科学ドキュメント

マッハ2のスピードの飛行実験に成功

2005年12月01日    島田健弘


オーストリアのウーメラ実験場で超小型音速実験機(NEXST-1)の飛行実験が行われました。これによって、コンコルドよりも静かで多くの乗客を乗せることができ、燃費もよく、環境にも配慮した超高速旅客機が完成に一歩近づきました。

日本列島を1時間で縦断できる速さ

2005年10月 10日、オーストラリア南部のウーメラ実験場で小型超音速実験機(NEXST-1)の飛行実験が成功しました。この実験は、宇宙 航空研究開発機構(JAXA)が推進する次世代の超音速旅客機「SST(Super Sonic Transport)構想の一環として行われました。

「SST」は引退したコンコルドに匹敵するマッハ2のスピードで、乗客数3倍、航続距離2倍、窒素酸化物 排出 量は4分の1、騒音はジャンボジェット機並みに抑えるというコンセプトで研究されています。より速く、より多くの乗客を、安全に静かに運び、環境にも配慮したハイスペック旅客機で、コンコルドの欠点をすべて見直した設計なのです。

マッハ2というと時速約2400km(キロメートル)、秒速で約700m(メートル)にもなります。札幌から沖縄県の石垣島までは直線距離にして2500km(キロメートル)ありますが、この距離を、マッハ2の旅客機はわずか1時間あまりで飛んでしまうのです。


空気抵抗を受けにくい機体

この実験機(NEXST-1)は、全長約11.5メートル、重量約2t(トン)の無人無推進力 の状態で、超音速時の抵抗 を13%以上低減させることをねらって作られました。

実験はNEXST-1をロケットブースターで打ち上げ、ロケットの速度がマッハ2となる高度約19キロメートル地点で、NEXST-1をブースターから分離させます。そしてマッハ2のスピードで滑空 させるのです。NEXST-1は無推進力 、つまりエンジンがないので、スピードに乗って滑空 するかたちになります。紙飛行機を飛ばすのと大まかな原理は同じです。

この実験の目 的は空気 抵抗 を受けにくい形状にした設計が適切だったかどうか検証することにありました。音速を超える速度になると相当の空気 抵抗 を受けます。それを軽減させることができれば、SSTの開発にとって大きな進展となるのです。

地球の裏側へも日帰りで?

今回の実験では、空気 の抵抗 などを含めて、およそ800点のデータが得られました。これを解析することで、今後のSST開発は大いに発展することでしょう。

今後は軽量の機体材料の研究を進めるほか、エンジンを載せた実験機でも飛行実験できるように検討していく方針となっています。

近い将来、「SST」が実用化されていれば日本の反対側にあるブラジルまで、数時間で行くことが可能になるかもしれません。しかも、法外な金 額ではなく、いまと同じくらいの金 額で「ちょっとこれからブラジル行ってきます。夜には帰るから」なんてこ とを言って、気軽に旅行できる時代がやってくるかもしれません。

<引用元>
『Science&Technology Journal』2005年12月 号3ページ
「小型超音速実験機の飛行実験に成功」

<原著者>
S&Tジャーナル編集部