきざしを見せています。このような探査
が進めば、ゆくゆくは彗星の核
からのサンプルリターンによって生命の起源に迫ることも夢ではなくなるでしょう。

往復20億キロメートルの壮大な旅路
そんな中、1996年から文部科学省によって始まった新プロジェクトが科学衛星
「MUSES-C」です。サンプルリターンに必要な工学技術の開発と実証を目
指し、2003年5月
、無事打ち上げに成功したこの衛星
は「はやぶさ」と命名されました。
「はやぶさ」のミッションは、小惑星
「1998SF36」に行き、その表面から試料を持ち帰ることです。月
以外の天体
表面の試料をまだ手にしたことがない人類にとって、これは初の試みです。
“人類初の試み”はそれだけではありません。探査
機の帰還には膨大な燃料がかかるため、これまでの惑星
探査
は打ち上げっぱなしが常でしたが、「はやぶさ」は目
標の天体
にランデブーした後、再び加速して地球に帰還するのです。
往復約20億キロメートルに及ぶ航海は、帰還型の探査
機としては世界最長です。この長旅に耐えるため「はやぶさ」のメインエンジンには、必要な燃料が従来の10分の1で済む高性能のイオン
エンジンを世界で初めて採用しています。
チャレンジはまだ始まったばかり!
小惑星
とのランデブーも、史上初の方法で行われます。小惑星
は、電波
による通信でも往復に30分以上かかる遠く離れた場所にあります。そのため「はやぶさ」は地球からの指示に頼ることなく、搭載カメラやレーザーといった“自らの眼”で得たデータを元に、接近・降下・着陸のミッションを自律的に行うのです。
小惑星
表面に着陸した「はやぶさ」は、特殊な技術を駆使し、わずかな接触時間のうちにサンプルを採取。サンプルを採取したカプセルは、地球から約20万キロメートルの軌道上で「はやぶさ」本体から分離され、大気圏へ一気に突入して地表に向かうという画期的な回収方法がとられています。
このように世界最先端の技術を集結した「はやぶさ」は、これまでは米国の計画のトレースが中心だった日本の宇宙
開発において、非常に独創的なプロジェクトといえます。その試みが1つでも成功すれば、惑星
科学、惑星
探査
において大きな一歩になることでしょう。
「はやぶさ」の打ち上げに際しては、ジャズミュージシャンにより組曲が提供されたほか、世界中の88万人の人々から署名も寄せられました。多くの人の期待を乗せ、船出した「はやぶさ」の今後に注目
です。
<引用元>
『Science & Technology Journal』2003年9月
号18~19ページ
「特集:宇宙
開発/「はやぶさ」が人類初の試みに挑戦」
<原著者>
文部科学省宇宙
科学研究所システム研究系 教授
川口淳一郎





