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歌でプロポーズするおす鳥は、脳の幸せを感じる部分が活発になっている

2008年11月03日    橘 悠紀(科学ライター)

わたしたちは、おいしいものを食べているときや、好きな人といっしょにいるときなどに、幸せを感じますね。幸せを感じるとき、脳 (のう)はどのようにはたらいているのでしょうか。キンカチョウという鳥は、おすが、めすに、歌でプロポーズ(結婚を申しこむ)します。そのときの、おすの脳 のはたらきを調べた結果、脳 の幸せを感じる部分が活発になっていることがわかりました。

写真1:キンカチョウ めす(左)、子ども(中)、おす(右)  提供:理化学研究所脳科

キンカチョウとは

キンカチョウは、全長約10cm、スズ メの仲間で、オーストラリアの林などにすんでいます。おすは胸にしま模様(もよう)、ほほにオレンジ色の模様がありますが、めすにはありません。写真1で確かめてみましょう。(写真1)

キンカチョウのおすは、恋の歌でプロポーズする

キンカチョウのおすは、2種類の歌を歌います。この2種類の歌はよく似ていて、音のデータを取り分析(ぶんせき)すると、ほとんど変わりません。

ふつうの歌:めすがいないときに歌います。プロポーズの練習だと考えられます。
恋の歌:めすに出会うと、プロポーズする意味で、恋の歌を歌います。

恋の歌を歌うときの脳のはたらきをくわしく知りたい

今回の研究を行った理化学研究所脳 科学総合研究センターのニール・へスラー先生の研究チームは、これまで、鳥の歌などについて研究をしてきました。声を出すことを学習する動物を研究することで、人間が言葉 を話すことになったきっかけや、人間が言葉 を記憶(きおく)していくときの脳 のはたらきなどを明らかしたいというのが研究の目 的です。これまでの研究から、キンカチョウのおすが恋の歌を歌っているとき、脳 が活発にはたらくことはわかっていました。今回さらに、恋の歌を歌うときの脳 のはたらきを、くわしく知りたいと思い、研究を進めました。

図1:キンカチョウのおすを3つのグループに分けて行った実験。ふつうの歌、恋の歌を歌うときの脳のはたらきを調べる。 *クリックすると大きくなります。

キンカチョウを、3つのグループに分けて実験をする

研究チームは、キンカチョウのおすを3つのグループに分けて、それぞれ実験を行い、脳 のはたらきを調べました。

3つのグループに行った実験
グループ1.おす1羽をかごに入れ、ふつうの歌を歌わせ、脳 のはたらきを調べる。
グループ2.おす1羽をかごに入れ、めす2羽を見せて恋の歌を歌わせ、脳 のはたらきを調べる。めすを2羽見せるのは、おすの好みによって、実験の結果が変わってしまうのを防ぐため。
グループ3.おす1羽をかごに入れ、めす2羽を見せるが、恋の歌を歌いそうになるとじゃまをして歌わせない。脳 のはたらきを調べる。
(図1)

グループ2の実験のようすは、動画でも見られます。
はじめに、おす1羽をかごに入れ、ふつうの歌を歌わせる。次に、このおす1羽(右側)にめす2羽(左側)を見せて、恋の歌を歌わせる。このときの、脳 のはたらきを調べます。

図2:キンカチョウのおすを3つのグループに分けて実験したときの、脳のはたらきのちがい。 *クリックすると大きくなります。

実験の結果、恋の歌を歌おうとする気持ちが、おすを幸せにさせることがわかった

実験の結果は、次のようになりました。
グループ1.変化なし
グループ2.脳 の幸せを感じるところが活発にはたらいた。
グループ3.脳 の幸せを感じるところが活発にはたらいた。
このように、2と3のグループはほぼ同じ結果になったのです。(図2を見ると、2、3の差は少しありますが、特別な理由があって出た差とはいえません)
(図2)

実験の結果から、キンカチョウのおすは、めすへの恋の歌を歌っている時、幸せだと感じていること、実際に恋の歌を歌わなくても、歌おうとするだけでも幸せだと感じていることがわかります。へスラー先生は「グループ2、3の結果はほとんど同じです。実際に恋の歌を歌うかどうかより、おすがめすを見て恋の歌を歌おうとする気持ちをもつことが幸せだと感じるかどうかにかかわっているのです」と言います。

脳が幸せを感じるしくみを、さらにくわしく調べていきたい

今回の研究で、鳥が恋の歌を歌うときや、実際に歌わなくても歌おうとするときに幸せだと感じることがわかりました。今後、そのほかのさまざまな行動をするときの脳 のしくみを調べていけば、どんなときに幸せと感じるかが、よりくわしくわかります。また、これまでの研究で、脳 の幸せを感じるしくみは、鳥と人間では似ていることがわかっています。ですから、人間も、どんなときに幸せを感じるか、またそのときに脳 がどのようにはたらいているかを知る手がかりにもなります。ヘスラー先生は、「今後は、おすが歌う恋の歌を聞いているときのめすの脳 のはたらきも調べ、脳 のしくみをさらにくわしく研究していきたいと思います」と言います。

写真2:キンカチョウのおすが恋の歌を歌うときの脳のはたらきを研究したニール・ヘスラー先生。 *クリックすると大きくなります。

へスラー先生からのメッセージ

「自然の中で生活している動物たちをできるだけ近くで観察してみてください。そうすることで、どうしてこ んなことするのだろうと か、何をしているのだろうと か、次々に疑問がわいてくるでしょう。そんな疑問をもち、その答えは何だろうかと考えたり観察したりすることで、とても楽しい時間を過ごせるでしょう」
(写真2)

めすにプロポーズすることで、キンカチョウのおすが幸せを感じているとは、鳥も人間に似ていて、おもしろいですね。


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