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ジャコウアゲハの蛹

2010年02月12日高嶋清明

川原の土手(どて)にジャコウアゲハの蛹(さなぎ )を見つけました。土手にはえたクワの枝(えだ)にいくつもついています。ジャコウアゲハの幼虫 (ようちゅう)はウマノスズ クサというツル植物の を食べます。今は におおわれた土手ですが、夏のあいだにはウマノスズ クサがたくさん繁(しげ)っていたのがわかります。蛹はこのまま冬を越(こ)して、5月 のはじめくらいに羽化 (うか)して成虫 になります。

色を失(うしな)ったような冬の景色(けしき)のなか、ジャコウアゲハの蛹はよく目 立(めだ)ちます。雪 の上に顔を出した数少ない枝に堂々(どうどう)とついていて、オレンジ色の鮮(あざ)やかな模様(もよう)まであり、さがすのに苦労(くろう)しません。これでは、まちがいなく鳥などの にも入ってくるはずです。危(あぶ)なくはないのでしょうか。

ウマノスズ クサは有毒物質(ゆうどくぶっしつ)をふくむ植物です。それを食べるジャコウアゲハもまた体内(たいない)に有毒物質を持ちつづけます。鳥たちもちゃんとそれを知っていて、見つけても食べようとはしないのです。夏の蛹は鮮やかな黄色でさらによく目 立ちます。この目 立つ色は、毒があることをみずから宣伝(せんでん)する警戒色(けいかいしょく)と考えていいでしょう。

ジャコウアゲハの蛹は「お菊(きく)虫」というあだ名がついています。怪談(かいだん)「番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)」の舞台(ぶたい)となった井戸(いど)にこの蛹が大量(たいりょう)についたことから、そう呼ばれるようになったと伝(つた)えられています。蛹の形も、後ろ手にしばられた女性のすがたに似(に)ているとも言われています。鳥だけでなく、われわれ人間もこの蛹には不気味(ぶきみ)なイメージを持ってしまうようです。

文 高嶋清明
高嶋清明(たかしま きよあき) 1969年山形県生まれ。昆虫写真家 。 昆虫写真家海野和男氏の助手を経て2008年4月独立。 山形県庄内地方に移り、新たなフィールドで活動中。 昆虫や植物を中心とした写真撮影のほかビデオ撮影や自然音録音も手がける。

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