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ヒメヤママユ

2008年10月31日高嶋清明

雨 模様(あめもよう)の一日、夕方になって日が差してきました。何かいないかと林の中を歩いてみたところ、サクラの幹にヒメヤママユというガを見つけました。開長(かいちょう)*は9cmほどで、ガとしては大きい方です。でも、真夏に見られるヤママユガよりは一回り小型です。そのため、ヒメ(姫=小さい)をつけて、ヒメヤママユとよばれています。

ヒメヤママユは秋のガです。卵 (たまご)で冬を越(こ)し、春になって孵化 (ふか)した幼虫 (ようちゅう)は、梅雨 (つゆ)の頃(ころ)地面におりて蛹(さなぎ )になり、秋になって羽化 します。ヒメヤママユをはじめ、ヤママユガの仲間は、成虫 になってから何も食べません。口は退化して無くなっています。そのため、あまり長くは生きることができません。ですから、秋のごく短い期間にいっせいに羽化 し、オスとメスが出あい、子孫を残します。

見つけたヒメヤママユは、翅(はね)はやわらかそうに見えました。まだ羽化 して間もないようです。確かめたくなって、そっとさわってみると、ヒメヤママユはびくっとして翅を開き、同時にコーヒー牛乳のような色のおしっこをしました。私も驚(おどろ)きましたが、ヒメヤママユの方がもっと驚いたに違(ちが)いありません。チョウやガは、羽化 して翅をのばした後、必ずおしっこをします。これは、翅をのばす時に使った水 分の残りです。もう少し時間がたてば、自分でおしっこをしたはずですが、余計なことをして驚かせてしまったようです。

同時に、ヒメヤママユは、もう1つの面白い姿(すがた)を見せてくれました。それは翅の目 玉模様(めだまもよう)です。はじめは、後翅(うしろばね)が前翅(まえばね)の下にたたまれていて見えませんでしたが、私が指先でそっとさわると、翅全体をパッと大きく開きました。すると、2つだった目 玉模様が、一瞬(いっしゅん)のうちに写真のように4つの目 玉模様に変わったのです。ヒメヤママユは、自分の身に危険(きけん )を感じた時このようにするのですが、鳥などの天敵 も、きっとびっくりするでしょう。気味が悪くなって、食べるのをやめてしまう天敵 もいるかも知れませんね。

*開長(かいちょう):翅を開いた時の左右の長さ

文 高嶋清明
高嶋清明(たかしま きよあき) 1969年山形県生まれ。昆虫写真家 。 昆虫写真家海野和男氏の助手を経て2008年4月独立。 山形県庄内地方に移り、新たなフィールドで活動中。 昆虫や植物を中心とした写真撮影のほかビデオ撮影や自然音録音も手がける。

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