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今週のトピックス

日本最古、約5億600万年前の地層を発見

2008年11月24日    橘 悠紀(科学ライター)

みなさんの中には、理科の授業で、学校のそばの地層 (ちそう)を調べたことがある人がいるかもしれませんね。今回、茨城(いばらき)県日立(ひたち)市に、日本で最も古い、約5億600万年前の地層 があることがわかりました。この発見は、日本列島がどのようにしてできたのかを知る手がかりになります。(写真1)

写真1:茨城県日立市の地層。黄色の印がついている部分が、5億600万年前のものとわかった岩石。写真1の場所を遠くから撮(と)ったものは写真4。  提供:茨城大学 田切美智雄
図1:茨城県日立市の位置。 *クリックすると大きくなります。

子どものころから、自分の住んでいた日立市の地層に興味を持っていた田切先生

茨城大学の田切美智雄(たぎりみちお)先生は、茨城県日立市(図1)の出身で、子どものころから岩石や地層 に興味をもっていました。その後も興味を持ち続け、大学生になると、地質学(ちしつがく )という分野を研究するようになりました。地質学とは、岩石や地層 を研究し、その土地がいつごろどのようにできたかを調べる学問のことです。

写真2:地層ができた年代を調べる装置、シュリンプ。 提供:国立極地研究所 *クリックすると大きくなります。

1970年ころ、日立市の地層についてわかっていたこと

田切先生が、大学の卒業論文を書くために日立市の地層 を調査していた1970年ころ、日立市の地層 について次のような調査結果が出ていました。
・日立市の地層 は、変成岩 (へんせいがん)でできている。変成岩 とは、地下の深い所で、岩石が高温や高圧のためにその性質が変わったもの。
・当時、田切先生が研究していた日立市の変成岩 の地層 は、3億5000万年前ほど前にできたものだと考えられていた。理由は、近くの地層 から、3億5000万年前ほど前のサンゴ化石 が出ていたから。
(後の再調査で、この地層 はもっと古いものであることがわかりました)

写真3:日立市の地層の岩石から取り出したジルコン。1μmは、1000分の1mm。 提供:茨城大学 田切美智雄 *クリックすると大きくなります。

新たに開発された、岩石ができた年代を正確に調べられる装置

その後、岩石の年代を高い精度で測定できるシュリン プ(SHRIMP)という装置(そうち)(写真2)がオーストラリアで開発され、1996年と1999年に、日本に1台ずつ導入されました。この装置では、次のようにして岩石ができた年代を分析(ぶんせき)します。

図2:岩石ができた年代を調べる方法。 *クリックすると大きくなります。

岩石の中には、ジルコンという物質がふくまれています(写真3)。また、ジルコンには、ウラン という物質がふくまれています。ウラン は、長い年月 の間に、ほかの物質に変わり、最後には (なまり)に変わる性質があります。そこで、岩石の中にふくまれているウラン と鉛 の割合を正確に調べ、その岩石がいつごろできたかを調べるのです。現在、シュリン プでの分析でわかっている世界最古の地層 は、グリーンランド、オーストラリア(図5で確認できます)にある2か所、どちらも約40億年前のものです。(図2)

写真4:日本で最も古い地層だとわかった日立市の場所。写真4の場所を近くから撮ったものは写真1。 *クリックすると大きくなります。

シュリンプで日立市の地層の再調査を行う。500個の岩石を集め分析

田切先生は、日立市の地層 ができた年代を正確に知りたいと思い、2003年から茨城大学の学生や、シュリン プのある国立極地研究所(東京都)と協力 し、日立市の地層 (写真4)の再調査を始めました。ところが、ジルコンは、岩石の中にほんのわずかしかふくまれていません。分析のためには、たくさんの岩石が必要です。田切先生たちは、日立市内の500か所を回り、合計500個の岩石を集めました。その岩石からジルコンを取り出して分析しました。

図3:分析の結果、ウランと鉛の割合が12.2:0.058で、約5億600万年前、日本最古の岩石であることがわかった。 *クリックすると大きくなります。

岩石を分析した結果、日立市の地層は日本最古であることがわかった

分析の結果は以下のとおりです。
ウラン :鉛 =12.2:0.058
約5億600万年前の岩石(日本最古)
(図3)

図4:現在の地球にある6つの大陸。いったいどのようにしてできたのだろう。 *クリックすると大きくなります。

これまで日本の地層 から取れたどの岩石よりも鉛 の割合が多く、日本最古の岩石だということがわかりました。以前、3億5000万年前の地層 だという推測の理由となった、サンゴ の化石 が出た地層 より、もっと古い時代にできた地層 だったのです。それまでに日本で最も古い地層 と推定されていたのは、岐阜(ぎふ)県の飛騨(ひだ)山脈(図1で確認できます)のもので、4億9000万年~4億4000万年前のものでした。今回わかった日立市の地層 は、それより古いもので、日本最古だったのです。この地層 と、サンゴ の化石 が出た地層 は、場所は近くても、できた年代には1億5000万年ほどのちがいがあったのです(図4)。

図5:現在の地球にある6つの大陸。いったいどのようにしてできたのだろう。 *クリックすると大きくなります。

日本列島がどのようにしてできたかを知る手がかりに

現在、地球には、ユーラシア、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、オーストラリア、南極大陸の6つの大陸があります(図5)。しかし、大陸は、ずっと同じ場所にあるのではなく、少しずつ動いていると考えられています。日本列島も、あちこちから動いてきた陸地が集まって現在のような姿(すがた)になったと考えられていますが、くわしいことはまだわかっていません。今回の発見のように、各地の地層 ができた正確な年代を知ることは、日本列島がいつごろ、どのようにしてできたかを知る重要な手がかりになります。田切先生は、「今回の発見をきっかけに、ほかの地層 の岩石を分析すれば、さらに古い地層 が見つかるかもしれません」と言います。

写真5:日立市の岩石を分析し、日本最古の地層であることを発見した、茨城大学の田切美智雄先生。 *クリックすると大きくなります。

田切先生からみなさんへメッセージ

「わたしは日立市の出身です。小さなころから山をかけ回って遊び、中学生のときは早朝から山登りをしていました。これまで40年間、地質学の研究を続けてこ られたのは、岩石や地層 が好きという気持ちがあったからです。みなさんも、勉強でも趣味でもけっこうですから、自分の好きなことにとことん打ちこんでみてください」(写真5)




今後、岩石の分析が進み、日本列島や地球の大陸の歴史が、よりくわしく解明されることでしょう。


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