科学ドキュメント

国産ロケットH-IIA、1年3か月ぶりの打ち上げ成功

2005年02月26日    斎藤浩司


6号機の打ち上げ失敗から1年3か月 ぶりに、H-IIAロケット7号機の打ち上げが成功。日本が独自の技術で開発した最新鋭のH-IIAは、大型衛星惑星 探査 機の打ち上げなど幅広い活躍が期待されています。


1年3か月ぶりの打ち上げ成功

2005年2月 26日午後6時25分、JAXA(宇宙 航空研究開発機構)の種子 島宇宙 センターからH-IIAロケット7号機が打ち上げられ、搭載された運輸多目 的衛星 新1号「MTSAT-1R」が無事静止軌道に投入されました。「ひまわり6号」と命名されたこの衛星 は、その名の示すとおり「ひまわり5号」の後継機として気象観測機能のほか、航空管制の機能も兼ね備える多目 的衛星 です。特に2003年5月 に「ひまわり5号」が引退してから、古くなった米国の衛星 を使って綱渡り的な運用を強いられていた気象観測は、画像 の解像度 向上や赤外センサーの拡充など、従来に比べて一層と強化されることになります。「ひまわり6号」の運用は6月 中には開始される予定です。


国産ロケットの開発

日本のロケット開発の出発点は、1955年、東京大学による全長わずか23センチのペンシル・ロケットの水 平発射実験でした。そして1970年には、ラムダ4Sロケットで日本初の人工衛星 「おおすみ」の打ち上げに成功し、日本は、旧ソ連、アメリカ、フランスにつぐ人工衛星 打ち上げ国となりました。さらにアメリカからの技術導入によりN-Iロケットを開発し、1975年から82年にかけて、7個の実用衛星 を打ち上げ、その後もN-IIロケット、H-Iロケットにより実用衛星 の打ち上げが続けられていました。

そこでさらに大型の実用衛星 の打ち上げを目 指し、外国の力 にたよらずに宇宙 活動が展開できるよう、1984年から10年をかけて開発されたのがH-IIロケットです。ロケットには単段式と多段式がありますが、多段式ロケットは、使い終わった燃料タンクを次々と切り離すことで、効率よく加速することができます。H-IIロケットは2段式ロケットで、第1段にはH-IIのために開発された大型で高性能のエンジンLE-7を、2段目 にはH-1ロケットで開発したLE-5の改良型LE-5Aエンジンを採用し、重量2t(トン)級の静止衛星 を打ち上げることができます。性能、安全性や信頼性の面ではすぐれたロケットでしたが、1基あたりの打ち上げに190億円と、諸外国に比べて2倍以上もかかっていました。


H-IIからH-IIAへ

そのため次のH-IIAロケットでは、打ち上げコストを半分以下の85億円に抑えることが目 標とされました。H-IIAロケットは、全長53メートル、搭載貨物を除いた本体重量が289tの、やはり2段式ロケットです。取りつける固体 ロケットブースター(SRB)、固体 補助ロケット(SSB)の数によってバリエーションを増やすことができ、重量の異なる衛星 に対応するなど、さまざまな打ち上げが可能になっています。

大幅な設計の簡素化により信頼性の向上や、作業効率の向上、製造作業・打ち上げ作業の効率化がはかられています。たとえばエンジンについてみてみると、第1段のエンジンはLE-7エンジンを改良したLE-7Aが使われています。これは部品点数が少なく、かつ溶接する部分も少ないので、製造しやすく、信頼性も向上しています。第2段のエンジンも、LE-5Aをさらに改良し推進力 を向上させたLE-5Bが使われました。

6号機打ち上げ失敗を受けて

H-IIAの1号機は、2001年8月 に打ち上げられ、以降、2003年3月 の5号機までは連続して成功していました。ところが2003年11月 29日の6号機は、固体 ロケットブースターの切り離しに失敗し、打ち上げから約11分後に地上からの指令で爆破されました。通常であれば、固体 ロケットブースターは打ち上げ後約100秒間燃焼 し、2本合わせて約460トンの推力 を発生 させ、その後それぞれ第1段機体から分離されます。ところが6号機では、右側の固体 ロケットブースターが分離されませんでした。原因は、ノズルの設計ミスのため壁面に穴があき、そこから燃焼 ガスが漏れて分離機能に異常が発生 したと特定されました。

JAXAでは、この原因究明を受けて欠点を克服するために実験を重ね、ノズルの形状を新しくするなどの改良を行い、さらにロケット全体の再点検を行いました。そして万全を期して7号機の打ち上げに臨んだのです。

日本の宇宙開発の基盤として

今回の成功で、日本の大型ロケットの打ち上げが再開されました。今後はH-IIAを使った陸域観測技術衛星 ALOSや 周回衛星 SELENE、宇宙 ステーションへの補給機などの打ち上げが計画されています。

これらの最先端テクノロジーを駆使した宇宙 開発は、科学的な探求だけでなく、そこで得られた技術はさまざまな分野に応用されています。人工衛星 を利用した放送や通信は防災や暮らしに密着した働きをしていますし、気象をはじめとした宇宙 からの地球観測は、環境問題への取り組みにもつながります。

このような役割を担う日本の宇宙 開発の基盤として、H-IIAロケット打ち上げ成功が与えるインパクトは大きいといえるでしょう。