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マクラギヤスデ

2010年02月19日尾園暁

寒(さむ)い日(ひ)が続(つづ)く中(なか)、虫(むし)たちとの出会(であ)いも少(すく)なくなっています。しかしきっと、寒さを避(さ)けてどこかにかくれているはずです。雑木林(ぞうきばやし)に転(ころ)がった、大(おお)きな朽木(くちき)をひっくり返(かえ)してみると、白(しろ)くて細長(ほそなが)い生(い)き物(もの)がゆっくりと動(うご)きました。近(ちか)づいてよく見(み)ると、どうやらマクラギヤスデのようです。

マクラギヤスデは大きい個体(こたい)で2cmほどのヤスデの一種(いっしゅ)ですが、この個体は1cmほどしかない幼虫 (ようちゅう)でした。成虫 (せいちゅう)はもっと黒(くろ)っぽい色(いろ)をしています。ヤスデは肢(あし)がたくさん生(は)えていて、よくムカデと間違(まちが)えられますが、まったく別(べつ)の生物(せいぶつ)です。ムカデがほかの生物をとらえて食(た)べる肉食性(にくしょくせい)なのに対(たい)し、ヤスデは落葉 (おちば)やそこに生(は)える菌類 (きんるい)を食べて暮(くら)らし、生態系 (せいたいけい)の中では分解者 (ぶんかいしゃ)の役割(やく わり)を果(は)たしています。ムカデのように噛(か)みついて、人(ひと)に危害(きがい)を加(くわ)えることはありません。

多(おお)くのヤスデは、つやのあるつるっとした外見(がいけん )をしていますが、このマクラギヤスデはつやがなく、すこし変(か)わった姿です。まるで線路(せんろ)の下(した)に規則(きそく)正(ただ)しく並(なら)べられた木(き)のように見(み)えませんか? 実(じつ)は、マクラギヤスデのマクラギ(枕木)とは、線路の下に並べる木のことを指(さ)しているのです。名付(なづ)けた人は想像 力 (そうぞうりょく)の豊(ゆた)かな人だったのですね。

マクラギヤスデは、関東(かんとう)から西(にし)の地域(ちいき)に広(ひろ)く分布(ぶんぷ)していて、珍(めずら)しい生物ではありません。一見(いっけん )何(なに)もいないように見える冬の雑木林でも、生物たちは見えないところでひっそりと暮(く)らしているのですね。

文 尾園暁
尾園暁(おぞの あきら) 昆虫写真家。 大阪生まれ。おさないころ、両親に買ってもらった図鑑をきっかけに、昆虫の魅力にとりつかれる。現在は神奈川県南部の湘南(しょうなん)に在住。地元と小笠原諸島(おがさわらしょとう)を中心に、虫たちを撮影する日々を送っている。

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