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今週のトピックス

じゃばらに花粉症の症状をやわらげる効果があった

2009年04月27日    橘 悠紀(科学ライター)

今の時期、花粉症 (かふんしょう)の人は、くしゃみや鼻 水 が止まらなくなるなど、つらいですね。今回、日本のある場所でしかとれない、じゃばらというかんきつ類の果汁に、花粉症 の症状(しょうじょう)をやわらげる効果があることがわかりました(写真1)。

写真1:じゃばらの実。今回、じゃばらの果汁に、花粉症の症状をやわらげる効果があることが確認できた。

花粉症は、花粉によって引き起こされるアレルギー

人間には、体の中にほこりなどが入ろうと すると、それを防ごうとするはたらきがあります。ところが、その反応 が強く出てしまうことがあります。これを、アレルギー といいます。アレルギー は、ほこりなどのほか、そばや卵 (たまご)などの食べ物が原因となることもあります。スギやヒノキなどの花粉 が体内に入ることで起きるアレルギー の症状を花粉症 といいます。花粉症 になると、くしゃみや鼻 水 、 のかゆみ、 づまりなどの症状が出ます。

図1:じゃばらの産地である和歌山県北山村、じゃばらの花粉症への効果を調査した湊口先生の出身地である和歌山県新宮市。 *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

花粉症の対策はいろいろあるが、つらい思いをしている人は多い

花粉症 への対策(たいさく)は、マスクをして花粉 をなるべく体内に入れないようにすることが効果的です。また、症状が出たときには、薬によって体内のアレルギー 反応 をおさえ、くしゃみや鼻 水 の症状をやわらげる治療(ちりょう)を行います。しかし、花粉症 の治療薬は、ねむ気や口の中のかわきなどの副作用を引き起こすものもあります。花粉症 の対策や治療はいろいろありますが、つらい思いをしている人は数多くいます。日本では、約30%の人が花粉症 だと推測され、毎年、スギやヒノキの花粉 が飛ぶ2月 から5月 ころになると、花粉症 の症状になやまされる人が数多く見られます。

写真2:じゃばらの実と、実を切ったところ。 *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

北山村だけで栽培されている、じゃばら

和歌山県の北山村(図1)というところがあります。ここだけで栽培されている、じゃばらというかんきつ類があります(写真2)。かんきつ類というのは、ミカンやユズのように、果汁に酸 味があるという特徴(とくちょう)があります。北山村では、昔からじゃばらを正月 料理に使っていました。ちょっと変わった名前ですが、これは
「じゃ」(邪)(有害なこと、さまたげになること、よくないもの)を
「はら」う
と考えられていたところからついたといわれています。




じゃばらを飲んだ人の声、「花粉症の症状が軽くなった」

じゃばらの果汁は、まろやかな酸 味があり、焼き魚やあげ物などにかけると、料理の味をひきたて、食欲が増します。そこで、北山村では、じゃばらの果実 や果汁ドリン クなどを、特産品として売り出していました(写真3)。それらを買った人から、「花粉症 の症状が軽くなった」という意見がいくつか寄せられました。村で、何人かにじゃばらの果汁ドリン クを飲んでもらい、花粉症 に効果があったかどうかを聞いたところ、約半分の人から花粉症 に対する効果があったという回答がありました。

写真3:北山村でつくられている、じゃばらの果汁製品。 *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

「花粉症の症状が軽くなった」、研究者に調査をお願いする

そこで、北山村は、じゃばらが本当に花粉症 に効果があるのかを科学的に調べるため、岐阜大学の湊口信也(みなとぐちしんや)先生にお願いしました。湊口先生は、気管 などの呼吸器 や、心臓血管 などの循環器(じゅんかんき)の病気の研究を専門としていますが、先生自身が和歌山県新宮(しんぐう)市(図1)の出身という縁(えん)もあったため、じゃばらについての調査を引き受けることにしました。

調査:じゃばらを飲む前と後での症状を比べる

研究チームは、花粉症 の症状がある29~59歳(さい)の15名(男性9名、女性6名)に、次のような調査に協力 してもらいました。
1.じゃばら果汁を飲む前に、花粉症 の症状についての質問に回答してもらう。
2.5mlのじゃばら果汁を、朝夕の2回、2週間以上飲んでもらう。
3.飲んでから2週間以内に、花粉症 の症状についての質問に回答してもらう。
4.じゃばら果汁を飲む前の回答、飲んだ後の回答を比べる。

