探査機ホイヘンスついに着陸 人類が初めて見る土星衛星タイタンの素顔
2005年01月14日
2005年1月 14日は、地球以外の惑星 の衛星 に、探査 機が初めて着陸した記念すべき日になりました。ESA(欧州宇宙 機関)の小型探査 機ホイヘンスが、衛星 タイタンに無事着陸、多くのデータを送ることに成功したのです。
なぜタイタンなのか
土星
には現在までに37個の衛星
が発見されています。その中でも最大の大きさを誇るタイタンは、窒素
とメタン
からできている厚い大気をもっていることが特徴です。表面温度は-180℃と非常に低いですが、大気成分のメタン
は、生命が誕生するのに必要な炭
化水素
です。このようなタイタンの環境は、生命誕生以前の地球に環境が似ています。そこで、タイタンを観測することで、地球の生命誕生についてよりよく知ることができるのではないか、と期待されているのです。
しかしタイタンの大気は厚く、これまでは高度による大気成分の差や、雲
の下の地表を詳細に観測することはできませんでした。そこで、小型探査
機ホイヘンスをタイタンに降下、着陸させることで、タイタンの大気と地表、両方についてのデータを得ることにしたのです。探査
機ホイヘンスは、土星
探査
機カッシーニ
に搭載され、1997年10月
に打ち上げられました。
ホイヘンスに搭載された機器は、多くのデータを集める機能を持っています。例えばタイタンの大気は何からできているのか、高度によって密度
、圧力
、そして温度はどのくらい違うのか、大気中の微粒子
、大気の循環
はどのようになっているのか、そして表面が何からできているのかを調べます。電源がもつのは着陸後、長くても30分。ホイヘンスを準備した研究者たちは、打ち上げから7年の間、この時を待ち続けていたのです。

小型探査機ホイヘンス、衛星タイタンに着陸成功
小型探査
機ホイヘンスのミッションは、多くの手順を連続して成功させなければならない難しいものでした。
タイタンへの着陸のため、ホイヘンスが土星
探査
機カッシーニ
から切り離されたのは2004年12月
25日。ホイヘンスは時速2万1000km(秒速約6km)の猛スピードでタイタンの大気圏に突入しました。最初に、1つめのパラシュートを開きます。時速1400kmになるとこれを切り離し、次に直径8.3mのメインパラシュートを開き、さらに減速します。この間に、搭載された機器によって大気や音のサンプルが収集され、さらにカメラによる撮影が行われるのです。
地表が近づくとメインパラシュートが切り離され、着地用の小さなパラシュートが開き、タイタンの表面に着陸しました。衝撃やカメラについた泥から、ホイヘンスが着陸したのは、何らかの液体
で湿った場所だと考えられています。今回のミッションで、ホイヘンスは順調にその役目
を果たし、データをカッシーニ
経由で地球に送信しました。
しかし予定外のこともありました。ホイヘンスとカッシーニ
の間の通信プログラムに問題があったのです。予定されていた画像
700枚のうち約半分が失われてしまいました。しかしその他の探査
活動はすべて成功。ホイヘンスが送ってきたタイタンの地表の映像
は、科学者を興奮させるのに十分でした。
ホイヘンスが送ってきた写真には、液体
によって侵食
されたタイタン表面の地形が映し出されていました。液状のメタン
やエタンが表面を流れて複雑な地形を作っていると思われます。タイタンは表面に液体
が存在するめずらしい星なのです。
膨大なデータの解析には何ヶ月
もかかるとされていますが、2005年2月
には、直径が440kmもある巨大なクレーター
や、“猫がひっかいたような”まっすぐな平行な線状の地形が撮影されていたことも分かりました。この地形がどのようにできたのか、今後の解析が期待されています。

生命誕生の謎をとく鍵
タイタンについて、新たな事実もわかりつつあります。NASAは2005年4月
25日、探査
機カッシーニ
の観測によって、タイタンの大気には窒素
やメタン
だけではなく、複雑な有機物
が含まれていることがわかった、と発表しました。この有機物
は、タイタンの地表から1200kmも上空の大気上層部で発見されました。タイタンは非常に寒いため、このような物質は固まって、雨
と共に地表に落ちると考えられていたので、この発見は驚くものでした。
太陽
からの紫外線
や、土星
の磁場でエネルギー
を得た粒子
があれば、タイタンの大気からも有機物
を得ることができます。地球の場合、生物の素になる有機物
は、海で誕生したと考えられてきました。しかし近年は、宇宙
のどこか別の場所でできた有機物
が、彗星などで地球に運ばれた可能性も指摘されています。私たち生命の素は、いったいどこから来たのでしょうか? 衛星
タイタンの探索は、私たちのルーツを知る研究でもあるのです。





