科学ドキュメント

「酒に強い!」にひそむ落とし穴

2006年12月21日    大石かおり


お酒を飲んでしまった以上、「自分は酔ってないから運転してもOK」という言い訳は通用しません。まわりの大人はだいじょうぶ?


なぜお酒を飲むと運転能力が落ちるのか?

これから年末にかけて、クリスマスパーティーや忘年会、さらには親戚が集まるお正月 など、お酒を飲む人をよく目 にする季節になってきました。

「ちょっと飲んだだけだからだいじょうぶだよ。はー! ほら、酒臭くないだろ。酒には強いんだよ」。

そんなことを言いながら飲酒運転しようとする大人を見かけたことありますか? 「自分は酔ってない」なんて自覚はとても危険。飲酒運転には、お酒に強いも弱いも関係ないのです!

お酒にはアルコール(厳密には、アルコールの一種であるエタノール )とよばれる成分が入っています。このアルコールが体内に入ると、 をマヒさせてしまいます。その結果、理性や判断能力 、運動能力 が狂います。

科学警察研究所の藤田悟朗(ふじた・ごろう)さんは、飲酒によってどれくらい運転能力 が低下するかを、運転シミュレータ(写真)を使って実験しました。

このシミュレータはレーシングゲームのようなものですが、運転している途中で子どもや自転 車が飛び出してくるので、それを避けなければいけません。

ところが、お酒を飲んだ状態で実験すると、「あ、危ない!」と思ったときにブレーキを踏むまでの時間が長くなってしまい、その結果、事故を起こしてしまうことがわかりました。


(イメージ図)

お酒に強い人は、飲酒しても運転能力が落ちない?

でも、お酒の強い人は少しくらい飲んでもすぐに復活するから、運転しても大丈夫なんじゃない? そんなことを思った人、それは違います!

藤田さんの実験によると、お酒に強い・弱いに関係なく、体内にアルコールがあると運転能力 が落ちることがわかりました。

「お酒くさい」「顔が赤い」「気分が悪くなる」といったいわゆる「よっぱらい」の自覚症状の一部は、アセトアルデヒドという物質が引き起こすものです。お酒を飲んだ本人が「自分はいま酔っているな」と思うのは、体内にアルコールとアセトアルデヒドの両方、またはその片方があるときです。

このアセトアルデヒドというのは、アルコールが分解 していく途中でできる物質です。

お酒を飲むと、アルコールはアセトアルデヒドから酢酸 へと変化します。酢酸 に分解 されてしまえば、もう「酔っぱらい症状」を引き起こすことはありません。「お酒に強い人」とは、アセトアルデヒドをすばやく 酢酸 に変えることのできる人だったのです。

とはいえ、すべてのアルコールが一気に分解 されるわけではありません。

アセトアルデヒドが酢酸 に分解 され、「酔いがさめた」という状態であっても、図のようにお酒を飲んだ人の体内にはまだアルコールが残っているのです。

運転能力 の低下に関係しているのは、最初にも書いたように をマヒさせるアルコール。本人が酔っていないと思ったとしても、まだまだ危険な状態は続いています。

中学生のみなさんは、あと3~6年で運転免許を取りにいける年齢です。お酒が飲めるまでは5~7年ですね。それまでこのことを忘れないでいて下さい。飲酒運転がゼロになると良いですね。