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親ウナギをつかまえることに成功、日本の調査チーム

2008年11月10日    橘 悠紀(科学ライター)

かば焼きなどにして食べるウナギは、わたしたちになじみの深い魚ですが、同時に、なぞの多い魚です。これまで、卵 (たまご)を産む前後の親ウナギは、おす・めす共につかまえられたことがなく、その姿(すがた)や、どこで卵 を産んでいるかなどもわかっていませんでした。今回、日本の調査チームが、世界で初めて親ウナギをつかまえることに成功しました。今後、ウナギが産卵 (さんらん)をする場所(=ウナギのふるさと)など、さまざまなウナギのなぞを明らかにする手がかりとなりそうです。
(写真1)

写真1:6月4日につかまえた、おすの親ウナギ、約50cm。川や海にいるウナギは黒い色をしているが、このウナギは茶色をしている。  提供:水産庁・水産総合研究センター
写真2:ウナギの子どものシラスウナギ、約5cm。ウナギは、海で生まれた後、海流に乗って日本、台湾、中国などにやってきて、川を上る。 提供:水産総合研究センター *クリックすると大きくなります。

ウナギは、海で生まれ、川・湖で成長、海で産卵

ウナギの一生は次のようになります。
1.シラス ウナギ(子どもの時の呼び名)(写真2) 海で生まれ、川を上る。
2.ウナギ(成長) 川や湖で成長し、3~7年生きる。
3.親ウナギ(さいご) 川を下り、海で産卵 する。
(図1)

図1:ウナギは海で生まれ、川を上り、川や湖へ向かう。川や湖で成長したウナギは、川を下り海に向かい、海で産卵する。 *クリックすると大きくなります。

だれも見たことがなかった、親ウナギが卵を産む姿

これまで、親ウナギが海で卵 を産むことはわかっていました。しかし、海へ向かったウナギがどこへ行くのか、どんな環境(かんきょう)で卵 を産むのか、卵 を産む親ウナギがどんな姿(すがた)をしているのかなど、これまで、まったくわかっていませんでした。日本では、この30年ほど親ウナギをつかまえる調査が行われていましたが、親ウナギを見つけることができませんでした。ヨーロッパでは、100年ほど前から調査(ちょうさ)が行われていましたが、親ウナギは、まったくつかまえることができませんでした。

また、人間がウナギを飼うことには成功(せいこう)していますが、人間が育てて、親ウナギに自然に卵 を産ませることには成功していません。そのため、卵 を産む親ウナギの姿はわかっていませんでした。

図2:これまで、生まれたばかりのウナギがマリアナ海域で見つかっていたことから、親ウナギはマリアナ海域あたりで産卵するのではないかと考えられていた。しかし、はっきりとしたことは、わかっていなかった。 *クリックすると大きくなります。

親ウナギはマリアナ海域あたりにいるのではないか、日本チームのちょう戦

水 産庁と水 産総合(そうごう)研究センターの共同チームは、2008年5月 20日~6月 15日と8月 20日~9月 11日に、日本から南に約3000kmはなれたマリアナ海域で調査を行いました。目 的は、親ウナギをつかまえることです。この辺りは、これまでの調査で、生まれてすぐの赤ちゃんウナギ(シラス ウナギより前の段階)が発見されており、親ウナギがいる可能性(かのうせい)が高いと考えられていたのです。(図2)





つかまえる方法を、これまでと変えた日本チーム

これまでの調査では、ライトを使って光でおびき寄せる方法や、かごを使ってつかまえる方法などが試されていましたが、いずれも失敗に終わっていました。 そこで、今回の調査では、船から口の大きさが50m×60mあるあみを海に投げ入れて引く方法をとりました。大きなあみで、海中の広い範囲(はんい)を引き、親ウナギをつかまえることをめざしたのです。

写真3:6月4日につかまえた、おすの親ウナギの腹の中。精巣(せいそう)(卵を授精させるための精子をつくるところ)が発達していることがわかった。 提供:水産庁・水産総合研究センター *クリックすると大きくなります。

ついに親ウナギをつかまえることに成功した日本チーム

今回、マリアナ海域で、つかまえることができた親ウナギは、以下のとおりです。
6月 3日、4日 水 深200~350m付近 親ウナギおす2尾(び)(写真3)
8月 31日 水 深200~350m付近 親ウナギめす(卵 を産んだ後と考えられる)2尾
つかまった4尾の親ウナギは、目 が大きく、体の色が茶色でした。長い調査の歴史で、親ウナギがつかまったのは世界で初めてのことでした。

図3:今回、親ウナギをつかまえることができたので、ウナギのふるさとの場所がわかった。 *クリックすると大きくなります。

マリアナ海域に親ウナギがいるのではないか、という日本チームの見こみは正しかったのです。ウナギが生まれてから、成長、産卵 までの流れを地図上に表すと、図3のようになります。(図3)









親ウナギがつかまった時の様子は、動画でも見られます。
動画1:6月 3日に、あみにかかったウナギが引きあげられました。調査員たちが、興奮(こうふん)気味に「ウナギだ」とさけん でいます。


動画2:あみにかかった親ウナギはまだ生きていました。水 そうに入れると、泳ぎだしました。


動画3:親ウナギは、しばらくすると死んでしまったため、解剖(かいぼう)されました。腹をさくと、中に精巣 (せいそう)があり、おすだということがわかりました。
提供:水 産庁・水 産総合研究センター


親ウナギの研究が、ウナギを増やすことにつながる

わたしたちが食べているウナギの多くは、川を上ってきたシラス ウナギをつかまえて、人間が食べられる大きさまで育てられたものです。しかし、近年、日本にやってくるシラス ウナギの数が減っています。ウナギを育てて数を増やせればいいのですが、自然に卵 を産ませることはできません。2003年には、ウナギから卵 を取り出し、人間の手でふ化させることに成功しましたが、成功する割合が低く、費用もたくさんかかります。今回の調査にたずさわった水 産総合研究センターチーフ研究開発コーディネーターの有元操(ありもとみさお)先生は、「今回つかまえた親ウナギや、そのふるさとの環境を研究し、どのような環境で親ウナギに成長し、卵 を産むのかがわかれば、人間の手でウナギを増やすことが期待できます」と言います。

写真4:親ウナギを世界で初めてつかまえた日本の調査チームの一員、水産総合研究センターの有元操先生。 *クリックすると大きくなります。

有元先生からのメッセージ

「ウナギなどの魚は、わたしたち人間が食べ、生きていくうえで、自然からの大切なおくり物です。人間の都合でたくさんとったり、環境を破壊(はかい)したりすれば、数が減り、わたしたち人間も困ることになります。ですから、ウナギもバランスよく利用していかなければなりません。未来の子どもたちにも、今までどおり、ウナギを食べられるようにしてあげたいですね」(写真4)。

写真5:ウナギのかば焼き。わたしたち日本人にとって、たいへん身近な食べ物。元気が出るといわれ、夏によく食べられる。 *クリックすると大きくなります。

これからもおいしいウナギが食べられるよう、ウナギのなぞを明らかにするよう研究を進め、ウナギやウナギがく らす環境を守っていきたいものですね。
(写真5)









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