かがくナビ

  • 初めての方
  • 文字サイズ
  • 大
  • 中
  • 小
  • home
  • 科学ニュース
  • 自然だより
  • 特派員レポート
  • 科学ムービー
  • ブックナビ
  • ナビコラム
  • 特集
  • ブログ
  • ナビのひろば

HOME > 読む > 科学ニュース

今週のトピックス

日本で氷河が発見された!?

2009年12月07日    滝田よしひろ

降り積もった となって山の上部などに大量に残り、その氷 が河川のように谷間をゆっくりと流動する、それが氷 河です。現在、日本には氷 河はないといわれていますが、もしかしたら氷 河と認められるかもしれない巨大な氷 の塊(かたまり)が、富山県の立山連峰で見つかりました。

初めて本格的な調査が行われた立山連峰・雄山の御前沢雪渓。日本に現存する唯一の氷河の可能性がある場所です。 写真提供:立山カルデラ砂防博物館(撮影:福井幸太郎)
立山連峰で雪渓の調査を行う福井さん。写真提供:立山カルデラ砂防博物館(撮影:福井幸太郎)

かつては日本にもあった氷河

富山県、長野県、岐阜県の3県が接する一帯は、北アルプスと呼ばれる日本有数のけわしい山岳地域です。ここには標高3,000mを超える山もたくさんあります。こうした山々で見られるのが、冬の間に降った雪 が融けきらず、夏になっても残る雪 渓(せっけい)と呼ばれる場所。雪 渓のなかには、再び雪 が降り出すまで残るものもあります。それが万年雪 (まんねんゆき 越年性雪 渓〈えつねんせいせっけい〉)です。万年雪 はやがて氷 に変化します。もし、この氷 が年々成長を続けて巨大になれば、山の斜面を流れるように動く氷 河になる可能性があります。

実際に、7~1万年ほど前、地球の気温 が今よりも低かった氷 期(ひょうき)の時代には、日本にも氷 河が多数あったことが分かっています。しかし、気候が温暖な現在の日本では、万年雪 のほとんどが数年で消えてしまい、残ってもその場所にとどまる氷 体(ひょうたい)と呼ばれる氷 の塊ばかりで、氷 河にまで成長するものは存在しないと考えられてきました。

調査に使われたアイスレーダー。写真提供:立山カルデラ砂防博物館(撮影:福井幸太郎)

確認された巨大な氷の塊

ところが、2009年9月 中旬、北アルプスの北西部、富山県側にそびえる立山連峰の主峰・雄山(おやま 標高3,003m)の東側にある御前沢(ごぜんさわ)雪 渓で、氷 河と認められる可能性がある巨大な氷 の塊が発見されました。その大きさは、長さ700~800m、幅200m、厚さは最大30mに達し、氷 体としては日本最大級です。

これを発見したのが、立山連峰で雪 渓の調査を続けてきた立山カルデラ 砂防博物館(富山県立山町)の学芸員・福井幸太郎さん。
「御前沢雪 渓が大きいことは分かっていましたが、断崖絶壁(だんがいぜっぺき)に囲まれているため危険で近づくことが難しく、ほとんど調査が行われていませんでした。そこで、山岳ガイドに協力 してもらい、アイスレーダー(電波 を使って氷 の厚さや構造を調べる装置)を持ち込んで調査を行ったところ、氷 河として山の斜面を氷 が滑り動くために十分な30mという厚さがあることが分かりました」

さらに、福井さんが詳しく調査を行ったところ、氷 体の内部に氷 河として流動した痕跡を示す構造が見られ、表面には氷 が動くことがきっかけとなって生じるムーランと呼ばれる縦穴(氷 の割れ目 )も7つ見つかりました。これらの調査から「御前沢雪 渓の氷 体が氷 河であった可能性は非常に高く、計算上では、現在も1年間に1m弱の速さ で下方へ流れていると考えられます」と福井さんは話します。

氷の表面で見つかったムーランと呼ばれる氷河にできる縦穴。写真提供:立山カルデラ砂防博物館(撮影:福井幸太郎)

結果は来年秋に

立山連峰は、日本に21座28峰ある標高3,000m以上の高峰のなかで最も北に位置し、冬季の積雪 深が最大20mにも達する日本有数の豪雪 地です。福井さんは「こうした条件から、江戸時代を中心に20世紀ころまで続いた寒冷期に形成された氷 河が、今も残っているのではないか」と推測します。

しかし、御前沢雪 渓の氷 体が、現在も氷 河として活動していることを明らかにするには、実際に流動しているかどうかを調べる必要があります。そこで、福井さんは10月 に氷 体上の多くの岩をマーキングし、全地球測位システム(GPS )でその位置を確認しました。そして、1年後の2010年秋に再びマーキングした岩の位置を調べ、氷 体の動きを割り出すことにしています。岩が下方に移動していたら、現存する国内唯一の氷 河として認められるわけです。

これまで日本の周辺の極東アジアでは、ロシアのカムチャッカ半島が氷 河の南限でした。もし氷 河と確認されれば、氷 河の南限が立山連峰まで下がることになります。1年後の調査結果が楽しみですね。


Bbs_button