■質問項目
・症状に関する質問(6項目 )
  1.水 っぱな
  2.くしゃみ
  3.鼻 づまり
  4.鼻 のかゆみ
  5.目 のかゆみ
  6.涙目 (なみだめ)

・花粉症 の症状が生活に与える影響についての質問(31項目 )
1.勉強、家事、仕事 の支障、2.車の運転に支障、3.食欲不振、4.精神集中不良、5.屋外生活(運動、旅行など)の楽しみに支障、6.外出の制約、7.性生活の支障、8.他人とのつきあいに支障、9.電話に支障、10.他人との会話に支障、11.食事に不便、12.友人訪問に支障、13.面接に不便、14.読書に不便、15.新聞を読むのに不便、16.考えがまとまらず、17.計算のまちがえ、18.パソコンのまちがえ、19.記憶力 低下、20.判断力 低下、21.睡眠障害、22.だるい、23.疲れやすい、24.気分が晴れ ない、25.いらいら感、26.不安感、27.ゆううつ、28.生活充実感の低下、29.幸福感の低下、30.疎外感(そがいかん)、31.他人が冷たい

上記の質問について、「症状なし(1点)」、「軽い(2点)」、「中くらい(3点)」、「重い(4点)」、「非常に重い(5点)」のどれかで回答してもらいました。各項目 の飲む前の飲んだ後の平均点を計算して比べました。

図2:じゃばら果汁を飲む前と、飲んだ後で、花粉症の症状がどう変化したかの結果。点数が小さいほど、花粉症の症状が軽いことを示している。 *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

調査結果:花粉症の症状が軽くなり、生活への影響も改善された

じゃばら果汁を飲む前と比べて、続けて飲んだ後では、症状の6項目 全部で点数が1点以上低下していて、花粉症 の症状が軽くなっていることがわかりました。(図2)

●特に軽くなった症状
  水 っぱな   飲む前 4.0→飲んだ後 2.2
  くしゃみ   飲む前 3.7→飲んだ後 1
  涙目      飲む前 3.1→飲んだ後 1.9

さらに、花粉症 の症状が生活に与える影響の数値を比較すると、31項目 中31項目 で数値が低下し、花粉症 の症状が生活に与える影響が改善されていました。

●特に改善された項目
  電話に支障            飲む前 2.4→飲んだ後 1.3
  新聞を読むのに不便        飲む前 3.1→飲んだ後 1.7
  勉強、家事、仕事 の支障      飲む前 3.8→飲んだ後 2.1

どうしてじゃばらが花粉症の症状の改善に効果があったのか

では、どうしてじゃばらが花粉症 の症状の改善に効果があったのでしょう。湊口先生は、「じゃばらには、ナリルチンというものが多くふくまれています。ナリルチンは、アレルギー 反応 をおさえるはたらきのあるフラボノイドの成分です。ナリルチンが多いことが、花粉症 の症状をおさえることと関係があるのではないかと思います」と言います。フラボノイドは、かんきつ類に多くふくまれていますが、じゃばらには、ユズと比べて、6倍のナリルチンがふくまれています。さらに研究が進むことが期待されます。

じゃばらは、花粉症に効果があり、副作用もない

今回の調査で、じゃばらが、花粉症 の症状をやわらげ、生活の改善に効果がありそうだということがわかりました。じゃばらは、昔から利用されていた天然のかんきつ類なので、副作用がなく、安全に使えます。じゃばらのどの成分が、どのようなしくみできくのかがわかれば、花粉症 の症状をおさえる薬品に利用できるかもしれません。

写真4:じゃばらが花粉症の症状を軽くすることを調査で明らかにした、岐阜大学の湊口信也先生。 *クリックすると大きくなります。さらにマウスをおしながら自由に動かせます。

湊口先生からみなさんへのメッセージ

自然の中には、まだわたしたちが知らないことがたくさんあります。花粉症 も自然の花粉 によって引き起こされる病気ですが、それをおさえる効果があるものも自然の中にあるにちがいありません。じゃばらもそのひとつではないでしょうか。みなさんも、自然に興味を持って、新しい発見をしてみましょう(写真4)。





多くの人がなやんでいる花粉症 の症状が改善されることにつながるといいですね。


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