
2010年07月16日尾園暁
草(くさ)むらの中(なか)からブンブン、ブンブンと低(ひく)い羽音(はおと)が聞(き)こえてきました。はっとして音(おと)のする方向(ほうこう)を見(み)ると、黒(くろ)くて大(おお)きなハチが何(なに)かを運(はこ)んでいます。
近(ちか)づいて観察(かんさつ)してみると、運んでいるのは大型(おおがた)のクモです。そしてクモを運んでいるのは、オオモンクロベッコウというハチでした。
オオモンクロベッコウは、ベッコウバチ(クモバチ)と呼(よ)ばれるハチの一種(いっしゅ)で、大きさは3cmほどあります。和名(わめい)のオオモンクロベッコウは大きな斑紋
(はんもん)をもつ黒いベッコウバチという意味(いみ)で、体(からだ)や翅(はね)はほぼ真(ま)っ黒ですが、腹部(ふくぶ)に一対(いっつい)の橙色(だいだいいろ)の斑紋
があることが名前(なまえ)の由来(ゆらい)です。
ベッコウバチの仲間(なかま)は、アシナガバチやミツバチのような集団生活(しゅうだんせいかつ)はせず、それぞれの個体(こたい)が単独(たんどく)で生活(せいかつ)しています。オスと出会(であ)い、交尾(こうび)を終(お)えたオオモンクロベッコウのメスは、地面(じめん)に穴(あな)を掘(ほ)って簡単(かんたん)な巣(す)を作(つく)ったあと、あちこち飛(と)び回(まわ)ってクモを探(さが)し、捕(つか)まえて巣の中に入れます。このとき、クモが暴(あば)れないように毒針(どくばり)で刺(さ)しますが、殺(ころ)してしまうわけではなく、麻酔(ますい)をかけて動(うご)かないようにします。こうしておけば、クモは腐(くさ)ることなく長持(ながも)ちするのです。そしてメスは巣穴(すあな)に入れたクモに卵
(たまご)を産(う)みつけ、卵
から孵化
(ふか)した幼虫
(ようちゅう)は、麻酔が効(き)いて動けないクモを食(た)べて育(そだ)ちます。やがてクモを食べてじゅうぶんに大きくなった幼虫
は蛹(さなぎ
)となり、羽化
(うか)をして巣穴の外(そと)に出てくるのです。
地面を黒っぽいハチが歩(ある)き回っていたら、よく観察してみましょう。それは捕まえたクモをくわえて巣穴の方へと運んでいる、オオモンクロベッコウかもしれません。